※本記事は、客観的分析のため『だ・である調』で統一しています。
【三重・山梨】公立高校入試・理科「音」は暗記単元ではない。「見えない時間の補正」である。
1. 序論:「音は簡単」という油断
公立高校入試・理科において、「音(Sound)」という単元は、多くの受験生にとって「休憩地点」だと思われている。「振幅が大きければ音は大きい」「振動数が多ければ音は高い」——この程度の知識で乗り切れると高を括っているのだ。
しかし、三重県と山梨県の公立入試問題において、その油断は失点に直結する。
我々習志野受験研究所は、提供されたデータ(三重2014/2016/2020/2023、山梨2013/2018/2021/2024)をクロス分析した。
その結果、両県の「音」は、単なる用語暗記では決まらないことが明らかになった。目に見えない「時間(Time Lag)」を数式で補正する力と、波形のグラフを数値に落とし込む力が得点を分ける構造になっている。
2. 証拠:三重・山梨 入試理科「構造分析リスト」
以下の表は、両県で出題された「音」の問題から、特に差がつくものを抽出したリストである。単なる知識確認ではなく、「計算」と「補正」が主眼に置かれていることを確認せよ。
| 県 | 年度 | テーマ | 求められる「操作」(手順) | 難易度・本質 |
| 山梨 | 2021 | 110mハードル計測 | 誤差補正(音の遅れ分を記録に足す) | 応用・計測ロジック |
| 三重 | 2020 | 花火の距離 | 時間差計算(光と音のズレから距離算出) | 標準・記述 |
| 山梨 | 2024 | 山彦(やまびこ) | 往復処理(計測時間を2で割る補正) | 標準・ひっかけ |
| 三重 | 2023 | オシロスコープ | 逆数計算(1目盛りの時間 $\to$ Hz算出) | 標準・波形読解 |
| 山梨 | 2024 | 倍音(オクターブ) | 比率処理(振動数2倍 $\to$ 波の数2倍) | 標準・相対評価 |
| 三重 | 2014 | 3次元花火 | 空間幾何(三平方の定理で斜辺を計算) | 応用・数学融合 |
3. 法則の解説:両県を攻略する2つの「補正手順」
法則Ⅰ:時間のズレを「補正」せよ(Time Lag Correction)
山梨2021年(ハードル計測)や三重2014年(花火)に代表されるように、音の問題の本質は「光(一瞬)と音(遅い)のタイムラグ」の処理にある。 特に山梨県は、「音が聞こえてから時計を押した」というシチュエーションで、計測値に「音の移動時間」を足すべきか引くべきかを論理的に問うてくる。
【攻略手順】
- タイムラインの描画: 頭の中で処理せず、横線(数直線)を引く。「事象発生(0秒)」→「音が届く(0.3秒後)」→「時計始動」といった時系列を可視化する。
- 補正の実行:
- 「聞こえてから押した」= 実際の時間より短く計測されている $\to$ 音の時間を足す。
- 「山彦(反射)」= 音が往復している $\to$ 時間を2で割る。
- 三平方の準備: 三重県(2014年)のように、音が斜めに進む場合は、迷わず数学の「三平方の定理($1:1:\sqrt{2}$ や $3:4:5$)」を使う。物理ではなく図形問題として処理する。
法則Ⅱ:波形は「見る」のではなく「数える」ものである
三重2023年や山梨2024年におけるオシロスコープの問題は、「なんとなく波が詰まっているから高い音だ」という感覚派を排除する設計になっている。
求められているのは、「1周期の厳密な数値化」だ。
【攻略手順】
- グリッド・カウント: 波の「山から山」まで、横軸が何目盛りあるかを数える(例:4目盛り)。
- 時間換算: 「1目盛り = 0.001秒」などの条件を掛け、1周期の時間 $T$ を出す(例:$0.004$秒)。
- 逆数計算: 振動数(Hz)は「1秒間に何回か」であるため、公式 $f = \frac{1}{T}$ に代入する。
- コツ: 小数計算 $1 \div 0.004$ はミスの元だ。分数 $1 \div \frac{4}{1000} = \frac{1000}{4} = 250$ と処理する手順を確立せよ。
4. 結論:才能ではなく「手順」である
三重県と山梨県の「音」の問題において、情緒的な理解は一切不要だ。
そこにあるのは、「速さ・時間・距離」の一次方程式と、「周期・振動数」の反比例関係だけである。
最後に、試験当日に使える「3点チェックリスト」を提示する。音の問題が出たら、即座にこの3つを確認せよ。
- ラグの補正: 「聞こえてから押した」なら、音の時間を足す。(山梨型)
- 往復の補正: 「山彦(反射)」なら、時間を2で割る。(山梨型)
- 波形の計算: 1周期 $T$ を目盛りから出し、$f = 1/T$ で振動数を決める。(三重型)
これらはすべて、才能ではなく「準備」の問題である。
「理科は暗記だ」という思考停止から脱却し、この「計算と補正」のプロセスを身につければ、音の単元は確実な得点源へと変わる。

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