【ラ・サール高校】英語(英作文)は「気軽なEメール返信」ではない。「4層構造の論理的エッセイ」である。

※本記事は、客観的分析のため『だ・である調』で統一しています。

ラ・サール高校の英作文を制するのは、帰国子女のような英語のセンスや、友人へのフランクな語りかけではない。カジュアルなEメールという「仮面」の裏に隠された、厳格な段落構成の設計図を見抜き、指定語数内で論理パーツを機械的に組み立てる「手順の遂行力」である。

一般的な指導では、「Eメールの返信なのだから、難しく考えず友達に話しかけるように自然な英語で書こう」と語られがちである。しかし、過去14年分の入試データを構造分解した結果、それは日本屈指の難関校では通用しにくいアプローチであることが判明した。「I was happy.」「It is fun.」といった感情的で抽象的な文を並べる解法は、出題者が真に求めている論理的証明を満たせず、本番において確実な得点には結びつきにくい。

以下に、過去14年間の全設問を解体した分析リストを公開する。この変遷を見れば、ラ・サール高校が「何を隠し、何を求めているか」が明確になる。

【ラ・サール高校・英語(英作文)】入試インテリジェンス 分析リスト(2012〜2025年)

年度大問ジャンルテーマ攻略の型(初手)設問の決定的特徴
20251Eメール最も怖いもの・人主張の明示と過去の体験の記述標・対象の特定と、それが怖い具体的なエピソード
20242Eメールキャンプの最悪な点状況の限定と五感への不快感の描写標・「悪天候」や「虫」など、共感可能な具体例
20233Eメール将来就きたい職業職業の宣言と志望動機・取り組みたい課題標・「なぜその仕事か」「何を実現したいか」の展開
20224Eメール入りたい部活と理由部活の宣言と過去の実績・今後の目標標・「これまで」と「これから」を繋ぐ時間軸
20215Eメール合格のお祝い方法条件提示(If)と未来の具体的行動予定標・「どう祝うか」に対する解像度の高い願望描写
20206Eメール最近大笑いした事対象の提示と、情景の物語的描写難・「笑い」を生んだ状況の映像的な説明
20197Eメール人気な先生と理由人物の特定と、特徴的な行動の列挙標・WhoとWhyへの明確な回答
20188Eメール好きな学校行事行事の特定と、体験の時系列配置標・過去形を用いた行動の連続描写
20179Eメールおすすめのペット対象の指定と、利点の具体的アクション化標・推薦する理由を動作(遊ぶ・世話する)で証明
201610Eメール三世代同居の是非賛否の明示と、二項対立や具体事例の提示標・抽象的な社会テーマを身近な生活レベルへ落とす
201511Eメールホームステイ先国名の指定と、過去の訪問経験への紐づけ標・「行くべき理由」を自身の過去の経験で裏付け
201412Eメール家事の手伝いYes/Noの明言と、タスク・背景の具体化標・「何をするか」と「なぜするか」の明示
201313Eメール友達の作り方解決策の提示と、出会いのメカニズム説明標・「クラブに入る→人に会える」という因果関係
201214段落執筆長期休みの宿題指定された4つの構成要素への完全準拠特・Eメール形式ではなく、論理構成が直接指示されている

この14年間のデータから、ラ・サール高校が受験生に要求している「決定的な法則(攻略の型)」が浮かび上がる。問題を解く際は、以下の手順で思考を展開しなければならない。

1. 2012年の「設計図」に基づく論理構成の順守

現在の受験生は「Eメールへの返信」という形式しか知らない。しかし、当研究所が遡った2012年の入試問題にはEメールという設定はなく、「1.意見(Opinion)」「2.理由(Reason)」「3.具体例(Example)」「4.結論(Ending)」という4つのパーツで段落を構成せよ、という直接的な指示が記載されていた。

出題者は翌2013年以降、この指示書きを消し去り「Eメール形式」へとパッケージを変更した。しかし、これまでの模範解答の特徴を見る限り、採点の核となるこの【4層構造の設計図】は、その後のEメール問題にも強く残っていると読むのが自然である。

