導入:この大問を解くための2つの分析軸
2025年度の大分県公立高校入試・国語の大問2は、八束澄子の小説『森と、母と、わたしの一週間』を題材に、「森のようちえん」での出来事を通じた登場人物の行動理由、心情変化、表現上の特徴を読み解く問題であった。
小説文の設問を処理する際、主題や人物像を漠然と捉えるだけでは、選択肢の細かな条件や記述の指定から外れやすい。問題文と設問から確認できる客観的な構造は、主に以下の2つの軸で整理できる。
- 「行動の主体・時系列」と「心情の段階的変化」の照合本文では、困っている子どもに対してすぐに手を貸そうとする野々歩と、本人が助けを求められるようになるまで見守る大人(ゆりっぺ)の対応が対比的に描かれている。設問を解くうえでは、「誰の行動か」「どの順序で起きたか」を区別すること、さらにゆりっぺの言葉を聞いた野々歩の心情を「変化前・契機・変化後」の段階に分けて本文の描写と照合することが重要となる。
- 設問文(タブレットのコメント)の検索条件と制約条件の活用問三では、登場人物についてまとめた【Aさんの考え】と【Bさんの考え】の空欄を補う形式で4つの小問が構成されている。空欄前後の文脈が本文のどこを探すべきかを示す手掛かり(検索条件)になっていると同時に、「本文中の言葉を使って」といった記述上の制約条件や、共通空欄がどの人物を説明しているかを正確に確認する処理が求められる。
物語のあらすじを追うだけでは、各設問へ正確に答えるには十分ではない。本文・設問文・選択肢をどの順序で確認し、どの根拠と照合するかという客観的な思考手順を再現することが有効である。
『森と、母と、わたしの一週間』(八束澄子)の要約と人物関係
本文は、「森のようちえん」で活動する子どもたちと大人たちの関わりを、中学3年生の野々歩の視点に寄り添う形で描いている。場面ごとの出来事と人物の行動・心情は、下表のように整理できる。
| 場面・展開 | 出来事・子どもたちの様子 | ゆりっぺ(大人)の言動・意図 | 野々歩の受け止めと心情変化 |
| 導入(帰りの会〜下山開始) | 森での活動を終え、子どもたちが次々に発言する。帰り道で急に激しい雨が降り出す。 | 子どもたちを見守りながら林道を歩く。 | いつものくせでハルくんの背後に隠れる。雨の中、足を速めて歩く。 |
| 前半(炊飯器を運ぶあやめちゃん) | あやめちゃんが大きな炊飯器を抱えてうめいている。ハルくんとエリちゃんが手を添えるが十分な助けになっていない。 | 引き返して手伝おうとした野々歩のカッパをつかみ、「放っといて」と制止する(問一)。 | 「この状況で知らん顔ってひどくない?」と戸惑う(問三(3)変化前)。 |
| 中盤(ゆりっぺの経験と真意) | 雨脚が強まる中、あやめちゃんのうめき声が嗚咽(泣き声)に変わる。 | かつて自分が意地っぱりで「助けて」と言えず周囲に迷惑をかけた経験を語る。あやめちゃんが自分から「助けて」と言えるようになるのを待ち(問三(1))、くちびるをかみしめて見守る(問三(2))。 | フードをはらいのけて耳を澄ませ、ゆりっぺの言葉が胸にささる。「『助けて』っていうのは負けじゃないの?」と自分の考えに疑問を持ち始める(問三(3)変化後)。 |
| 後半(助けの要請と解決) | あやめちゃんが「だれか持ってー」と大声で助けを求め、駆け戻ってきた輝くんが炊飯器を受け取る。あやめちゃんは「ありがとう」とお礼を言い、「ふぅー」とため息をついてほっとする(問三(4))。 | あやめちゃんが助けを求めた直後、野々歩と顔を見合わせる。その後、あやめちゃんが輝くんにお礼を言うと、手の甲で鼻をこすり、輝くんに「ナイスフォロー、サンキュー」と声をかける。 | 「――よかったぁ。」と安心し、のどがつまる(問三(4))。一生懸命に歩く輝くんの背中をカッコいいと感じる。 |
