【2025年度】青森県公立高校入試・国語大問4解答解説|「実体」と「機能」の対比を読む

目次

はじめに

本文では、「心」や「わたし」が、体のどこかに固定された実体として存在するのかが検討されている。筆者は、時計のはたらきが個々の歯車ではなく、その組み合わせと相互作用から生まれることを例に、心も固定された物質ではなく、変化する部分の相互作用から生じる機能であると説明する。さらに、「わたし」の本質を過去の記憶ではなく、脳が今この瞬間にしている経験に求めている。

ただし、文章のテーマを理解するだけでは、各設問の正答は確定しない。制限時間内に安定して得点するには、設問要求を確認し、根拠範囲を限定し、本文の論理を答案の形へ変換する客観的な手順が必要である。本記事では、その具体的な処理方法を示す。

解答一覧

正答
(1)4
(2)A:歯車 B:時計というはたらき
(3)連続した「わたし」というものが想定される
(4)I:まったく同じ体や同じ記憶を持っていても、再構成して動き出した瞬間から起こる経験が違う
II:経験そのもの
(5)1

『「気の持ちよう」の脳科学』(毛内拡)の要約と論理構造

本問を解くにあたり、まずは文章全体を貫くマクロな視点を提示する。本文の議論は、「心」についてと「わたし」についての二層に分かれており、それぞれにおいて明確な対比構造が展開されている。

論点否定される考え筆者が示す考え
心とは何か心が特定の場所に存在する固定的な実体である心は各部分の相互作用から生まれる機能である
「わたし」とは何か体や記憶の同一性そのものが「わたし」である「わたし」は脳が今この瞬間にしている経験そのものである

この二層の対比構造を念頭に置くことで、各設問で筆者がどの立場から論を展開しているかを的確に予測しやすくなる。

【大問4】各設問の解答解説と思考手順

(1)「生ま」と同じ動詞の活用形を選びなさい

  • 手順1(設問要求): 本文中の「生ま」と同じ活用形の動詞を特定する。
  • 手順2(根拠範囲): 本文の「心を生まない」の「生ま」と、選択肢1〜4の動詞の直後に着目し範囲を限定する。
  • 手順3(論理整理): 動詞「生む」の直後には打消の助動詞「ない」が続いている。動詞に「ない」が接続する際の活用形は「未然形」である。
  • 手順4(選択肢比較): 1「来る」は体言(頃)に続く連体形、2「起き」は助動詞(た)に続く連用形、3「越えれ」は接続助詞(ば)に続く仮定形である。4の「運ぶ」は「生む」と同じ五段活用である。五段活用の未然形は、「ない」が続く場合にはア段の「生ま」、「う」が続く場合にはオ段の「運ぼ」となる。語尾の音は異なるが、後ろに続く助動詞との接続によって、どちらも未然形だと判断できる。
  • 結論: 正答は4(力を合わせて運ぼう。)に決定。

(2)時計の例に当てはまる語句を抜き出しなさい

  • 手順1(設問要求): 時計の例において、「単純なパーツ(A・2字)」と「組み合わせから創り出される機能(B・9字)」に該当する語句を本文から抜き出す。
  • 手順2(根拠範囲): 時計の構造を具体例として説明している段落「時計をできる限りバラバラにすると〜」に範囲を限定する。
  • 手順3(論理整理): 「構成要素(部品)」が集まることで「機能(はたらき)」が生まれる、という因果関係を整理する。
  • 手順4(抜き出し条件の照合): 本文中の表記と指定字数を確認する。構成要素である「歯車(2字)」と、それらが相互作用して生み出す「時計というはたらき(9字)」が条件と完全に一致する。
  • 結論: Aは歯車、Bは時計というはたらきに決定。

(3)原因帰属バイアスについて二十字以内で書きなさい

  • 手順1(設問要求): 原因帰属バイアスにより「〔 〕ことで」、自己意識が錯覚として認識される理由を20字以内で説明する。
  • 手順2(根拠範囲): 原因帰属バイアスについて直接説明されている「そこで、僕たちの原因帰属バイアスは、そこに連続した『わたし』というものを想定する。」の箇所に限定する。
  • 手順3(論理整理): 脳が無意識下で処理したことに「原因(主体)」を求める結果として、何が作り出されるのかという因果関係を抽出する。
  • 手順4(抜き出し条件の照合): 本文の能動態「想定する」を、設問文の「〜ことで」に自然につながるよう、受動態の「想定される」へ構文を調整し、指定の字数内に収める。
  • 結論: 正答は連続した「わたし」というものが想定される(20字)に決定。