実際の答案作成においては、語数制限の都合上、「理由」と「具体例」は一つの【具体化ブロック】として圧縮されることが多い。つまり、論理の中身は4層(主張・理由・具体例・結び)でありながら、答案の見た目は3ブロック(結論・具体化・結び)に整理されるのがラ・サールの黄金比である。表面上はEメールでも、実質的には論理段落の構築訓練として解くべきである。

【決定ルール】:Eメールという体裁に気を取られるな。頭の中に「主張 $\rightarrow$ 理由・具体例 $\rightarrow$ 結び」という空箱を用意し、そこに英文を流し込む作業に徹せよ。

2. 形容詞だけでは弱い。名詞と動詞による「ズームイン描写」

ラ・サールにおいて、抽象的な形容詞(fun, happy, interesting, good)だけでは説得力が弱い。「なぜ良いのか」「なぜ怖いのか」を、極めて解像度の高い「名詞」と「アクション(動詞)」で裏付けなければ得点化しにくい。

2024年の「キャンプの最悪な点」において「雨で寝袋が濡れ、地面が硬くて背中が痛い」と描写する。2017年の「おすすめのペット(犬)」において「公園でフリスビーで遊べる」と描写する。これがラ・サールの求める具体化である。

【決定ルール】:感情や評価を説明する際、形容詞だけで終わらせるな。必ずカメラをズームインさせ、「特定のアイテム(名詞)」と「五感で感じられる動作(動詞)」を用いて映像として描写せよ。

3. 「時制のレイヤー化」による文字数と説得力の確保

指定語数が60〜70語へと増加した現在、単一の時制(現在形のみ等)で内容を埋め切ることは難しい。

2025年の「最も怖いもの」では、「犬が怖い(現在)」理由を語るために「小学生の時に大きな犬に追いかけられた(過去)」というエピソードを挿入している。2023年の「将来の夢」では、「環境科学者になりたい(未来)」理由を「授業で環境汚染について学んだ(過去)」ことで裏付けている。

このように現在・過去・未来の時制を重ね合わせることで、論理に時間的な厚みを持たせることができる。その際、無理に背伸びをせず、自分が英語で語りやすい実際の経験や、具体例を引き出しやすいエピソードを選ぶことが重要である。

【決定ルール】:60語以上の英作文において、一つの時制に留まるな。「現在の意見や未来の願望」を語る際には、必ず「過去の具体的な体験(When I was 〜)」を挿入して時制を交差させよ。

結論と今日からのチェックリスト

以上の徹底分析からも明らかなように、ラ・サール高校の英語(英作文)で得点を奪うために必要なのは、英語の表現力やセンスではない。出題者の意図する「論理構造」を理解し、抽象語を具体的な映像へと変換する冷徹な「作業」である。才能ではなく作業である以上、正しい設計図を持って訓練を積めば、誰でも確実な得点源にすることができる。

今日からすべきアクションは以下の3点である。

  1. 「形容詞逃げ」の禁止: 英作文の演習において、fun, good, happy などの抽象的な形容詞だけで文を終わらせることを禁止とし、必ず次の文で「具体的な動作(動詞)」を用いてその状態を裏付ける訓練を行う。
  2. ブロック構成の習慣化: いきなり英文を書き始めるのをやめ、問題用紙の余白に「1.結論 2.理由と過去の具体例 3.結び(相手への逆質問など)」の日本語メモを1分で作る手順を徹底する。
  3. 「時制シフト」のパターン暗記: 「I want to 〜(未来)」と書いたら、次の文で「Because I experienced 〜(過去)」と繋ぐなど、時制を意図的に切り替える構文パターンを頭に叩き込む。

我々は、専門機関としてこの論理の型を提供し続ける。正しい設計図を持たないまま、感覚的な英語のおしゃべりで解答欄を埋める行為は避けるべきである。

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この記事を書いた人

千葉県・習志野市を拠点とする「習志野受験研究所」所長。10年以上の指導現場から得た知見をもとに、全国の入試問題を分析・発信しています。

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