導入:この大問を解くための2つの分析軸
2025年度の大分県公立高校入試・国語の大問3は、高橋雅延の『記憶の深層――〈ひらめき〉はどこから来るのか』を本文とし、問三で汐見稔幸の『人生を豊かにする学び方』を補助資料として組み合わせた論説文の読解問題であった。
論説文の読解において、文章全体のテーマ(「記憶には考えることが大切だ」など)を大まかに掴むだけでは、字数指定のある抜き出しや記述、複数資料の比較問題を正確に処理するには十分ではない。問題文と設問から確認できる客観的な構造は、主に以下の2つの軸で整理できる。
- 「問題提起 $\rightarrow$ 関連づけの仕組み $\rightarrow$ 『考える』ことの必要性 $\rightarrow$ 知識の好循環」の論理展開と指示語の追跡本文は、単に読んだり聞いたりするだけでは記憶に残らないという問題提起から始まり、既存の知識と関連づける仕組みとその効果を説明する。その後、記憶を定着させるために「考える」ことが必要であると述べ、最後に、知識が豊かになることでさらに多くの知識を取り込めるという好循環へと論を進めている。設問(問一・問二)を解くうえでは、各段落がどの段階を説明しているかを区別し、空欄直後の接続表現(「〜から」)や指示語(「このこと」)を手掛かりに根拠範囲を特定する処理が有効である。
- 本文と補助資料における「共通点」と「相違点」の切り分け問三では、本文と補助資料を読み比べた生徒たちの【話し合いの一部】が提示されている。両資料とも「既存の知識と結びつけて考えること」の重要性を説いている点は共通しているが、会話文中の「本文と違うね」という発言条件に着目し、補助資料が独自に踏み込んで述べている内容(「世界の見え方が変わり始める」)を切り分ける処理が求められている。
内容や背景知識を漠然と把握しているだけでは、本番で安定して正答に至ることは難しい。本文・補助資料・設問条件・選択肢をどの順序で照合するかという、客観的な思考手順を再現することが重要である。
『記憶の深層』(高橋雅延)と補助資料の要約・論理構造
本文(第1〜6段落)の論理展開と、問三で提示される補助資料の内容は、下表のように整理できる。
| 資料・段落 | 論理の段階 | 本文・資料の具体的な記述内容 | 対応する設問 |
| 本文 第1段落 | 問題提起(強い否定) | 新しいことがらを学ぶ際、単に読んだり聞いたりするだけでは、絶対に記憶に残ることはない。 | 問二(筆者の述べ方) |
| 本文 第2・3段落 | 記憶の条件と具体例 | ジェイムズによれば「良い記憶の秘訣」は、各自の構造化された知識に記憶を関連づけることである。陸上部の大学生が多くの記録を覚えているのも、頭の中で比較したり順序づけるなどして考えているからであり、それによってバラバラな概念ではなく構造化された体系的な知識として深く刻み込まれる。 | 問一(2)(39字抜き出し) 問二(例示の工夫) |
| 本文 第4段落 | 忘れる原因と「考える」必要性 | リヒテンベルクの『雑記帳』にも、読んだものを忘れてしまうのは「自分で考えない」からだと説かれている。ショーペンハウアーも、食物を消化するのと同様に、読んだ内容について深く「考える」必要性を述べている。 | 問一(1)(7字抜き出し) 問二(例示の工夫) |
| 本文 第5段落 | 「考える」の定義 | 記憶への定着という側面から見れば、「考える」とは、そのことがらの意味を深く吟味したうえで自分の知識に関連づけてそこに組み込むことである。関連づけの方法はイメージや連想など何でもよいが、土台となるのは自分の知識である。 | 問一(3)(記憶方法の選択) |
| 本文 第6段落 | 知識が豊かになる好循環(結論) | 新しいことがらを知識に関連づければ、自らの知識がさらに豊かになる。VPの事例や雪玉を転がす例のように、取り込んだものが知識をいっそう豊かにして、さらに取り込めるものを増やすという好循環となる。このことがベーコンの「知は力なり」の真の意味である。 | 問一(4)(45字記述) 問二(例示の工夫) |
