※本記事は、客観的分析のため『だ・である調』で統一しています。
【解剖】沖縄県公立入試英語が14年かけて検証した「語順OS」──並べ替えが暴く3つの最頻出オペレーション
序論:ノイズのない純粋な「実験室」
入試問題には、その地域の特性が色濃く反映される。その中で沖縄県公立入試の英語は、全国でも特異な立ち位置にある。
10年以上にわたり「会話文脈での整序英作文(並べ替え)」が、極めて純度の高い形で定点観測されているからだ。
ここには奇問や難問といった「ノイズ」は一切ない。あるのは、教科書の重要構文を正確に運用できるかという、「英語の語順(Word Order)を脳内で構築できるか」の一点のみである。
我々が過去14年分(2012-2025)のデータを解析した結果、沖縄県の入試は一貫して「3つの最頻出オペレーション」の精度を測り続けていることが確認された 。
本稿では、この「語順OS」の正体を解剖する。
構造分析Ⅰ:後置修飾の「逆行ロジック」(Target A)
日本語と英語の決定的な違いは、「説明語句の位置」にある。 日本語は「前から後ろ」へ情報を足すが、英語は「後ろから前」へ情報をブロックとして積み上げる。
沖縄県入試はこの「後置修飾(Post-Modification)」の理解度を執拗に試している。 分析データによると、過去14年間の出題において、関係代名詞や分詞による修飾が頻出している 。
- 2025年 問2:
The book which you recommended(あなたが勧めた本) - 2022年 問3:
the camera my father gave me(父が私にくれたカメラ ※関係代名詞の省略) - 2016年 問3:
books read by many people(多くの人に読まれている本)
これらに共通するのは、「核となる名詞(先行詞)を先に置き、説明を後に回す」という英語特有の思考回路だ。
多くの受験生は単語の意味をつなぎ合わせようとして失敗する。 必要なのは翻訳ではなく、「名詞という『壁』の後ろに、説明ブロックを配置する建築能力」である。
構造分析Ⅱ:不定詞の「人+動作」制御(Target B)
次に顕著なのが、動詞が「人」と「動作」を支配するパターンだ。 これを我々は「Infinitive Control(不定詞制御)」と定義する。動詞を決めた瞬間、その後に続く構造が自動的に決定される構文群である。
過去データからは、以下の「人を操る動詞」と「形式主語構文」が繰り返し出題されている事実が読み取れる 。
- Ask型(依頼):
ask A to do(2025・2018年など) - Tell型(指示):
tell A to do(2022・2017年など) - Want型(願望):
want A to do(2013年など) - 形式主語型:
It is ... for A to do(2023・2020年など)
特筆すべきは、2025年の最新入試においても asked my sister to help という基本形が出題されている点だ 。 これは、これらの「型」を知らない者は英語を運用できないという事実を突きつけている。
構造分析Ⅲ:語順のトラップ(Target C)
単語の意味をつなげるだけでは解けない、文法的な「型」の理解を問うものとして、「間接疑問文」や「文型(SVOO/SVOC)」が配置されている 。
1. 間接疑問文の語順
通常の疑問文ではなく、肯定文の語順に戻す処理能力が問われる 。
- 通常型(Wh + S + V):
tell me where the post office is(2024年) - 主語型(Wh + V):
who ate the hamburger(2017年) ※疑問詞が主語になる場合、語順が変わらない点も狙われる。
2. 第4・第5文型の支配
- SVOO(与える):
give A B/tell A B(2024・2012年) - SVOC(保つ):
keep A B(2013年)
これらは単なる暗記ではなく、「動詞の性質に合わせて、パーツを規格通りに並べるロジック」が求められる。
2025年の特異点:仮定法という「非現実」の運用
2025年の出題には、注目すべき変化が見られた。 従来、事実関係を問う構文が主だったが、問3において「仮定法過去(I wish I could)」が出題された 。
2025年 問3:
I wish I could play the piano like him.
