【2025年度】新潟県公立高校 国語 大問4 解答解説|加藤周一『セレクション1』の論理を解剖
今回の文章では、科学者がなぜ研究に引かれるのか、科学的研究は何を目指しているのかが論じられている。Aでは科学者の知的好奇心や「秩序だった構造」の美しさが示され、Bでは技術者の実用的な目標との違いや、「奇蹟」が科学者にとって必要とされない理由へと議論が展開される。
しかし、テーマについての知識だけで安定して正答できるわけではない。本番で正答を導くには、本文の因果関係を整理し、複数の文章をまたぐ論理を客観的な「思考手順」として言語化することが重要である。本記事では、大問4の中から読解手順を一般化しやすい主要な設問を抜粋し、その具体的なプロセスを提示する。
『加藤周一セレクション1』(加藤周一)の要約と論理構造
本文は、Aの文章で「科学者の研究動機と目的」を定義し、Bの文章でそれをさらに深掘りして「科学が奇蹟(例外)を必要としない理由」を展開するという、二つの文章からなる構成となっている。
読解の前提として、以下のマクロな視点(全体の構造)を整理しておくことで、各設問が本文のどの部分を根拠としているのかを位置づけやすくなる。
| 文章 | 構造の展開 | 内容の要点 |
| A | 科学者と非科学者の溝 | 科学者が研究に引かれる心理は、非科学者には分かりにくく、両者の間には「深い溝」がある。 |
| A | 知的好奇心の対象 | 科学者の動機の一つである知的好奇心の対象は、超現実的なものではなく「世界の現実」である。 |
| A | 科学的研究の目的 | 個別の事実を知るだけでなく、事実相互の関係にある「基本法則」を見つけ出す。その法則によって表される「秩序だった構造」は美しく、科学者に美的感動を与える。 |
| B | 技術者との対比 | 技術者が「役に立つ」目標を掲げるのに対し、科学者は「秩序の美」そのものに引かれて研究する。 |
| B | 奇蹟が不要な理由 | 科学者にとって「奇蹟」とは例外であり、法則による秩序の美を損なうため、必要とされない。 |
【大問4】各設問の解答解説と思考手順
(三)「そこに一種の深い溝がある」の内容
- 手順1(設問要求):線部(1)「そこに一種の深い溝がある」とはどういうことか。その説明として最も適当なものを一つ選ぶ。
- 手順2(根拠範囲):傍線部の直前にある、科学者側と非科学者側の双方の認識について説明された箇所に限定する。
- 手順3(論理整理):「深い溝」という比喩から自由に想像するのではなく、直前にある二者の認識を整理する。科学者側は「自分たちの心理を理解してもらうのは難しい」と考え、非科学者側も「科学者の心理は理解しにくい」と考えている。つまり、研究内容だけでなく、科学者がなぜ研究に引きつけられるのかという「心理」そのものをめぐる隔たりが「深い溝」であると整理する。
- 手順4(選択肢比較):
- アは、科学者が「研究室の内外で活動している」ことを非科学者が理解していないという、活動場所のすり替えである。
- イは、研究が「神秘的なもの」であるという、本文にない認識を付け加えている。
- ウは、非科学者が「論文や命題を知ろうとしない」という学習意欲の有無に論点をずらしている。
- 結論:科学者側も自分たちの心理を理解してもらうことを難しいと考え、非科学者側も科学者の心理は分からないと考えているという、両者の心理的な隔たりを過不足なく捉えているエが正答となる。
(四)科学者が超現実的なことに興味を示さない理由(記述)
- 手順1(設問要求):線部(2)「超現実的なことにはあまり興味を示さない」理由を、「知的好奇心」という語を用いて50字以内で説明する。
- 手順2(根拠範囲):傍線部の直前にある、科学者の動機について説明された箇所に限定する。
- 手順3(論理整理):理由問題では、傍線部を繰り返すのではなく結果から直前の原因をたどる。「知的好奇心の対象=現実に存在する世界である」ことが原因となり、「幽霊などの超現実的なものにはあまり興味を示さない」という結果につながっていると因果関係を作る。
