作図問題に対して、「センスが必要だ」「ひらめかないと解けない」と思い込んでいないだろうか。上位校を本気で目指すのであれば、作図を「ひらめき勝負」と考えるのは危険である。
作図の正体は、漠然としたひらめきを競うものではない。問題文の日本語を、コンパスと定規を用いた「基本の型」へ変換する「条件翻訳」の作業である。本記事では、愛媛県公立入試の過去問(2012〜2025年度)を分析し、作図を確実な得点源に変えるための翻訳手順を公開する。
以下では、2012〜2025年度の愛媛県公立入試で確認できた作図問題を、年度順ではなく「問題文の条件」ごとに整理する。出題がない、または形式が異なる年度は除外している。
愛媛県・作図問題の「条件翻訳」テーブル
| 問題文の条件 | 翻訳後の作図 | 根拠 |
| 直線までの距離が最短 / 高さ | 対象の直線への【垂線】 | 点から直線への最短経路は垂線になるため |
| 点Pで直線に接する | 点Pを通る直線への【垂線】 | 円の接線は、接点を通る半径と垂直に交わるため |
| 2点から等しい距離 | 2点を結ぶ線分の【垂直二等分線】 | 2点から等距離にある点の軌跡は垂直二等分線になるため |
| 2点を通る円の中心 | 2点を結ぶ線分の【垂直二等分線】上に中心がある | 円の中心は2点から等距離にあるため |
| 2直線に接する円の中心 | 2直線がつくる角の【角の二等分線】 | 角の二等分線上の点は、2つの直線から等距離にあるため |
| 円の外部の点から接線を引く | 外部の点と中心を結ぶ線分を直径とする【円】 | 直径に対する円周角は90°になるため |
| ∠APB=90°となる点P | 線分ABを直径とする【円】 | 直径に対する円周角は常に90°になるため |
| 2定点を見込む角が30° | 正三角形を作り、その頂点を中心とする【円】 | 中心角60°に対する円周角は30°になるため |
| 30°の角度を作る | 与えられた線分を1辺とする正三角形を作り、その【角の二等分線】 | 30°は正三角形の内角60°の半分であるため |
| 回転移動の中心 | 対応する2組の点の【垂直二等分線】 | 中心は移動前後の対応点から常に等距離にあるため |
| 折り返した弧 | 元の円と同じ半径をもつ【円】の作図 | 折り返しでは図形の大きさが変わらないため |
| 点を直線について対称移動 | 対応する2点を結ぶ線分の【垂直二等分線】 | 対称軸は、対応する点を結ぶ線分の垂直二等分線になるため |
| 同じ長さ / 同じ大きさの円 | コンパスによる【長さの写し取り】 | コンパスは長さを別の場所へ正確にコピーできるため |
| 与えられた辺を基準に正方形を作る | 直角を作り、必要な辺の長さをコンパスで【写し取る】 | 正方形はすべての内角が90°で、すべての辺の長さが等しいため |
【詳細分析】2014年度:30°の角を「円周角」へ翻訳する鮮やかな手順
蓄積したデータの中でも、条件翻訳の威力が最も顕著に表れるのが2014年度の作図である。
作図において「30°を作る」という条件を見たとき、受験生の多くは「正三角形を作って60°にし、その角の二等分線を引く」という手順を思い浮かべるだろう。しかし、この問題の条件は「2点A、Bを見込む角が30°となる点Pを作図する」というものである。これを直感で探そうとすると大きなタイムロスとなる。
ここで「条件翻訳」を適用する。
この問題では、30°を直接作るのではなく、「中心角60°を作り、その円周角として30°を得る」と読み替える。
まず、線分ABを1辺とする正三角形OABを作図し、中心角となる ∠AOB=60° を作る。
次に、その頂点Oを中心として、点A、Bを通る円を描く。
円周角の定理により、この円のうちA、B以外の円周上の点から線分ABを見ると、中心角60°に対応する30°の円周角が得られる。今回は、問題で指定された直線上にある交点をPとして取る。
この手順は、基本の型を知っていれば迷いなく手が動く。感覚に頼らず知識としてストックしておくことで、安定して得点につながるのである。
【詳細分析】2024年度:もう一つの「30°」の翻訳ルール
最新の過去問集に取り組む受験生のために、2024年度の出題についても触れておこう。
作図において「30°」を作るアプローチは実は1つではない。先ほどの2014年度は「中心角60°に対する円周角」を利用したが、2024年度では「辺AC上にあり、かつ ∠PBC=30° となる点Pを作図せよ」という形で出題された。
この場合、円周角ではなく「30°=60°÷2」という別の翻訳定石を適用する。
まず、与えられた線分BCを1辺とする正三角形を作り、60°の内角を生成する。
次に、その60°の「角の二等分線」を引く。これにより、確実に辺BCに対して30°の方向を示す直線が得られる。
あとは、この直線と辺ACの交点を取れば、条件を満たす点Pが確定する。
「30°」という同じ数字を見ても、問題の条件に応じて「円周角の定理」を引き出すのか、それとも「正三角形の角の二等分線」を引き出すのかを正しく切り替える。これこそが、作図を直感ではなく「翻訳」で解き切る最大の強みである。
今日から使える作図の決定ルール(型の提示)
問題文を読んだ瞬間に、どの作図ツールを使うべきかを判断するための具体的な決定ルールは以下の通りである。
特に「接する」という条件は1種類ではない。接点が指定されていれば垂線、2直線に接する円の中心なら角の二等分線、円の外部の点から接線を引くならAOを直径とする円で処理する。
- 「接点Pが指定されている接線」⇒ 指定された点Pを通る直線の「垂線」を引く。
- 「2直線に接する円の中心」⇒ その2直線が交わってできる「角の二等分線」を引く。
- 「円の外部の点からの接線」⇒ 外部の点と円の中心を結んだ線分を「直径とする円」を描き、もとの円との交点を取る。
- 「2点から等距離」または「2点を通る円の中心」⇒ その2点を結ぶ線分の「垂直二等分線」を引く。
- 「最短距離」または「高さ」⇒ 指定された点から、対象となる直線へ「垂線」を下ろす。
結論とアクションプラン
作図の多くは、才能の領域ではなく、問題文の条件を基本の型へ当てはめる「作業」である。条件翻訳の引き出しをどれだけ持っているかが、入試本番での確実な得点力に直結する。
今日から以下の手順で作図問題に取り組んでほしい。
- 過去問の作図問題を解く際は、いきなりコンパスを持たず、問題文の条件(距離、接する、角度など)を示すキーワードに丸をつける。
- 本記事の「翻訳テーブル」と照らし合わせ、どの作図パーツ(垂線、垂直二等分線など)を使うべきか、頭の中で宣言してから定規とコンパスを持つ。
- 答え合わせの際は、模範解答の図の形だけを確認するのではなく、「なぜその作図操作になったのか」という日本語の根拠を、自分の言葉で説明できるようにする。

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