全問解答一覧
| 設問 | 正答・答案 | 形式・条件 | 設問条件の概要 |
| 問一 | イ | 記号選択 | 傍線①で「ゆりっぺ」が「野々歩」のカッパをつかんだ理由として最も適当なものを1つ選ぶ。 |
| 問二 | ア | 記号選択 | 本文における「森のようちえん」の子どもたちの様子について適当でないものを1つ選ぶ。 |
| 問三(1) | しんどいときに、自分から「助けて」といえるようになる (別解:つらいときに、自分から「助けて」と言えるようになる) | 記述(20〜30字 / 26字) | 空欄Ⅰに当てはまる言葉を、本文中の言葉を使って20字以上30字以内で書く。 |
| 問三(2) | くちびるをかみしめる | 抜き出し(10字) | 空欄Ⅱに当てはまる言葉を、本文中から10字で抜き出して書く。 |
| 問三(3) | ウ | 記号選択 | 空欄Ⅲに当てはまる言葉として最も適当なものを1つ選ぶ。 |
| 問三(4) | 安心 | 記述(漢字2字) | 空欄Ⅳに共通して当てはまる言葉を漢字2字で書く。 |
| 問四 | エ | 記号選択 | 本文中の表現の効果について説明したものとして適当でないものを1つ選ぶ。 |
【大問2】各設問の解答解説と思考手順
問一(理由説明・記号選択)
手順1(設問要求の確定)
傍線①「きびすをかえしかけた野々歩のカッパを、ゆりっぺがつかんだ」について、ゆりっぺが野々歩のカッパをつかんだ理由として最も適当なものを1つ選ぶ。
手順2(根拠範囲の限定)
傍線①の直前にあるあやめちゃんと野々歩の状況、および直後のゆりっぺの発言を確認する。
手順3(論理整理:二人の行動目的の区別)
- 直前の状況:大きな炊飯器を抱えてうめいているあやめちゃんを見て、野々歩が「きびすをかえしかけた(=引き返して手伝おうとした)」。
- ゆりっぺの制止と意図:ゆりっぺは野々歩をつかんで「放っといて」と止め、「キャパオーバーになるまでがんばり過ぎちゃう」あやめちゃんが、自分から「助けて」と言えるようになるのを待っていると説明している。
すなわち、一人で頑張ろうとするあやめちゃんの所へ戻って手伝おうとする野々歩を制止した場面である。
手順4(設問形式に応じた処理:選択肢の照合)
- ア(不適切):「知らん顔をしている『野々歩』を注意しようとしたから」とあるが、野々歩は手伝うために引き返そうとしており、知らん顔をしていたわけではない。
- イ(適切):「一人で頑張ろうとする『あやめちゃん』の所へ戻って手伝おうとする『野々歩』を制止しようとしたから。」は、直前の野々歩の行動および後続のゆりっぺの説明と一致する。
- ウ(不適切):「雨から逃れるために、先を行く自分を追い越してまで早く帰ろうとする『野々歩』を注意しようとしたから」とあるが、野々歩は後方のあやめちゃんの方へ引き返そうとしたのであり、前へ追い越そうとしたのではない。
- エ(不適切):「幼稚園バスまで助けを呼びに行こうとする『野々歩』を制止しようとしたから」とあるが、バスまで助けを呼びに行こうとした記述は本文にない。
結論
正答は イ である。
問二(内容合致・記号選択)
手順1(設問要求の確定)
本文における「森のようちえん」の子どもたちの様子について説明したものとして、「適当でないもの」を1つ選ぶ。否定条件である点に注意する。
手順2(根拠範囲の限定)
本文全体における子どもたち(あやめちゃん、ハルくん、エリちゃん、輝くん等)の行動描写と、大人(ゆりっぺ、森っち)の描写を照合する。
手順3(論理整理:行動の主体と時系列の確認)
各選択肢の記述について、「誰の行動か(子どもか大人か)」および「いつの時点の行動か(困る前か、困った後か)」を本文の事実と突き合わせる。
手順4(設問形式に応じた処理:選択肢の照合)