- 手順4(記述構成の確認):指定された「知的好奇心」を軸に、「①研究動機の一つが知的好奇心であること」「②その対象が世界の現実であること」の二要素を配置し、「〜から。」という理由の形でまとめる。
- 結論:「科学者の研究動機の一つである知的好奇心の対象が、超現実的なものではなく世界の現実そのものだから。」(48字)を正答の軸とする。
(六)科学者が「奇蹟」を必要としない理由(複数文章記述)
- 手順1(設問要求):線部(3)「奇蹟を必要としない」理由を、「Aの文章における科学的研究の目的についての考えを述べながら」120字以内で説明する。
- 手順2(根拠範囲):Aの文章における「科学的研究の目的」の段落と、Bの文章の「奇蹟は例外である」と説明する段落を接続する。
- 手順3(論理整理):二つの文章の論理をつなげる。Aから「科学的研究の目的は基本法則を見つけることであり、その法則によって表される秩序ある構造に科学者は美しさを感じる」、Bから「奇蹟は、その秩序の美を妨げる例外であること」という論理を取り出し、一つの因果関係に統合する。
- 手順4(記述構成の確認):「科学的研究の目的」→「構造の美」→「奇蹟はそれを妨げる例外」という論理のステップが、指定字数内で因果として成立しているか確認する。
- 結論:「科学的研究は、個々の事実を知るだけでなく、事実同士の関係にある基本法則を見つけ、秩序ある構造を捉えることを目的とし、その構造の美しさに反する例外である奇蹟は秩序の美を損なうから。」(89字)を正答の軸とする。
授業ではここまで扱う:複数文章型の記述における「条件の分解」
本記事で解説した(六)のように、新潟県公立高校入試などで複数の文章を横断する記述問題が出題された場合、いきなり書き始めると情報の過不足が生じやすい。
実際の授業では、文章全体を何となく要約するだけで終わらせず、次の3段階に分けて「設問条件を設計図として活用する」手順を身につけさせる。
| 分析の段階 | 思考手順 | 今回の問題における適用例 |
| 段階1:設問条件の分解 | 設問から答案に必要な条件を取り出す。 | ①Aの科学的研究の目的について述べる。 ②その内容を踏まえて、奇蹟を必要としない理由を説明する。 |
| 段階2:各文章からの要素抽出 | 指定された文章から必要な論理を取り出す。 | Aから「基本法則を見つけること」「秩序だった構造の美しさ」、Bから「奇蹟は秩序の美を妨げる例外」を取り出す。 |
| 段階3:因果関係による統合 | 取り出した要素を設問要求に沿って一つの理由説明にまとめる。 | Aの「秩序ある構造の美しさ」と、Bの「奇蹟はその美を妨げる例外」を結び、「〜から。」でまとめる。 |
重要なのは、二つの文章を何となくまとめることではない。上記のように、設問の条件文自体が「答案の設計図」になっていることを意識し、指定された文章から必要な要素を取り出して統合することである。設問の条件を分解し、指定された文章から必要な要素を取り出して統合する手順は、同種の複数文章型の記述問題にも利用しやすい。
【新潟県公立高校】論説文の対策と復習手順
本文の内容を理解することと、初見の設問で正答までの手順を再現することは別である。解説を読んで納得しただけでは、初見問題で同じ処理ができるとは限らない。
初見問題でも同じ処理を再現するためには、本記事で示した客観的な手順を徹底することが求められる。失点した問題では、単に正答を覚えるのではなく、「比喩表現を直前の二者の認識から『心理的な隔たり』として具体化する処理(三)」「結果から直前の原因をたどる処理(四)」「複数文章をまたぐ論理を設計図に従って統合する処理(六)」のどこで処理を誤ったのかを確認する。同じ手順を別の初見問題でも反復して適用し、自らの言葉で明確にできるようになることが、復習の中心となる。

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