2025年北海道大英語(前期):「何となく読める」の錯覚を破壊する構造解析

※本記事は、客観的分析のため『だ・である調』で統一しています。

全国の難関国公立大学の英語において、多くの受験生が陥る罠がある。それは、標準的で読みやすいテーマ(社会問題やテクノロジーなど)が出題された際、知っている単語を繋ぎ合わせて「何となく読めた気になってしまう」ことだ。

北海道大学の英語は、まさにこの「何となくの理解(雰囲気読解)」を正確に刈り取るように設計されている。

本稿では、UBI(ユニバーサル・ベーシック・インカム)をテーマとした2025年度北海道大学(前期日程)の英語大問1を解析対象とする。この良問を通じて、単語の羅列から意味を推測する悪癖を捨て、英文を「論理構造」として処理するためのアルゴリズムを公開する。


1. 構造解剖(Dissection):記号と修飾の数理的処理

下線部和訳において、採点官が主に見ているのは、構文ルールを正確に処理できているかである。日本語は「自然さ」よりまず構造の正確さが前提となる。

解析対象:問3(下線部3の和訳)

(3) With the income gap reaching levels not seen since before the Great Depression, this proposal presents a clear solution: providing income to all people and taxing those with a higher income to recover the costs.

長く複雑に見える一文だが、構造のルールに従えば数式のように解体できる。

① 「With + 名詞 + V-ing」の主述判定
文頭の With the income gap reaching… を単なる「~と一緒に」と処理してはならない。これは付帯状況を表す構造であり、名詞(the income gap)と分詞(reaching)の間に「主語→述語(所得格差が~に達している状況で)」の論理関係を成立させる定石である。

② 修飾関係の処理
ここでは not seen がひとまとまりで levels を後ろから修飾している。したがって「大恐慌以前からずっと見られなかった水準」と処理する。

③ コロン(:)の論理機能と並列構造
主節 this proposal presents a clear solution の直後にあるコロン(:)は、この文において、前の a clear solution の具体内容を提示している。 さらにその後ろでは、providing…taxing… という2つの動名詞が等位接続詞 and で並列に繋がれている。つまり、この2つのアクションが「明確な解決策(a clear solution)」の具体的な中身(同格)であると確定する。

【導き出される解答例】
所得格差が大恐慌以前から一度も見られなかった水準に達している状況で、この提案は明確な解決策、すなわち、すべての人に所得を給付し、その費用を回収するために高所得者に課税するという解決策を提示している。


2. 戦略論(Strategy):情報抽出のアルゴリズム

記述式の「内容説明問題」も、過度な文脈推測に頼る必要はない。該当箇所を特定し、その文の骨格を取り出すことで解答の芯は完成する。

解析対象:問5(研究結果の説明・75字以内)

(前文:A 2019 study conducted in California gave 125 people…) This led to people reporting feeling less anxious and more optimistic about the future as well as being able to take more time in finding full-time employment instead of part-time work.

「研究の結果、起きた変化」を問う設問である。指示語 This(この研究が)で始まる該当の一文から、以下の手順で情報を抽出する。

① 名詞句の塊としての処理
led to(~という結果につながった)という前置詞の後は名詞相当の語句が続く。ここでは people reporting… が一塊の名詞句となり、「人々が~と報告するようになること」と機械的に処理する。

② 等位接続詞(相当語句)による要素の特定
A as well as B(BだけでなくAも)が何を結んでいるか。後ろが being able to…(V-ing)であるため、前にある feeling…(V-ing)と結びついていることが論理的に確定する。

  • 変化A:将来について不安が減り、より楽観的になる
  • 変化B:パート労働の代わりにフルタイムの仕事を見つけるのにより多くの時間をかけられる

この2つの要素を過不足なく繋ぐだけで、要求された文字数に収まる解答が自動的に生成される。


3. 技術論(Technique):因果関係による選択肢の消去

内容一致問題(問6)において、「常識的に正しそうだから」という理由で選択肢を選ぶのは自滅行為である。ここでも「因果関係の方向性」や「言い換え(パラフレーズ)」という構造的な根拠が明暗を分ける。

解析対象:問6(内容一致・誤答のトラップ)

例えば、以下の選択肢(D)を検証する。

(D) UBI brings about inflation causing the cost of living to increase. (UBIはインフレを引き起こし、生活費の上昇を招く。)

本文第3段落には「インフレが日用品の価格を押し上げている状況において、これ(UBI)は特に重要である」と記されている。 つまり、本文の論理は「インフレが起きている(原因)→だからUBIが有効(結果)」であるのに対し、選択肢(D)は「UBIが導入される(原因)→インフレが起きる(結果)」と因果関係が逆転している。単語の拾い読み(雰囲気読解)をしている層は、本文に「インフレ」の記述があったというだけでこのトラップに引っかかるのである。


結論:純粋知性への到達

北海道大学の英語は、単語力や背景知識だけで突破できるほど甘くはない。求められているのは、フィーリングを排し、文法という客観的なルールに基づいて情報を処理する「解析能力」である。

主述関係の特定、記号の論理機能、修飾先の限定、そして因果関係の把握。これらの構造解析の手順を「型」として自己に構築することが、合格への再現性が高く、最短に近い経路となる。

「読める」という錯覚を捨て、「処理できる」という確固たる知性を手に入れていただきたい。

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この記事を書いた人

千葉県・習志野市を拠点とする「習志野受験研究所」所長。10年以上の指導現場から得た知見をもとに、全国の入試問題を分析・発信しています。

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