- ア(不適切・正答):「仲間の様子を丁寧に観察することで、困りそうな人に対して前もって声かけできる配慮がある」とある。しかし本文では、あやめちゃんがすでに1人で大きな炊飯器を抱えてうめいている段階でハルくんとエリちゃんが手を添えており、後半でもあやめちゃんが「だれか持ってー」と泣いて助けを求めた後に輝くんが駆け戻って手伝っている。困りそうな人へ「前もって」声かけした事実はなく、また「ものすごくよく子どもたちを観察している」のは大人のゆりっぺや森っちである。主体と時系列の両面で本文と一致しない。
- イ(適切):「子ども同士で仲間を支える行動や思いやりのある発言をすることができる社会性をもっている」は、手を添えるハルくん・エリちゃんや、「ごめん、あやめちゃん。持つよ。」と駆け戻った輝くんの言動と合致する。
- ウ(適切):「山での活動では、身仕度やかたづけなど自分でできることは各自でやろうとする行動力がある」は、活動の終わりや雨具を着こむ場面などの様子と整合する。
- エ(適切):「終わりの会で、自分のことを周囲の仲間に向けて積極的に発言しようとする意欲をもっている」は、冒頭の「子どもたちはつぎつぎと立って発言した」という記述と一致する。
結論
適当でないものは ア である。
問三(1)(記述:20字以上30字以内)
手順1(設問要求の確定)
【Aさんの考え】の空欄Ⅰ「『ゆりっぺ』は自分の経験を踏まえ、『あやめちゃん』が[ Ⅰ ]ことを願っています」に当てはまる言葉を、「本文中の言葉を使って、二十字以上三十字以内」で記述する。
手順2(根拠範囲の限定)
傍線①の直後にある、ゆりっぺが野々歩に理由と自身の過去を語る会話場面を確認する。
手順3(論理整理:要素の抽出と設問条件の適用)
ゆりっぺの発言には次の記述がある。
「がんばるのはいいことだけど、しんどいときに『助けて』っていえないとこまるから、わたしたち、あやめちゃんが自分から『助けて』っていえるようになるのを、ずっと待っているの。」 「わたし、意地っぱりでずっと助けてっていえなかったの。そのことで、かえってまわりにめいわくかけちゃったんだけど、いえたら必ず助けてくれる人っているんだよね。そのことをあやめちゃんにも知ってほしい。」
ここから、ゆりっぺがあやめちゃんに願っている行動として以下の3要素を抽出できる。
- 状況:しんどいときに
- 主体性:自分から
- 行動:「助けて」といえるようになる
手順4(設問形式に応じた処理:字数と接続の確認)
設問に「本文中の言葉を使って」という条件があるため、本文の「しんどいときに」をそのまま用い、直後の「〜ことを願っています」に連体形で接続させる。
- 本命答案:しんどいときに、自分から「助けて」といえるようになる(26字)
- 別解(同意可):つらいときに、自分から「助けて」と言えるようになる(25字)
20字以上30字以内の条件を満たしている。
結論
答案:しんどいときに、自分から「助けて」といえるようになる(26字)
問三(2)(語句抜き出し:10字)
手順1(設問要求の確定)
【Aさんの考え】の空欄Ⅱ「『あやめちゃん』が泣きだした声を聞いて『[ Ⅱ ]』様子からも『ゆりっぺ』が声をかけることをぐっと我慢していることがわかります」に当てはまる言葉を、本文中から10字で抜き出す。
手順2(根拠範囲の限定:検索条件の活用)
空欄直前の「『あやめちゃん』が泣きだした声を聞いて」という記述を検索条件として使い、本文の該当場面を特定する。
手順3(論理整理:該当場面と動作描写の特定)
本文中盤に、次の描写がある。
「『うえーん、えっえっ。』雨音に混じるうめき声が嗚咽に変わった。」 「ハルくんとエリちゃんは、いつもしっかり者のあやめちゃんが泣きだしたので、すっかりうろたえている。」
この直後に続くゆりっぺの描写を確認する。
