【2014-2025年】鳥取県公立入試・数学作図を徹底分析:直感ではなく「条件翻訳」で解く

作図問題の攻略に必要なのは、漠然とした「図形のセンス」や「ひらめき」ではない。入試本番で得点に直結するのは、問題文の条件を、垂直二等分線・角の二等分線・垂線・円といった具体的な作図操作へ変換する「条件翻訳」の力である。

多くの受験生は、図形を見た瞬間に完成形を頭の中で探そうとし、定規を当てて「それらしい線」を引こうとしてしまう。しかし、公立高校入試の作図問題を年度ごとに分析すると、実際に使われている作図操作はそれほど多くない。

垂直二等分線、角の二等分線、垂線、円周角、長さのコピー。

問題文の条件をこれらの基本操作へ客観的に翻訳できれば、作図は「ひらめき」ではなく、再現可能な作業になる。

本記事では、鳥取県公立入試の作図問題における条件と作図操作の対応関係を分析し、読者に実務的な「型」を提示する。

(※本記事では、確認できた作図問題10題を対象に整理している。年度によっては、本記事の分類対象となる作図問題がない、または形式が異なる場合がある)

過去問を支配する「翻訳テーブル」

当研究所が過去問から抽出した、作図条件の翻訳データを以下に提示する。一見すると毎年違う問題が出ているように見えても、その裏側にある構造は限られていることがわかるはずだ。

年度問題文の条件(シグナル)翻訳後の作図根拠(図形の性質)
2025円周上の点Pについて $\angle APO=90^\circ$線分AOを直径とする円を描き、もとの円との交点を取る直径に対する円周角は90°になるため
2024$BP:PC=a:b$ かつ $AB=a, AC=b$$\angle BAC$ の角の二等分線を引く角の二等分線は対辺を隣り合う2辺の比に分けるため
2023頂点を通る直線で三角形の面積を二等分対辺の垂直二等分線を引き、中点を取る高さが共通なら、底辺を2等分すれば面積も等しいため
20222点A, Bを通り、中心が直線$\ell$上にある円線分ABの垂直二等分線と直線$\ell$の交点を中心にする円の中心は円周上の2点から常に等距離にあるため
2021円周上の接点における接線接点を通る半径への垂線を引く接線は半径と必ず90°で直交するため
20203点を通る円の中心を求めよ2本の弦の垂直二等分線を引く中心は円周上の各点から等距離にあるため
2019$\sqrt{2}$ の長さを作図する長さ1と長さ1を直角に組み、斜辺を直線$\ell$上へ写し取る$1:1:\sqrt{2}$ の直角二等辺三角形を作るため
2016点Bが点Pに重なるように折る(折り目)線分BPの垂直二等分線を引く折り目は重なる2点の対称軸になるため
2015直線ADが三角形の面積を2等分する辺BCの垂直二等分線を引き、中点Dを取る高さが共通なら、底辺を2等分すれば面積も等しいため
2014直径ABの半円の中心を求める線分ABの垂直二等分線を引き、中点Oを取る直径の中点が円の中心となるため

【詳細分析】比の条件に隠された「角の二等分線」(鳥取県2024年度)

上記の翻訳定石が実戦でいかに機能するかを示すため、受験生が「比をどう作図するのか」と迷いやすい、2024年度の作図問題を構造分解する。

【問題のヒント(要約)】

$\triangle ABC$の辺BC上において、$BP:PC = a:b$ となる点Pを作図せよ。(※図中にはすでに $AB=a, AC=b$ の長さが与えられている)

【ありがちな失点パターン】

「$a:b$ に分ける点を探すのだから、辺BCの長さを定規で測って計算で求めよう」、あるいは「平行線を引いて比を作図しよう」と無作為に手を動かす。これは、作図の原則を理解していないことによる大きなタイムロスである。

【当研究所の翻訳と根拠】

この問題は、長さを問うているのではない。図形の性質をコンパスの動きへ翻訳する作業である。

問題文の条件である「$BP:PC=a:b$」と、図中の「$AB=a, \quad AC=b$」を客観的に結びつける。すると、

「$BP:PC=AB:AC$」

という関係式が浮かび上がる。

ここで呼び出すべき定石が「角の二等分線の定理」である。

三角形において、1つの内角の二等分線は、対辺を隣り合う2辺の長さの比に分ける。つまり、$\angle BAC$ の二等分線と辺BCとの交点をPとすれば、自動的に $BP:PC=AB:AC=a:b$ が成立する。

したがって、本問の要求は「比の点を作れ」ではなく、

「$\angle BAC$ の二等分線を引け」

という極めて単純な指示に読み替えることができる。あとは基本の手順通り、点Aを中心に円弧を描き、交点からさらに円弧を描いて結ぶという、コンパスの基本操作で完結する。

図中に与えられた情報と条件を数式化し、「$BP:PC=AB:AC$ の形を見たら、角の二等分線を疑う」。このたった一つの定石を持っていれば、一見難解な「比の分割」も、基本作図へと姿を変えるのである。


攻略の型と、即効性のある「決定ルール」

本問に限らず、上記の表から読み取れる通り、問題文のアプローチが「面積」「折り目」「円の中心」と変化しても、最終的に着地する作図の手順は、限られた基本パーツに必ず収束する。

ここで、読者が今日から直ちに得点に結びつけられる決定ルール(型)を提示する。

【決定ルール】

  • 「三角形の頂点を通る直線で面積を二等分する」とあれば、まず対辺の中点を疑え。
  • 「点が点に重なる折り目」とあれば、重なる2点を結ぶ線分の垂直二等分線を疑え。

例えば、2023年度や2015年度の「面積を2等分する」という記述を見た際、具体的な面積の数値を計算しようとするのは罠である。余計な図形操作を考える前に、まず「面積を二等分」=「底辺の中点を通る」=「垂直二等分線で中点を出す」という手順へ翻訳する。作図において「真ん中」が必要なら、定規の目盛りではなく、垂直二等分線を用いて客観的に位置を確定させるのが鉄則である。

結論と今日からすべきアクション

作図問題の得点は、才能やセンスによって決まるのではない。あらかじめ用意された手順を正しく呼び出す「作業」である。まずは、条件を基本の型へ翻訳することを第一候補にすべきである。自己流で線を引き始めるより、はるかに安定して得点につながる。

今日からすべき具体的なアクションは以下の通りである。

  1. 問題文のシグナル化: 問題を解く際、いきなりコンパスを持つな。まずは問題文のキーワード(例:「接線」「折り目」「面積を二等分」)にマーカーを引き、翻訳テーブルと照合して「使うべき基本パーツ」を即座に特定する。
  2. 手順の言語化: 余白にフリーハンドでラフ図を描き、「①ABの垂直二等分線を引く ②交点とCを結ぶ」といった具体的な作図手順を文字で書き出す。方針が立ってから初めて定規とコンパスに触れること。
  3. 型のストック: 問題集を解いて間違えた場合、「コンパスの使い方が悪かった」と片付けず、「どの翻訳ルールを引き出せなかったのか」を特定し、自らの頭の中にある翻訳テーブルを淡々とアップデートする。
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この記事を書いた人

千葉県・習志野市を拠点とする「習志野受験研究所」所長。10年以上の指導現場から得た知見をもとに、全国の入試問題を分析・発信しています。

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