| 補助資料 | 知識の血肉化と世界の見え方の変化 | 知識をただ覚えておくだけでは教養・知性にはならず、血肉化するには新しい意味や因果関係を見つける「考える」作業が不可欠である。いろいろな知識がつながってくると世の中がよく見えてきて、世界の見え方が変わり始める。 | 問三(1)(資料比較) 問三(2)(行動の選択) |
全問解答一覧
| 設問 | 正答・答案 | 形式・条件 | 設問条件の概要 |
| 問一(1) | 自分で考えない | 抜き出し(7字) | 空欄Ⅰに当てはまる言葉を本文中から7字で抜き出す。 |
| 問一(2) | バラバラな | 抜き出し(39字の初めの5字) | 空欄Ⅱに当てはまる言葉を本文中から39字で抜き出し、初めの5字を書く。 |
| 問一(3) | エ | 記号選択 | 空欄Ⅲ(本文を踏まえた記憶方法)に最も適当なものを1つ選ぶ。 |
| 問一(4) | 知識に関連づければ、取り込んだものが知識をいっそう豊かにして、さらに取り込めるものを増やす | 記述(35〜45字 / 45字) | 空欄Ⅳに当てはまる言葉を、本文中の言葉を使って35字以上45字以内で書く。 |
| 問二 | ア | 記号選択 | 本文における筆者の述べ方として最も適当なものを1つ選ぶ。 |
| 問三(1) | イ「ものの見方や捉え方が変わってくる」 | 記号選択 | 空欄Ⅴに当てはまる言葉として最も適当なものを1つ選ぶ。 |
| 問三(2) | エ | 記号選択 | 学んだことを生かした行動として適当でないものを1つ選ぶ。 |
【大問3】各設問の解答解説と思考手順
問一(1)(7字抜き出し)
手順1(設問要求の確定)
Aさんが作成した【ノートの一部】の空欄Ⅰに当てはまる言葉を、本文中から7字で抜き出す。
ノートには「なぜ単に読んだり聞いたりするだけでは、絶対に記憶に残らず忘れてしまうのか?……[ Ⅰ ]から」とあり、忘れてしまう直接の原因・理由を特定する問題である。
手順2(根拠範囲の限定)
「忘れてしまうのは〜から」という因果関係が述べられている本文第4段落を確認する。
手順3(論理整理:因果表現の照合)
第4段落の第2文に次の記述がある。
「第1章で紹介したリヒテンベルクの『雑記帳』にも、読んだものを忘れてしまうのは自分で考えないからであり、記憶しておくには自分でよく『考える』ことの重要性が説かれています。」
ノートの「忘れてしまうのか?……[ Ⅰ ]から」という構造と、本文の「忘れてしまうのは[ 自分で考えない ]から」がそのまま対応している。
手順4(設問形式に応じた処理:字数と表記の確認)
- 抜き出し文字列:「自・分・で・考・え・な・い」= 7字。
- 空欄への代入:「[ 自分で考えない ]から」となり、文法・字数ともに一致する。
結論
正答は 自分で考えない(7字)である。
問一(2)(39字抜き出し・初めの5字)
手順1(設問要求の確定)
【ノートの一部】の空欄Ⅱ「なぜ関連づけることが重要か?……[ Ⅱ ]から」に当てはまる言葉を、本文中から39字で抜き出し、その初めの5字を記述する。
手順2(根拠範囲の限定)
「構造化された知識に記憶を関連づけること」の具体的な効果・結果を説明している本文第2〜3段落を確認する。
手順3(論理整理:空欄直後の「から」を用いた終点の確定)
第3段落の末尾に、関連づけて考えることの結果をまとめた一文がある。
「こうすることで、ある特定領域に関して、バラバラな概念ではなく構造化された体系的な知識として頭のなかに深く刻み込まれるわけです。」
39字の切り出し範囲を正確に確定するため、ノートの空欄直後にある「から」に着目する。
- 終点の確定:空欄直後の「〜から」に文法的に接続する文末表現は「(深く)刻み込まれる」である(「刻み込まれるから」)。
- 始点の逆算:「刻み込まれる」を終点として前へ文字数を数えると、「バラバラな概念ではなく構造化された体系的な知識として頭のなかに深く刻み込まれる」がちょうど39字となる。
手順4(設問形式に応じた処理:文字数カウントと指定箇所の抽出)
- 抜き出し全文(39字):「バラバラな概念ではなく構造化された体系的な知識として頭のなかに深く刻み込まれる」