「『……もうひと息。「助けて」っていいな。』フードの下でゆりっぺが、くちびるをかみしめる。」
ゆりっぺが直接声をかけずに我慢している様子を表す動作は「くちびるをかみしめる」である。
手順4(設問形式に応じた処理:字数と表記の確認)
「く・ち・び・る・を・か・み・し・め・る」= 10字。
「[ くちびるをかみしめる ]様子からも」と文脈・文法ともに自然につながる。
結論
正答は くちびるをかみしめる(10字)である。
問三(3)(心情変化・記号選択)
手順1(設問要求の確定)
【Bさんの考え】の空欄Ⅲ「『野々歩』は、『ゆりっぺ』の発言に対して、初めは[ Ⅲ ]います」に当てはまる言葉として、最も適当なものを1つ選ぶ。
手順2(根拠範囲の限定)
傍線①直後の野々歩の心の声から、ゆりっぺの過去と真意を聞いた後の野々歩の反応までを確認する。
手順3(論理整理:心情変化の3段階照合)
野々歩の心情推移を本文の具体的な描写から3段階で整理する。
- 変化前(反発・戸惑い):ゆりっぺに「放っといて」と止められ、「え、なんで。この状況で知らん顔ってひどくない?」と感じる。
- 変化の契機(傾聴・共鳴):真剣なゆりっぺの表情にけおされ、「カッパのフードをはらいのけ、ゆりっぺのそばで耳を澄ませた」「クールに見えるゆりっぺが熱く語っていた。それが野々歩の胸にささった」と引き込まれていく。
- 変化後(自己の考えへの疑問):「――え?『助けて』っていうのは負けじゃないの?」と、助けを求めることを負けだと捉えていた自分の考えに疑問を持ち始める。
手順4(設問形式に応じた処理:選択肢の照合)
- ア(不適切):「『ゆりっぺ』の説明に納得がいかなかったことで、『ゆりっぺ』への怒りがこみあげてきて」とあるが、野々歩はゆりっぺの言葉が「胸にささった」のであり、怒りがこみあげたのではない。
- イ(不適切):「怒りに震える『ゆりっぺ』の様子に動揺してしまったことで、くやしさがこみあげてきて」とあるが、ゆりっぺは怒りに震えておらず、野々歩が悔しさを抱いた事実もない。
- ウ(適切):「戸惑いを感じていましたが、『ゆりっぺ』の言葉に引き込まれていくことで、自分の考えに疑問を持つようになって」は、上記の変化前・契機・変化後の3段階すべてにおいて本文の描写と一致する。
- エ(不適切):「共感していましたが、自分の過去を熱く語る『ゆりっぺ』の姿に戸惑いを隠せなくなり、次第に同情するようになって」とあるが、最初は共感ではなく戸惑い・反発であり、後半も同情ではない。
結論
正答は ウ である。
問三(4)(共通空欄補充:漢字2字)
手順1(設問要求の確定)
【Bさんの考え】の末尾にある2つの空欄Ⅳに共通して当てはまる言葉を、漢字2字で記述する。
「最後は『あやめちゃん』の成長に感動するとともに、『輝くん』にお礼をいった『あやめちゃん』が[ Ⅳ ]した様子を見て、『野々歩』も[ Ⅳ ]しています。」
手順2(根拠範囲の限定)
空欄Ⅳが説明している対象人物は「あやめちゃん」と「野々歩」の2人である。本文後半で、輝くんが炊飯器を受け取り、あやめちゃんがお礼を言った直後の2人の描写を確認する。
手順3(論理整理:2人の描写の対応)
- あやめちゃんの様子:「しゃくりあげながら、あやめちゃんはお礼をいった。顔は雨と涙と鼻水でぐしょぐしょだ。よほどほっとしたのだろう、『ふぅー』というため息とともに落とした細い肩がいじらしかった。」
- 野々歩の様子:「――よかったぁ。野々歩ののどがつまる。」
あやめちゃんの「ほっとした(ため息とともに肩を落とした)」状態と、それを見た野々歩の「よかったぁ」という気持ちの両方に共通して当てはまる漢字2字の言葉は「安心」である。
手順4(設問形式に応じた処理:代入確認)
「『あやめちゃん』が[ 安心 ]した様子を見て、『野々歩』も[ 安心 ]しています。」と代入すると、意味・文法ともに自然につながる。