これは新学習指導要領の反映ではあるが、入試としての本質は変わらない。「語順を崩さないまま、非現実の内容(願望)を載せる」という運用精度が測られているに過ぎない。
今後も、この「新しいパーツ」を従来の語順OSに組み込めるかが問われるだろう。
結論:「語順」こそが知性である
沖縄県の入試問題を分析することで見えてくるのは、「単語を知っているだけでは、英語というシステムにはアクセスできない」という事実だ。
- Target A: 名詞の後ろに説明を回す(後置修飾)
- Target B: 動詞で人と動作を操る(不定詞制御)
- Target C: 文中のパーツを規格化する(語順トラップ)
これら3つの鉄則は、沖縄のみならず、共通テストや難関私大、ひいては実用英語のすべてに通底する「OS」である。
点数に一喜一憂するのではなく、自身の脳内にこの「回路」が構築されているか。 その自問自答こそが、合格への最短経路(クリティカル・パス)となる。
【付録資料】沖縄県公立入試「語順OS」全14年・分析データリスト(2012-2025)
本研究所では、2012年から2025年までの全42問(各年3問×14年)を解析し、沖縄県入試が問い続ける「3つの最頻出オペレーション(Target A/B/C)」を特定した。 以下は、その分析根拠となる全データである。このリストを見れば、沖縄県がいかに特定の構文を繰り返し出題しているかが分かるはずだ。
① 【Target A】後置修飾の絶対支配(Post-Modification)
名詞の後ろに説明ブロック(関係代名詞・分詞)を配置する、沖縄県の最重要テーマ。約3〜4年周期で必ず「目的格(省略含む)」が狙われる。
- 2025年 問2:関係代名詞 (which / 目的格)
- 2022年 問3:関係代名詞・省略 (the camera my father gave me)
- 2020年 問2:過去分詞の後置修飾 (made in Franceなど)
- 2019年 問1:関係代名詞 (who / 主格)
- 2018年 問3:関係代名詞 (which / 目的格)
- 2017年 問2:関係代名詞 (that / 目的格)
- 2016年 問2:関係代名詞 (that) + 最上級
- 2016年 問3:過去分詞の後置修飾 (read by many peopleなど)
- 2014年 問1:関係代名詞(融合問題)
- 2014年 問3:過去分詞の後置修飾 (built by ~)
② 【Target B】不定詞・動名詞の「人」制御(Infinitive Control)
「ask / tell / want」などの動詞が、後ろに続く「人+動作」を支配するパターン。および形式主語構文。
- 2025年 問1:ask A to do (人に~するよう頼む)
- 2023年 問1:be good at -ing (熟語+動名詞)
- 2023年 問2:It is … for A to do (形式主語)
- 2022年 問2:tell A to do (人に~するよう言う)
- 2020年 問3:It is … for A to do (形式主語)
- 2019年 問3:something hot to drink (不定詞・形容詞的用法)
- 2018年 問2:ask A to do (人に~するよう頼む)
- 2017年 問1:tell A to do / stop -ing
- 2013年 問1:want A to do (人に~してほしい)
③ 【Target C】語順トラップと文型(Word Order & Structure)
間接疑問文や第4・5文型など、単語の意味ではなく「型(ルール)」で並べる問題群。
- 2025年 問3:【新傾向】 仮定法過去 (I wish I could)
- 2024年 問1:現在完了進行形 (have been -ing)
- 2024年 問2:間接疑問文 (where S V)
- 2024年 問3:第4文型 (tell A B)
- 2022年 問1:受動態 + 間接疑問文
- 2021年 問1:助動詞 (don’t have to)
- 2021年 問2:未来表現 (be going to)
- 2020年 問1:助動詞 (can) + 疑問詞
- 2017年 問3:間接疑問文 (who ate ~) ※疑問詞が主語
- 2015年 問2:疑問詞 (What do you think of)
- 2013年 問3:第5文型 (keep A B)
- 2012年 問1:助動詞 (don’t have to)
- 2012年 問3:第4文型 (give A B)

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