- 初めの5字:「バ・ラ・バ・ラ・な」
結論
正答は バラバラな である。
問一(3)(記号選択)
手順1(設問要求の確定)
【ノートの一部】の空欄Ⅲ「本文の内容を踏まえて私が考えた記憶方法 → [ Ⅲ ]」に当てはまるものとして、最も適当な選択肢を1つ選ぶ。
手順2(根拠範囲の限定)
筆者が「記憶への定着」という側面から「考える」という行為を定義している本文第5段落、および第2・3段落の関連づけの説明を確認する。
手順3(論理整理:本文における記憶方法の要素)
第5段落には次のように書かれている。
「こと新しいことがらの記憶への定着という側面から見るのならば、『考える』とは第1章やここで述べたように、そのことがらの意味を深く吟味したうえで自分の知識に関連づけてそこに組み込むことに尽きます。関連づけの方法はイメージであれ、連想であれ、何でもよいのですが、関連づける土台となるのは自分の知識なのです。」
したがって、本文の内容を踏まえた記憶方法には、「自分の既存の知識を土台にすること」「連想やイメージ等を用いて関連づけ、構造化(整理)すること」が含まれている必要がある。
手順4(設問形式に応じた処理:選択肢の照合)
- ア(不適切):「苦手なことほど早くやり直すようにして、記憶を定着させるために復習する情報に優先度をつけて記憶する」とあるが、復習の早さや優先度付けは本文で述べられていない。
- イ(不適切):「その内容を声に出して確認したり、なるべく多くの人に話したりすることで記憶する」とあるが、音読や他者への伝達による記憶法は本文の論点ではない。
- ウ(不適切):「復習の期間や日時を計画的に割り振って記憶する」とあるが、復習スケジュールの管理についても本文には記述がない。
- エ(適切):「覚える内容を、自分の知っていること(=自分の知識)や思い浮かんだこと(=連想)と結びつけ(=関連づけ)、図式化して整理する(=イメージ・構造化)ことで記憶する。」は、本文第5段落および第2・3段落の記述と要素単位で一致する。
結論
正答は エ である。
問一(4)(記述:35字以上45字以内)
手順1(設問要求の確定)
【ノートの一部】にある「◎『知は力なり』の真の意味とは? → 新しいことがらを[ Ⅳ ]ということ」の空欄Ⅳに当てはまる言葉を、「本文中の言葉を使って、三十五字以上四十五字以内」で記述する。
手順2(根拠範囲の限定)
「『知は力なり』の真の意味」という表現が登場する本文最終段落(第6段落)を確認する。
手順3(論理整理:指示語「このこと」からの逆算)
第6段落の最終文は次のように結ばれている。
「このことが、一七世紀のヨーロッパの学問体系を打ち立てた哲学者のフランシス・ベーコンの有名な台詞『知は力なり』の真の意味であるように私には思えるのです。」
- 指示語「このこと」の特定:直前の文に戻ると、「あたかも雪山の頂上から小さな雪玉を山すそに向けて転がせば、どんどん大きな雪玉になっていくのと同じように、取り込んだものが知識をいっそう豊かにして、さらに取り込めるものを増やすという限りない好循環となるのです。」とある。
- 空欄直前の言葉との接続:ノートでは空欄の直前に「新しいことがらを[ Ⅳ ]ということ」と置かれている。第6段落の冒頭を確認すると、「こうやって新しいことがらを知識に関連づければ、食物を消化すると同様、自らの知識のなかに新しいことがらが組み込まれ、自分の知識がさらに豊かなものになっていくのです。」と述べられている。
したがって、ノートの「新しいことがらを」に続けて、①「知識に関連づければ」、②「取り込んだものが知識をいっそう豊かにして」、③「さらに取り込めるものを増やす」という3つの要素を本文の言葉どおりにつなげれば、好循環の全体像を表す答案となる。
手順4(設問形式に応じた処理:答案構成と字数確認)
- 構成した答案:知識に関連づければ、取り込んだものが知識をいっそう豊かにして、さらに取り込めるものを増やす(45字)
- 文脈接続の確認:「新しいことがらを[ 知識に関連づければ、取り込んだものが知識をいっそう豊かにして、さらに取り込めるものを増やす ]ということ」となり、構文的に自然につながる。字数も35字以上45字以内の条件を満たしている。