(4)話し合いの空欄を補いなさい(I 理由 / II 抜き出し)

  • 手順1(設問要求): Iは、再構成された人物が元の「わたし」ではなくなる理由(45字以内)。IIは「わたし」の本質を示す6字の語句を抜き出す。
  • 手順2(根拠範囲): Iは直接的な理由が明記されている「その理由は、次の瞬間から起こる経験が違うからに他ならない。」に、IIは「『わたし』というものは〜『経験そのもの』なのだ。」の箇所にそれぞれ限定する。
  • 手順3(論理整理): 「同じ体・記憶を再構成する」→「動き出した後の経験が異なる」→「別の人物になる」という論理の連鎖を整理する。また、筆者が定義する「わたし」=「今この瞬間の経験」というイコール関係を抽出する。
  • 手順4(条件照合): Iは「同じ体や記憶を持つ」という前提条件と「再構成後の経験が違う」という事実を組み合わせ、設問の「〜ために」に繋げる。IIは「記憶に宿るものではなく」の対比として置かれた「経験そのもの(6字)」を抽出する。
  • 結論: Iの正答はまったく同じ体や同じ記憶を持っていても、再構成して動き出した瞬間から起こる経験が違う(42字)。IIの正答は経験そのものに決定。

(5)文章の内容として最も適切なものを選びなさい

  • 手順1(設問要求): 本文全体の筆者の主張と最も合致する選択肢を特定する。
  • 手順2(根拠範囲): 文章冒頭の「心というものの実体など存在しない。変化し続けることこそが〜重要なのだ」および全体の文脈に限定する。
  • 手順3(論理整理): 筆者の主張は「心(わたし)に固定された実体はない」+「変化し続けることが重要である」という2つの要素で構成されている。
  • 手順4(選択肢比較):
    • 2:典型的な誤答の型(本文にない価値判断・優先順位の付加)。「脳の研究を第一に」という情報は本文に存在しない。
    • 3:典型的な誤答の型(別箇所の情報の誤結合)。「細胞が入れ替わる」という説明と、「同じ物質を再構成するクローンの思考実験」を誤って結び付けている。
    • 4:典型的な誤答の型(未解明から不要への意味のすり替え)。「現代科学では答えが得られていない」という事実を、「答えを出す必要がない」へ変えている。
    • 1は本文冒頭の2つの要素を過不足なく網羅している。
  • 結論: 正答は1に決定。

授業ではここまで扱う:否定と肯定の対比構造

無料公開の手順だけでも、客観的に正解を導くプロセスは十分に理解できたはずだ。しかし、当研究所の実際の授業では、ここで終わることはない。初見の文章問題に直面した際、自らの力で素早く論理構造を整理できるよう、さらに汎用的な分析の手順を身につけさせる。

今回の文章では、評論文における最重要の型である「AではなくB」を以下の3段階に分けて追跡する訓練を行う。

段階分析の手順本文への適用
第1段階否定表現を検出する「心というものの実体など存在しない」「記憶に宿るものではなく
第2段階否定されている考えを特定する心を固定的な物質とみなす考え、記憶を「わたし」の本体とみなす考え
第3段階否定後に示される主張を特定する相互作用から生まれる機能、変化し続けるはたらき、今この瞬間の経験

重要なのは、文章の中で筆者が「何を否定し、何を肯定しているか」を確認し、対立する二つの考えと、筆者の主張が置かれている側を特定することである。これを別の問題にも転用できる読解手順として整理することが、本番で得点を勝ち取るための真の実力となる。

【青森県公立高校】現代文の対策と復習手順

本文の内容を理解することと、初見の設問に対して正答までの手順を自力で再現することは、まったく別の次元の作業である。解説を読んで納得するだけでは、初見問題で同じ手順を再現できるとは限らない。

青森県公立高校の国語において上位校を目指すのであれば、感覚や雰囲気だけで選択肢を決める習慣から離れ、本文根拠を客観的に説明できる読み方へ切り替える必要がある。復習の際は、本記事で示した客観的な手順(設問要求の確定、根拠範囲の限定、誤答の型の排除など)を別の問題でも反復し、なぜその選択肢が正解になるのか、なぜ他の選択肢が消えるのかを、自らの言葉で明確に説明できる状態まで精度を高めてほしい。

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この記事を書いた人

千葉県・習志野市を拠点とする「習志野受験研究所」所長。10年以上の指導現場から得た知見をもとに、全国の入試問題を分析・発信しています。

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