【2025年度山梨県公立高校入試・国語】大問4解答解説|『伊曾保物語』策略・教訓・返り点の処理

目次

導入:寓話の教訓と客観的処理

高校入試の国語では、古文の内容と、その背景にある故事や教訓などを関連づけた問題が出題されることがある。本問では、『伊曾保物語』の寓話の末尾に示された教訓と、その典拠となる『論語』の一節が組み合わされている。医学を知っていると偽って馬を食べようとした獅子王が、逆に馬の策略にかかって命を失いかけ、最後に「知らぬ事を知り顔に振舞うべきではない」という教訓が示される構成となっている。このように、登場人物の「表向きの行動」と「本当の目的」のズレを捉え、具体的な出来事が最終的な教訓へと一般化されていく枠組みを押さえておくことは、物語の展開や人物像を整理する有効な補助線となる。

しかし、そうした寓話の定石に気づけるだけで、記述問題や選択肢問題に正答できるわけではない。本番で過不足のない答案を作成し、精緻な選択肢を判定するためには、出来事の順序から策略の構造を分解し、失敗後の発言から人物像を確定し、さらに「現代語で書く」といった設問条件を客観的に処理する「思考手順」の言語化が不可欠である。本記事では、教訓を含む古典問題に対する客観的な読解手順を整理する。

『伊曾保物語』と『論語』の要約と全体構造

本文は、医学を学んでいると偽って馬に近づいた獅子王が、逆に足を痛めたふりをした馬に蹴られて命を失いかけ、自分の余計な策略を反省する古文と、その出来事から導かれる「知らないことを知ったように振る舞うべきではない」という教訓、その典拠となる『論語』の一節で構成されている。

読解の前提として、本文全体が以下のように「具体的な出来事から教訓への一般化(マクロな視点)」で展開していることを整理しておくことで、各設問が文章のどの局面を根拠としているのかを客観的に位置づけやすくなる。

構造の展開具体的な内容該当する設問
獅子王の偽装馬を食べるため、医学を学んでいると偽って近づく。(なし)
馬の逆の策略獅子王の悪巧みを見抜き、足を痛めたふりをして無防備な姿勢を取らせる。二 A・B
獅子王の失敗と自省馬に蹴られて命を失いかけた獅子王が、自身の余計な策略が原因だったと反省する。
出来事の一般化と典拠語り手により「知らないことは知らないとする」という教訓が示され、『論語』の教えに接続される。

このように、本大問は単なる「だまし合いの物語」として読むのではなく、具体的な出来事が教訓へ一般化されていく構造を前面に出して捉える必要がある。

【大問4】全問解答一覧

各設問の解答は以下の通りである。

設問解答
うしなわんとす
二 Aとげを踏んで足を痛めている
二 Bあおむけになって爪の裏を見る
「不」「為」「不」にそれぞれレ点

以下では、このうち他の初見問題にも転用しやすい策略の構造分解、人物像の確定、および漢文の返り点処理を中心に、解答までの客観的な思考手順を詳しく解説する。

【大問4】各設問の解答解説と思考手順

二 策略の構造分解と現代語訳の条件処理

  • 手順1(設問要求):馬が仕組んだ策略について、「馬は[ A ]ふりをして、獅子王が[ B ]ように策略を仕組んだ。」となるよう、それぞれ10字以上15字以内の現代語で具体的に説明する。
  • 手順2(根拠範囲):馬が獅子王の悪念を悟った直後の発言「わが足に株を踏み立ててわづらふなり」から、獅子王が「あふのきになつて、爪のうらを見る」状態になり蹴られるまでの場面に限定する。
  • 手順3(論理整理):馬の策略を「表向きに装った状態(A)」と「その結果、相手に取らせた無防備な状態(B)」の二段階に分解する。Aは「足にとげを踏み立てて苦しんでいる」ことであり、Bは「仰向けになって爪の裏を見る」ことであると整理する。
  • 手順4(答案構成と条件処理):抽出した古文の表現を、設問の「現代語で」という条件に従い、自然な日本語へ言い換える。A:「わが足に株を踏み立ててわづらふなり」→「とげを踏んで足を痛めている」(13字)B:「あふのきになつて、爪のうらを見る」→「あおむけになって爪の裏を見る」(14字)それぞれ字数条件を満たし、前後の文脈にも自然に接続することを確認する。
  • 結論:Aを「とげを踏んで足を痛めている」、Bを「あおむけになって爪の裏を見る」と確定する。