結論
正答は 安心(漢字2字)である。
問四(表現の効果・記号選択)
手順1(設問要求の確定)
本文中の表現の効果について説明したものとして、「適当でないもの」を1つ選ぶ。
手順2(根拠範囲の限定)
本文全体の叙述方法(比喩・擬態語、内面描写、情景描写、語りの視点)を確認する。
手順3(論理整理:「登場人物の発言」と「語り手の視点」の区別)
小説の表現特徴を検討する際、「会話文の中で誰が長く話しているか」ということと、「地の文が誰の視点(語り手)で描かれているか」を混同しないよう区別する。
手順4(設問形式に応じた処理:選択肢の照合)
- ア(適切):「子どもたちの描写に比喩や擬態語を用いることで、子どもたちの様子を想像しやすくする効果がある。」は、「風船が破裂したような泣き声」「ぴちゃぴちゃと」「アヒル歩きでよたよた歩きだした」などの表現と合致する。
- イ(適切):「『野々歩』の心の中の言葉を書き表すことで、『野々歩』の気持ちを読み取りやすくする効果がある。」は、「え、なんで。この状況で知らん顔ってひどくない?」「――え?『助けて』っていうのは負けじゃないの?」「――よかったぁ。」といった内面描写と一致する。
- ウ(適切):「雲の動きや雨の様子を描くことで、時間の経過や刻々と変化する状況を捉えやすくする効果がある。」は、「空はどんどん暗さを増していき」「こずえにあたる雨が大きな音を立てていた」「雨はますます激しくなっていた」という段階的な描写と合致する。
- エ(不適切・正答):「語り手を『野々歩』から『ゆりっぺ』に変更することで、『ゆりっぺ』の心情を印象づける効果がある。」とある。しかし本文は、「真剣そのもののゆりっぺの表情にけおされた」「細い肩がいじらしかった」「一生懸命な背中がカッコいい」など、最初から最後まで野々歩の視点に寄り添う三人称の語りで一貫している。途中でゆりっぺが自身の過去を語る場面はあるが、それは会話文における登場人物の発言であり、語り手が変更されたわけではない。
結論
適当でないものは エ である。
授業ではここまで扱う:小説読解における「設問条件の分解」と本文照合の3段階手順
小説文の設問で失点が生じる際、本文の内容が全く読めていないケースばかりではなく、「選択肢の時系列のズレを見落とす」「設問文が指定している検索条件や対象人物を取り違える」といった照合手順の不備が原因となることがある。
実際の授業では、感覚的な判断を防ぐため、以下の3段階の手順で設問と本文を突き合わせる訓練を行う。
【第1段階:設問条件と検索の手掛かりの確定】
設問文やコメント文から「誰の・いつの行動か」「本文中の言葉を使うか」「どの場面の直後か」という制約・検索条件を先に確定させる。
↓
【第2段階:本文の事実(主体・時系列・変化の段階)との分解照合】
選択肢や空欄の内容を「主体(子ども/大人)」「時系列(前もって/泣いた後)」「心情の3段階(変化前・契機・変化後)」に分解し、本文と1対1で照合する。
↓
【第3段階:構文接続と字数・表記の最終確認】
抜き出しや記述答案を空欄へ実際に代入し、直後の語句(「〜ことを願っています」「〜した様子」等)と文法的に破綻なくつながるかを確認する。
今回の2025年大分県公立高校入試・大問2における各設問をこの手順に当てはめると、下表のように整理できる。
| 設問 | 確定させた設問・検索条件 | 分解・照合した本文の事実関係 | 排除した誤答・確定した正答 |
| 問一 | 傍線①ゆりっぺが野々歩を止めた理由 | 野々歩の行動(引き返して手伝う)+ゆりっぺの意図(自分から助けを求めるのを待つ) | 知らん顔(ア)や雨から逃げる(ウ)を排し、制止の理由(イ)を確定 |