結論
答案:知識に関連づければ、取り込んだものが知識をいっそう豊かにして、さらに取り込めるものを増やす(45字)
問二(筆者の述べ方・記号選択)
手順1(設問要求の確定)
本文における筆者の述べ方(論理の展開方法・表現上の工夫)について説明したものとして、最も適当な選択肢を1つ選ぶ。
手順2(根拠範囲の限定)
本文全体(第1〜6段落)の導入表現および具体例・引用の配置順序を確認する。
手順3(論理整理:冒頭の否定表現と例示の3段階配置)
- 冒頭の表現:第1段落末尾で「単に読んだり聞いたりするだけでは、残念ながら絶対に記憶に残ることはありません。」と強い否定表現を用い、読者に「なぜ記憶に残らないのか」という疑問を抱かせている。
- 例示の順序:続く第2〜6段落では、以下の順序で具体例や引用が配置されている。
- 記憶の仕組み:ジェイムズの説明と「陸上部の大学生の例」により、既存の知識と関連づけることが記憶に必要だと示す(第2・3段落)。
- 「考える」ことの必要性:リヒテンベルクやショーペンハウアーの言葉と「食物の消化の例」により、読んだ後に自分で深く考えることの重要性を示す(第4段落)。
- 知識が広がる好循環:VPの事例や「雪玉を転がす例」、ベーコンの言葉(「知は力なり」)により、知識に関連づけることでさらに多くの知識を取り込めるようになることを示す(第6段落)。
手順4(設問形式に応じた処理:選択肢の照合)
- ア(適切):「初めに強い否定の語を用いて話題について読者に疑問を持たせるとともに、例示の順を工夫することで納得感を深めている。」は、第1段落の「絶対に記憶に残ることはありません」という表現および第2〜6段落の段階的な例示の配置と一致する。
- イ(不適切):「複数の具体例について説明したのちに、その共通点や相違点についてもう一度整理して示すことで」とあるが、本文後半で各具体例の共通点・相違点を再整理する展開にはなっていない。
- ウ(不適切):「後半では話題に関する他の学説を否定し」とあるが、後半で引用される学者や哲学者の言葉は筆者の主張を裏付けるためのものであり、他の学説を否定してはいない。
- エ(不適切):「反対意見も紹介することによって自分の主張の有用性について読者に納得させるようにしている」とあるが、反対意見を取り上げて反論する構成はとられていない。
結論
正答は ア である。
問三(1)(本文と補助資料の比較・記号選択)
手順1(設問要求の確定)
【補助資料】と【話し合いの一部】を読み、Dさんの発言「うん。他にも『考える』ことについて、[ Ⅴ ]ということを述べているところが本文と違うね。」の空欄Ⅴに当てはまる最も適当なものを1つ選ぶ。
手順2(根拠範囲の限定)
【話し合いの一部】のDさんの発言条件、および【補助資料】の後半にある「いろいろな知識がつながってくると」以降の記述を確認する。
手順3(論理整理:会話条件「本文と違うね」による絞り込み)
Dさんは「[ Ⅴ ]ということを述べているところが本文と違うね」と発言している。したがって、空欄Ⅴには「本文と補助資料の共通点」ではなく、「本文には書かれておらず、補助資料で述べられている内容(相違点)」を入れる必要がある。
【補助資料】の後半にある「いろいろな知識がつながってくると」以降の記述を確認すると、次のように述べられている。
「いろいろな知識がつながってくると、世の中がよく見えてきます。それまで自分が経験的に知っていたことと、新しく教えてもらったことがつながって、もうひとつ高いレベルで意味を理解できるようになるからです。そうすると、世界の見え方が変わり始めます。」
知識がつながることで「世の中がよく見えてくる/世界の見え方が変わり始める(=ものの見方や捉え方が変わる)」という内容は、補助資料独自のものである。
手順4(設問形式に応じた処理:選択肢の照合)
- ア「知識に基づく経験が増えてくる」(不適切):補助資料では「それまで自分が経験的に知っていたことと、新しく教えてもらったことがつながって」と述べられているが、経験そのものが増えるとは述べていない。
