【解法アナトミー】2025年九州大英語(前期):「ストーリー読解」の罠を破る情報抽出のアルゴリズム

※本記事は、客観的分析のため『だ・である調』で統一しています。

国公立大学の英語長文において、エッセイ風の平易な文章が出題されたときこそ警戒が必要である。「ストーリーの流れ(文脈)」に乗って何となく読めてしまうため、受験生は「できた気」になる。しかし、記述問題の採点結果を見ると、要素の抜け漏れにより無惨に部分点を削られているケースが後を絶たない。

設問として成立している以上、そこには必ず客観的な論理構造が存在する。

本稿では、京都のタクシードライバー兼英語ガイドのエピソードを綴った2025年度九州大学(前期日程)の英語大問1を解析対象とする。この素材を通じ、「文脈から空気を読む」という曖昧な作業を排し、解答の根拠を確定させる「情報抽出のアルゴリズム」を提示する。


1. 徹底分析:「抽象と具体」の論理構造

記述問題において「どのようなことか」「どういうものか」と問われた際、本文中から該当箇所を適当に抜き出してはならない。英語という言語が持つ「情報展開のルール(核心から説明へ)」に従い、抽象的な表現がどこで具体化されているかを機械的に特定する処理が必要となる。

解析対象:問1(下線部1の具体的内容)

“I started with notes made by my senpai driver guides… I memorized the lines, but couldn’t get the words out smoothly.” (1) “It took a lot of practice before I could perform without preparation and make jokes in English as a guide.”

設問は、筆者が「どのような練習(“practice”)」をしたのかを問うている。ここで、前後の文脈からストーリーを想像して解答をでっち上げるのは自滅の典型だ。

① 情報構造の逆算
下線部にある “a lot of practice” (多くの練習)という抽象的な名詞句の「具体的な中身」を探す。通常、英語は「抽象→具体」と後ろに向かって説明が続く形が頻出するが、ここでは直前の文に具体的なアクションがすでに書かれており、それを “practice” という一語でまとめて受けている構造である。

② 要素の回収
直前の文を確認する。 “I started with notes made by my senpai… I memorized the lines, but couldn’t get the words out smoothly.” (先輩ガイドのメモから始め、台詞を暗記したが、言葉がスムーズに出なかった)

したがって、「練習」の内容はこの「先輩のメモを暗記してスムーズに言えるようにすること」に他ならないと、本文の根拠に基づき手順として確定する。本文に記載のない「案内文を作る」といった想像(ノイズ)を混入させてはならない。

【導き出される解答例】
先輩ドライバーガイドのメモをもとに台詞を覚え、言葉がスムーズに出るようになるまで繰り返し練習したこと。


2. ピンポイント攻略:同形反復(パラフレーズ)のサーチ

設問が「ある定義」や「別の理由」を求めている場合も、本文を最初から読み直すような非効率な行為は避けるべきだ。文章構造をスキャンし、「同じ形」を見つけ出す技術が処理速度と正確性を劇的に引き上げる。

解析対象:問3(下線部3以外の定義の特定)

第6段落: “a good guide is a good entertainer.” (良きガイドは良きエンターテイナーである)

設問は「それ以外に良きガイドとはどのようなものか」を述べている箇所を探し、まとめることを要求している。

① 検索キーの設定と同形反復の原理
定義は多くの場合、“Good guiding is …” や “A good guide is …” の形で置かれる。まずこれを「検索キー」として設定し、本文中から意味的・構造的に同等の文(パラフレーズ)をスキャンする。 すると、第9段落の冒頭に、探していた同形反復がそのままの形で出現する。 “Good guiding is not a one-way street, but an exchange of words and ideas.” (良きガイドとは一方通行ではなく、言葉とアイデアの交換である)

② 後続の具体化の要約
この一文だけで解答を作ると抽象的すぎるため、直後に続く具体例(情報展開のルール)を回収する。 “I’ve learned not to over-explain things and I can sense the mood… and adjust my guiding in accordance with the wishes and needs of my customers.” (物事を過度に説明しすぎないことを学び、雰囲気を察知し…顧客の希望やニーズに合わせてガイドを調整する)

この「検索キーによる同形反復の発見」と「直後の具体化の回収」という2ステップを踏むだけで、解答に必要な要素は過不足なく揃う。

【導き出される解答例】
良きガイドは一方的に多くを説明しすぎず、場の雰囲気を察知し、観光客の希望や必要に応じて案内を調整するものである。


3. 結論:真の読解力は「情報処理の手順」にある

時系列の並べ替え(問4)や内容一致問題(問5)においても同様である。ストーリーの記憶に頼るのではなく、時間を表す副詞句の推移や、本文と選択肢の間に成立する精緻なパラフレーズ(言い換え)を一つずつ検証していく作業に帰着する。

読みやすいエッセイ風の英文であっても、「なんとなく」で処理する甘えは、難関国公立大学では通用しない。

重要なのは、フィーリングを捨て、英文の論理展開を再現可能な手順に落とし込むことだ。文脈という不確かなものに依存せず、抽象と具体の往復、そして同形反復の発見という「型」を構築することが、合格への再現性が高く、最短に近い経路となるのである。

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この記事を書いた人

千葉県・習志野市を拠点とする「習志野受験研究所」所長。10年以上の指導現場から得た知見をもとに、全国の入試問題を分析・発信しています。

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