【岩手県公立入試】数学の傾向と対策:確率・関数の難問を攻略する「記述と読解」の正体

※本記事は、客観的分析のため『だ・である調』で統一しています。

1. 序論:数学における「計算偏重」という誤解

岩手県の公立高校入試、特に盛岡一高をはじめとする上位校を目指す層において、一つの学習観がボトルネックとなっている。それは、「数学=計算スピードと閃き」であるという思い込みだ。

「計算ドリルを反復すれば点数が上がる」「図形の補助線はセンスだ」——これらは岩手県の入試においては、本質を外したノイズになりかねない。

我々習志野受験研究所(受検アナリティクス)が、2022年から2025年までの4年間の全データを解剖した結果、岩手県の入試数学には、他県と比較しても際立って「言語的な構造」が存在することが見えてきた。

結論を言おう。岩手県の数学は、数字を扱うフリをした「論理記述の試験」である。

求められているのは、現実の事象を数式に置き換える「翻訳力」と、計算結果を用いて採点者を納得させる「説得力」だ。これを持たざる者は、いくら計算が速くても高得点の壁に弾き返される構造になっている。

2. 証拠:岩手県入試数学「構造分析リスト」(抜粋)

以下の表は、直近4年間の「差がつく問題」を抽出したものである。ここにある「共通項」に気づけるかどうかが、合格への第一歩だ。

年度大問単元テーマ求められる能力(正体)
20257確率くじ引きの復元・非復元意思決定の記述(AとBの比較説明)
20247確率カードゲームの勝敗意思決定の記述(条件変更後の有利不利)
202211確率硬貨・動点概念理解の記述(誤答理由の指摘)
202510関数ドローンの飛行ログ長文読解(グラフの変曲点=現実のイベント)
202410関数加湿器の強弱切り替え長文読解(グラフの傾き変化=設定変更)
202310関数X線検査機の通過物理現象の翻訳(平坦部=完全包含)
202210関数制動距離と空走距離レポート読解(必要な情報の抽出)

ご覧の通り、確率では「計算結果」そのものではなく「理由の説明」が、関数では「式の計算」以前に「長文とグラフの照合」が問われている。これが岩手県入試の正体だ。

3. 法則の解説:岩手県を制圧する2つのアルゴリズム

法則Ⅰ:確率は「計算」ではなく「説得」である

大問7(あるいは11)に配置される確率の問題を見て、「答えが合えばいい」と思っている受験生は、ここで発想を切り替える必要がある。

岩手県の確率は、明確な進化の意図を持っている。

2022年 / 大問11では、「同様に確からしいとはどういうことか」という概念理解を問い、誤った確率の考え方を指摘させた。この「理由を言語化させる」土台の上に、2024年・2025年の「AとB、どちらが有利か理由を含めて答えよ」という意思決定の問題が積み上げられている。

つまり、単なる計算マシーンは求められていない。「データ(確率)を根拠に、論理的に説明できる人間」を求めているのだ。

【攻略アルゴリズム】

  1. 比較対象の明確化: Aの方法(全事象$N_A$通り)、Bの方法(全事象$N_B$通り)をそれぞれ計算する。分母が異なるケース(2025年:20通り vs 25通り)に注意する。
  2. 記述テンプレートの実装: 以下の構文を定着させる。「Aの方法で当たる確率は $\frac{a}{N_A}$、Bの方法で当たる確率は $\frac{b}{N_B}$ である。これを通分(または小数化)して比較すると $\frac{a’}{L} > \frac{b’}{L}$ となるため、Aの方が有利である。」
  3. 結論の断定: 曖昧な表現は避け、「~の方が大きい/当たりやすい」とはっきり結論づける。

法則Ⅱ:関数は「グラフ」ではなく「現実」を見る

大問10(年によっては9)の関数応用は、必ず「ドローン」「加湿器」「影の長さ」「自動車のブレーキ」といった具体的な物理現象がテーマとなる。

苦手な生徒は「式の計算」から入ろうとして手が止まる。できる生徒は「日本語の翻訳」から始める。

【攻略アルゴリズム】

  1. グラフへの「書き込み」: 計算を始める前に、問題文中の「上昇」「水平飛行」「下降」といった言葉を、グラフの対応する区間に書き込む。
  2. 「折れ目」の特定: グラフの傾きが変わる点には、必ず現実世界での「イベント」が存在する。
    • 例えば2024年 / 大問10(加湿器)では、水の減るペース(傾き)が緩やかになった瞬間が、「強モードから弱モードに切り替えた瞬間」である。
    • この「折れ目」こそが、新しい数式のスタート地点となる。
  3. 区間ごとの立式: イベントごとに世界(数式)が変わる。グラフが折れるたびに、新しい $y=ax+b$ を作る「作業」を行うだけだ。

4. 結論:差がつくのは「才能」ではなく「手順」である

岩手県の数学入試において、天性の「数学的センス」が必要な場面は想像以上に少ない。

空間図形(大問12)ですら、2022年・2023年と連続して「全体から不要な部分を引く」という「引き算の手順」を知っていれば、単純な計算問題に還元される。

  • 確率は「記述の型」にはめる。
  • 関数は「現実のイベント」をグラフにメモする。
  • 図形は「引く」発想を持つ。

これらはすべて、才能ではなく「準備」の問題である。

「数学が難しい」と嘆く前に、自分の解き方が「計算重視」のままになっていないか確認すべきだ。岩手県仕様の「記述・翻訳重視」へと切り替えが完了した瞬間、入試問題は恐れるに足らない作業へと変貌する。

この分析記事にたどり着いた賢明な受験生は、すでに「戦い方」を知った。

あとは、その手順を日々の演習で淡々と実行するだけである。

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この記事を書いた人

千葉県・習志野市を拠点とする「習志野受験研究所」所長。10年以上の指導現場から得た知見をもとに、全国の入試問題を分析・発信しています。

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