- イ「ものの見方や捉え方が変わってくる」(適切):補助資料の「世の中がよく見えてきます」「世界の見え方が変わり始めます」という記述と合致し、本文との相違点という条件も満たす。
- ウ「理解するまでの時間が短くなる」(不適切):「もうひとつ高いレベルで意味を理解できるようになる」とはあるが、理解にかかる時間の短縮については触れられていない。
- エ「関連づけながら知識を増やしていく」(不適切):関連づけながら知識を増やしていくことは、本文第6段落(雪玉の好循環)ですでに詳しく述べられている内容であり、Dさんの「本文と違うね」という条件に合致しない。
結論
正答は イ(ものの見方や捉え方が変わってくる) である。
問三(2)(内容の応用・記号選択)
手順1(設問要求の確定)
【話し合いの一部】の波線部「本文や【補助資料】から学んだことを生かした行動」として、「適当でないもの」を1つ選ぶ。否定条件である点に注意する。
手順2(根拠範囲の限定)
本文および【補助資料】で共通して説かれている「考える」ことの定義を確認する。
手順3(論理整理:両資料が求める行動の基準)
- 本文:「そのことがらの意味を深く吟味したうえで自分の知識に関連づけてそこに組み込むこと」(比較・順序づけ・連想・イメージ等)
- 補助資料:知識をただ覚えておくだけでなく、「新しい意味、あるいは因果関係を見つけていくこと」「経験的に知っていたことと、新しく教えてもらったことがつながって」理解すること
すなわち、新しい情報を単独で反復して覚えるのではなく、「既存の知識や経験と関連づけたり、比較・吟味したりして考える行動」であるかどうかが判断基準となる。
手順4(設問形式に応じた処理:選択肢の照合)
- ア(適切):「新しい言葉と出合った時は、その言葉の意味を知るだけでなく、自分の既知の言葉と合わせて例文を作成する。」は、新しい情報を既知の知識と関連づけて組み込む行動であり合致する。
- イ(適切):「課題解決学習の際には、これまでの学習内容や体験、見聞きしたことのつながりについて振り返るようにする。」は、既存の知識や経験とのつながりを見つける行動であり合致する。
- ウ(適切):「調べたことを発表する際には、知らなかった情報について疑問を持ったり他の情報と比較したりしてまとめる。」は、意味を深く吟味し他の情報と比較して関連づける行動であり合致する。
- エ(不適切・正答):「プレゼンテーションやスピーチの際には、原稿を正確に覚えるために何度も繰り返し音読したり書いたりする。」とある。これは原稿を繰り返して記憶することに重点を置いた行動であり、本文や補助資料が重視する「既存の知識と関連づけて考える」という処理が示されていない。
結論
適当でないものは エ である。
授業ではここまで扱う:論説文・複数資料問題における「ノート・会話文の条件」からの逆算手順
近年の公立高校入試の国語では、本文の後ろに「生徒が作成したノート」や「補助資料を読んだ生徒たちの話し合い」が付随する形式が見られる。こうした問題で失点が生じる場合、本文が読めていないのではなく、ノートや会話文の中にある「文法的な接続条件」や「比較の条件(共通点か相違点か)」を見落としているケースが少なくない。
実際の授業では、本文を漠然と読み返すのではなく、以下の3段階の手順で設問の条件から本文の根拠を逆算する練習を行う。
【第1段階:ノート・会話文の「前後の言葉」から検索条件を確定】
空欄の直前・直後にある語句(「〜から」「新しいことがらを〜」「本文と違うね」等)を確認し、
「理由を探すのか」「条件+結果を探すのか」「本文との相違点を探すのか」を最初に確定する。
↓
【第2段階:本文の指示語・文末表現・定義箇所との照合】
確定した検索条件に合う文末(「〜刻み込まれる(から)」)や指示語(「このことが〜真の意味」)、
概念の定義(「『考える』とは〜」)を本文中から特定する。
↓
【第3段階:出力条件(字数・初めの5字・本文の言葉の使用・否定条件)の検証】
特定した範囲が指定字数(7字・39字・35〜45字)と一致するかを数え、
「初めの5字のみを書く」「適当でないものを選ぶ」といった最終的な解答条件に合わせる。