| 問二 | 子どもたちの様子として「適当でないもの」 | 観察の主体は大人(ゆりっぺ等)。子どもが助けたのはうめき声や泣き声の「後」。 | 「前もって声かけ」という時系列・主体の不一致(ア)を特定 |
| 問三(1) | ゆりっぺの願い/本文中の言葉を使用(20〜30字) | 「しんどいときに」+「自分から」+「『助けて』っていえるようになる」 | 本文の表現を活かし26字で「〜ことを」に接続する答案を構成 |
| 問三(2) | 「あやめちゃんが泣きだした声を聞いて」我慢する様子(10字抜き出し) | 「うめき声が嗚咽に変わった」直後の動作描写を探索 | 「くちびるをかみしめる」(10字)を特定 |
| 問三(3) | 野々歩の心情変化(空欄Ⅲ) | ①戸惑い $\rightarrow$ ②言葉が胸にささる $\rightarrow$ ③「負けじゃないの?」と疑問を持つ | 怒り(ア・イ)や最初から共感(エ)を排し、3段階一致のウを確定 |
| 問三(4) | 【Bさんの考え】末尾/あやめちゃんと野々歩の共通空欄(漢字2字) | あやめちゃん(「ほっとした」「ため息」)+野々歩(「――よかったぁ。」) | 両者の様子に共通する「安心」を確定 |
| 問四 | 表現の効果として「適当でないもの」 | 最初から最後まで野々歩に寄り添う視点。ゆりっぺの過去語りは会話文の発言。 | 登場人物の発言と「語り手の変更」を混同したエを特定 |
重要なのは、特定のパターン名だけを覚えることではなく、設問文の条件や選択肢の要素を細かく分解し、本文のどの記述と照合すれば正誤が判定できるかを別の問題でも再現できるようにすることである。
大分県公立高校入試 国語(小説文)の対策と復習手順
小説文の過去問演習において、「解説を読んで物語のテーマが分かった」という状態と、「初見の試験で選択肢の細かなズレや記述の指定条件を正確に処理できる」という状態には差がある。
今後の演習や復習では、以下の手順を意識して反復することが有効である。
1. 選択肢は「誰が」「いつ」「どうしたか」に分解して照合する
問二の選択肢アのように、文章全体の雰囲気(「子どもたちが助け合っている」)としてはもっともらしく見えても、「前もって(時系列)」や「丁寧に観察(主体)」といった細部が本文の事実と食い違っている選択肢がある。選択肢を検討する際は、全体の印象で丸をつけず、主語や時間関係を示す言葉に線を引きながら本文と照合する習慣をつけたい。
2. 心情変化の問題は「変化前・契機・変化後」を分けて確認する
登場人物の気持ちの変化を問う選択問題(問三(3)など)では、後半の気持ちだけが合っていても、前半の反応(「最初から共感していた」等)が本文と異なれば誤答となる。選択肢を「最初の反応」「変化のきっかけ」「変化後の受け止め」の3つに区切り、それぞれに対応する本文のセリフや心の声を確認する手順を徹底すること。
3. コメント文・会話文形式の設問では「前後の文脈」を検索条件にする
問三のように生徒がまとめたコメント文の空欄を補う問題では、空欄の直前に「いつの場面か(あやめちゃんが泣きだした声を聞いて)」「誰の様子か(お礼をいったあやめちゃんと野々歩)」が具体的に書かれている。本文を最初から読み直すのではなく、まずコメント文の前後から探すべき場面と対象人物を特定し、さらに「本文中の言葉を使って」といった設問条件を守って答案を組み立てる練習を重ねることが重要である。
今回の大問2では、行動の直前・直後の因果関係、行動の主体と時系列、設問コメント内の検索条件、および語りの視点という客観的な手掛かりを確認することで、すべての設問を論理的に処理できる。本文の具体的な描写と設問の条件を1対1で対応させる手順を身につけることが、安定した得点につながる。

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