三 失敗後の発言からの人物像確定

  • 手順1(設問要求):本文中の獅子王の言動を説明したものとして、最も適当なものを選択する。
  • 手順2(根拠範囲):獅子王が馬に蹴られて気を失い、その後起き上がってからの独り言(「よしなきそれがしがはかり事にて……」以降)に限定する。
  • 手順3(論理整理):獅子王は馬にだまされてひどい目に遭ったが、「馬のせいだ」とは考えていない。自分が余計な策略をめぐらしたからであり、これは天の戒めである(己の行いの反省)と出来事を意味づけている。
  • 手順4(選択肢比較):アは「馬に恐れ謹んで懇願した」とする点が表向きの態度を真に受けており不適切。イは「本当に医学を学んでいた」と誤読しているため不適切。ウは「馬が進むべき道を教え諭そうとした」とする点が本文に根拠がない。エのみが、馬を非難せず自らの行いを反省したという、失敗後の自己評価を正確に説明している。
  • 結論:エを正答とする。

四 漢文の読み順と返り点の機械的処理

  • 手順1(設問要求):『論語』の一節「不知為不知」を「知らざるを知らずと為す」と読むために必要な返り点を付ける。
  • 手順2(根拠範囲):漢文の原文の文字順「不・知・為・不・知」と、書き下し文の読み順「知(らざるを)・不(知らずと)・為(為す)」を比較する。
  • 手順3(論理整理):前半の「不知」は、日本語では「知(1)→不(2)」と下から上へ一字戻るため、「不」にレ点が必要。後半の「為不知」は、日本語では「知(3)→不(4)→為(5)」と、下から順に一字ずつ上へ戻る。
  • 手順4(返り点の確定):一字上の文字に返って読む場合は「レ点」を用いる。したがって、前半の「不」、後半の「不」、および「為」のすべてにおいて、直後の文字から一字戻る指示となるレ点を付ける。
  • 結論:一つ目の「不」、「為」、二つ目の「不」にそれぞれレ点を付ける。

授業ではここまで扱う:「現代語で書く」という条件の処理

本記事で解説した設問(二)のような記述問題において、古文の読解で生徒が陥りやすい失点パターンは、本文の該当箇所を見つけた後、そのまま古文の表現(歴史的仮名遣いや古語)を抜き出して答案欄に書いてしまうことである。

実際の授業では、こうした問題に対して、さらに次の3段階に分けて「現代語で」という条件を処理する客観的な手順を身につけさせる。

分析の段階思考手順今回の問題(二)Aにおける適用例
段階1:本文からの該当箇所の抽出設問の要求(今回は「装った状態」)に合致する古文の記述を特定する。「わが足に株を踏み立ててわづらふなり」という該当箇所を抽出する。
段階2:現代語への言い換え設問の「現代語で書く」という指示に従い、古文特有の語彙や表記を、答案として自然な現代語へ直す。「株(とげ)」「わづらふ(痛めている・苦しんでいる)」と現代の表現に言い換える。
段階3:答案構文との接続と字数調整言い換えた内容を、解答欄前後の言葉(「[ A ]ふりをして」)に自然につながるよう整え、字数を確認する。「とげを踏んで足を痛めている」と構成し、文脈接続と13字(10字〜15字の条件)を満たすことを確認する。

重要なのは、該当箇所を発見して安心するのではなく、設問に「現代語で」という指定がある場合、それを単なる抜き出し問題として処理せず、現代の言葉として不自然さのない形に言い換えて着地させるという、別の問題にも転用できる読解手順として整理することだ。

【山梨県公立高校入試】国語の対策と復習手順

「古文の具体的な出来事を教訓へ一般化する構造」を知っていることと、初見の設問に対して正答までの手順を「再現できる」ことは全く別である。解説を読んで納得しただけでは、本番の緊張状態において同じ処理ができるとは限らない。

初見問題でも確実な処理を再現するためには、本記事で示した客観的な手順を徹底することが求められる。失点した問題では、単に模範解答を書き写すのではなく、「失敗後の発言からの人物像確定(三)」や「『現代語で書く』という条件の処理(二)」のどこで処理を誤ったのかを冷静に確認する。同じ手順を別の初見問題でも反復して適用し、自らの言葉で明確にできるようになることが、復習の中心となる。

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この記事を書いた人

千葉県・習志野市を拠点とする「習志野受験研究所」所長。10年以上の指導現場から得た知見をもとに、全国の入試問題を分析・発信しています。

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