今回の2025年大分県公立高校入試・大問3における各設問をこの手順に当てはめると、下表のように整理できる。
| 設問 | 第1段階:確定した設問・会話の条件 | 第2段階:特定した本文・資料の根拠 | 第3段階:最終的な出力処理 |
| 問一(1) | 「なぜ……忘れてしまうのか?……[ Ⅰ ]から」 | 第4段落「読んだものを忘れてしまうのは自分で考えないから」 | 7字で抜き出し(「自分で考えない」) |
| 問一(2) | 「なぜ関連づけることが重要か?……[ Ⅱ ]から」 | 第3段落末尾「刻み込まれる」を終点に前へ39字を逆算 | 39字の初めの5字を記入(「バラバラな」) |
| 問一(3) | 「本文の内容を踏まえて私が考えた記憶方法」 | 第5段落「自分の知識に関連づけて」「イメージ」「連想」 | 3要素が対応する選択肢エを確定 |
| 問一(4) | 「『知は力なり』の真の意味」「新しいことがらを[ Ⅳ ]ということ」 | 第6段落の指示語「このこと」の直前+「新しいことがらを知識に関連づければ」 | 本文の言葉を使い45字で構成 |
| 問二 | 本文における筆者の述べ方 | 第1段落の強い否定+第2〜6段落の3段階の例示・引用 | 構成と一致する選択肢アを確定 |
| 問三(1) | Dさん「[ Ⅴ ]ということを述べているところが本文と違うね」 | 補助資料後半の「世の中がよく見えてきます」「世界の見え方が変わり始めます」 | 本文既出のエを除外し、イを確定 |
| 問三(2) | 学んだことを生かした行動として「適当でないもの」 | 両資料の核である「既存の知識・経験との関連づけ」の有無を検証 | 原稿の反復に重点を置いたエを特定 |
重要なのは、ノート形式や会話形式といった表面的な出題形式に戸惑うことではなく、空欄前後の条件を正確に読み取り、本文のどの記述と照合すればよいかを別の問題でも再現できるようにすることである。
大分県公立高校入試 国語(論説文)の対策と復習手順
論説文の過去問演習において、「解説を読んで筆者の言いたいことが分かった」という状態と、「初見の試験で39字の抜き出し範囲や45字の記述答案を正確に作れる」という状態は別である。
今後の演習や復習では、以下の手順を意識して反復することが重要である。
1. 長い抜き出し問題は「空欄直後の言葉」から終点を先に決める
問一(2)のように30字〜40字程度の長い抜き出しが求められる場合、始点からなんとなく数え始めると範囲がずれやすい。まずは設問の空欄直後にある言葉(今回は「〜から」)を確認し、それに文法的に続く文末表現(今回は「刻み込まれる」)を本文から見つけて「終点」を固定する。終点を決めてから指定字数分を前へ逆算する手順を身につけると、抜き出しの精度が安定する。
2. 記述問題は「指示語」と「空欄前後のつながり」をセットで確認する
問一(4)のように「『〇〇』の真の意味とは?」と問われた場合、本文中の「このことが『〇〇』の真の意味である」という指示語の構造を手掛かりにする。指示語が指す直前の内容を特定したうえで、設問側の書き出し(「新しいことがらを〜」)と末尾(「〜ということ」)に文法的に破綻なくつながるよう、本文中の言葉を組み合わせる練習を重ねたい。
3. 複数資料の会話文では「共通点」か「相違点」かに線を引く
問三(1)のように本文と補助資料を比較する会話問題では、選択肢の内容が資料に書いてあるかどうかだけでなく、「会話文が求めている条件(似ているところ/違うところ)」に合致しているかを確認する必要がある。今回の選択肢エのように、内容としては正しくても「本文にも書いてある(=相違点ではない)」という理由で誤答になる選択肢を見抜くため、会話文中の条件語に必ず線を引く習慣をつけること。
今回の大問3では、空欄直後の接続表現、指示語「このこと」、第5段落における「考える」の定義、具体例の段階的な配置、および会話文の「本文と違うね」という条件を確認することで、すべての設問を客観的に処理できる。設問の条件を起点として本文と補助資料の根拠を正確に特定する手順を身につけることが、本番での安定した得点につながる。

コメント