【2025年度石川県公立・国語】大問3解答解説|言葉の幅と累加マーカーによる記述処理

目次

Introduction:言語と体験の枠組みと客観的処理

本問では、言語と感覚(体験)の結びつきがテーマとなっている。「赤」という言葉の適用範囲の広さ(幅)や、味覚という個人的な体験をどのように言葉にして他者と共有するかという問題が論じられている。こうした文章では、「言葉は体験そのものではないが、体験についての情報を共有し、判断や比較に利用することができる」という本文の枠組みを押さえることが、文章展開を理解する補助線となる。

しかし、背景知識やテーマの枠組みを理解するだけで記述問題の正答が書けるわけではない。本番で過不足のない答案を作成するためには、本文中の「~だけではない」といった論理のサイン(マーカー)を客観的に検知し、答案に必要な要素を整理する手順が有効である。本記事では、文章の構造的特徴を利用した客観的な読解手順を整理する。

【大問3】課題文の要約と論理構造

本文は、自分が実際に感じた味や香りなどの体験を、言葉によってどこまで他人に伝えられるのかという問題を論じている。言葉は体験を完全に再現できない一方で、体験を共有し、比較し、判断するための材料を生み出すものとして捉えられている。

読解の前提として、以下のマクロな視点(全体の構造)を整理しておくことで、各設問が本文のどの部分を根拠としているのかを客観的に位置づけやすくなる。

構造の展開内容の要点
言葉の性質(限界)トマトやイチゴなど異なる色をまとめて表すように、言葉の適用範囲には「幅」がある。
表現の工夫体験に近づけるため、言葉を新しく作る、既存の言葉を重ねる、他感覚の言葉を利用するなどの作業が行われる。
言語化の利益(他者)他人の言語化された体験を知ることで、自分が未体験のことに対して行動の判断材料を得られる。
言語化の利益(自己)自分の体験を言葉にすることで、複数の体験の違いや共通点を整理し理解できるようになる。

この「言葉の限界」から「言語化によって得られる二つの利益」へと進む展開が、本文全体を貫く基本フレームとなっている。

【大問3】全問解答一覧

各設問の解答は以下の通りである。

問1問2問3問4問5問6問7
記述(解答例後述)58字記述(解答例後述)適用範囲には一定の幅がある77字記述(解答例後述)

以下では、このうち他の初見問題にも転用しやすい記述問題や指示語問題を中心に、解答までの客観的な思考手順を詳しく解説する。

【大問3】各設問の解答解説と思考手順

問1:傍線部①「こうした例」の指示内容

  • 手順1(設問要求):傍線部①「こうした例」の指示内容を、「~という例」につながる形で説明する。
  • 手順2(根拠範囲):傍線部①の直前にある、トマトやイチゴ、紅葉などの具体例の記述に範囲を限定する。
  • 手順3(論理整理):直前の記述から、「複数のものが同じ『赤』という言葉で表される」ことと、「しかし実際の色は同一ではない」という対比関係を含む二つの要素を抽出して整理する。
  • 手順4(記述構成の確認):単に「いろいろな赤色がある」という抽象化では不十分である。抽出した二要素が「〜という例」に文法的なねじれなく接続するかを照合する。
  • 結論:「トマトもイチゴも紅葉も赤いバラも『赤い』と言われるが、まったく同じ色をしているわけではない(という例)」を正答とする。

問5:特定の表現を作るための方法(記述)

  • 手順1(設問要求):特定の料理にしか当てはまらないような細かな表現を作るために何をするのかを、60字以内で説明する。
  • 手順2(根拠範囲):傍線部③より前の部分。筆者が味の違いを細かく表現する方法を列挙している箇所へ限定する。
  • 手順3(論理整理):具体例(香ばしい、あつあつ等)を抽象化し、「違いを表す言葉を新しく作る」「既存の言葉を重ねる」「味覚以外の感覚の言葉を使う」という並列された三つの方法を抽出・統合する。
  • 手順4(記述構成の確認):本文が複数の方法を並置している場合、一つだけを抽出するのでは不完全となる。三要素すべてが字数内で過不足なく回収されているか照合する。
  • 結論:「違いを表す言葉を新しく作ったり、既存の言葉をたくさん重ねたり、味覚以外の感覚の言葉を使ったりする作業を繰り返すこと。(58字)」を正答とする。

問7:体験を言語化することの利益(記述)

  • 手順1(設問要求):体験を言語化することによって何ができるようになると筆者が述べているかを、80字以内で説明する。
  • 手順2(根拠範囲):本文後半の、言語化によって得られる利益について説明している段落群に限定する。
  • 手順3(論理整理):「~だけではない。これとは別に~」という累加・並立のサイン(マーカー)を検知し、「他人の体験の言語化による利益(行動の判断材料)」と「自分の体験の言語化による利益(体験の違いの理解)」の二項構造を整理する。
  • 手順4(記述構成の確認):本文が明示している二つの利益のうち、一方だけでは必要な内容を十分に回収できない。「他人の体験の言語化」と「自分の体験の言語化」の両方が答案に組み込まれ、80字以内で論理的につながっているかを確認する。
  • 結論:「言語化された他人の体験を知ると、判断材料が得られて自分の行動を決定できるようになり、自分が体験を言語化すると、一つ一つの体験の違いを理解できるようになる。(77字)」を正答とする。

授業ではここまで扱う:記述問題における「累加マーカー」の視覚化

本記事で解説した問7のように、筆者の主張や利益を問う記述問題では、漠然と該当箇所を探して写すだけでは要素が欠落しやすい。

実際の授業では、こうした問題に対して、さらに次の3段階に分けて「答案フレームの構築」を行う手順を身につけさせる。

分析の段階思考手順今回の問題における適用例
段階1:論理マーカーの検知「〜だけではない」「これとは別に」「また」「さらに」などの累加・並立を示す接続表現を検知する。「他人から判断材料をもらえる『だけではない』。これとは別に〜」というサインを確認する。
段階2:答案フレーム(設計図)の構築マーカーを起点として、前後に存在するAとBの二つの要素がセットになることを予測し、記述の枠組みを作る。答案に「他人の体験を知る利益」と「自分の体験を言語化する利益」の二つの枠を先に用意する。
段階3:要素の抽出と結合用意したフレームに対して本文から該当箇所を抽出し、字数制限内に収まるように結合・調整する。「判断材料が得られ行動を決定できる(他者)」と「体験の違いを理解できる(自己)」を一つに結合する。

重要なのは、模範解答を丸暗記することではない。文中の論理的なサインを客観的に捉え、記述の設計図をあらかじめ構築するという、別の問題にも転用できる読解手順として整理することだ。

【石川県公立高校】国語の対策と復習手順

言語と体験に関するテーマの大枠を「知っている」ことと、初見の設問に対して正答までの手順を「再現できる」ことは全く別である。解説を読んで納得しただけでは、本番の緊張状態において同じ処理ができるとは限らない。

初見問題でも確実な処理を再現するためには、本記事で示した客観的な手順を徹底することが求められる。失点した問題では、単に正解を書き写すのではなく、「列挙された複数の方法の回収(問5)」や「累加マーカーからの二項抽出(問7)」のどこで処理を誤ったのかを冷静に確認する。同じ手順を別の初見問題でも反復して適用し、自らの言葉で明確にできるようになることが、復習の中心となる。

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この記事を書いた人

千葉県・習志野市を拠点とする「習志野受験研究所」所長。10年以上の指導現場から得た知見をもとに、全国の入試問題を分析・発信しています。

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