北海道公立高校入試・理科|「密度・浮き沈み・状態変化とグラフ」の解法手順|同一物質の特定と体積変化の考え方(2013・2017・2020年分析)

目次

導入:この単元で求められる判断と処理の枠組み

北海道公立高校入試・理科では、2013年度・2017年度・2020年度の大問2で、物質の密度や浮き沈みに関する問題が出題された。2013・2017年度には水やロウの状態変化も扱われ、2017年度には加熱時間と温度変化のグラフも出題されている。

この単元の問題では、単に $\text{密度}=\frac{\text{質量}}{\text{体積}}$ の公式に数値を当てはめるだけの設問にとどまらない。以下の3つの処理を正確に使い分ける力が求められている。

  1. 質量と体積を点で表したグラフにおける「原点を通る直線」からの同一物質の特定
  2. 複数の液体(水・エタノール・混合液など)に対する「浮き沈みの結果表」からの密度の大小比較
  3. 液体から固体への状態変化(凝固)において、「質量は変わらない」まま「体積が変化する」ことを踏まえた密度の大小がどう変わるかの判断

本記事では、2013年度・2017年度・2020年度の実際の出題構造を整理した上で、初見の実験データやグラフに対しても迷わず正解を導き出すための具体的な解法手順を解説する。

1. 出題履歴と設問構造(2013・2017・2020年度の比較)

過去15か年(2012〜2026年度)の北海道公立高校入試において、密度や浮き沈み、状態変化に関する大問は以下の3回出題されている。それぞれの年度で扱われた実験設定と要求された処理は以下の通りである。

年度・大問扱われた実験テーマ各設問で要求された主な判断・計算処理
2013年度
大問2
・ロウと水の凝固(液体$\rightarrow$固体)
・3種の液体に対する小片の浮き沈み
・複数の物体の質量と体積のグラフ
①水とロウが液体から固体になるとき、体積がどう変わるか(水は増え、ロウは減る)を判断する
②3種類の液体に対する固体小片の浮き沈み表から、液体と固体の密度の大小関係を特定する処理
③質量(縦軸)と体積(横軸)のグラフ上で原点を通る直線をひき、傾きが等しい点から同じ物質を選ぶ処理、および同じ物質の別の質量における体積計算
2017年度
大問2
・水とロウの凝固時の体積・密度計算
・固体の水(氷)と固体のロウの浮沈
・物質の加熱と温度変化(融解曲線)
①同体積の液体の水と液体のロウがすべて固体になった後の体積と質量から、それぞれの固体の密度(氷 $0.91\text{g/cm}^3$、固体ロウ $0.82\text{g/cm}^3$)を算出する処理
②算出した固体密度と液体密度の大小を比較し、液体の水や液体のロウに入れた際の浮き沈みを選ぶ処理
③加熱時間と温度変化のグラフ(融解曲線)から、固体と液体が共存する区間(融点)や状態を読み取る処理
2020年度
大問2
・電子てんびんとメスシリンダーによる金属の密度測定
・プラスチック小片と水・エタノール混合液の浮き沈み
①メスシリンダーの液面上昇分から物体の体積を求め、質量を体積で割って密度を算出・金属の種類を特定する処理
②水とエタノールの混合割合を変えた複数の試験管にプラスチック小片を入れた際の浮き沈みの変化から、各プラスチックの密度の大小順序を決定する処理

2. 頻出する3つの問題パターンと解法手順

上記の出題履歴から確認できる通り、この単元の設問は大きく3つのパターンに集約される。それぞれの判断手順を整理する。

パターン①:質量と体積のグラフから「同じ種類の物質」を特定する手順(2013年度・大問2型)

複数の物体A〜Eの「質量($\text{g}$)」と「体積($\text{cm}^3$)」を測定し、質量と体積を点で表したグラフから「同じ物質でできているもの」を選ばせる問題である。

  • 誤りやすい考え方:グラフに打たれた点どうしを横に結んだり、点と点の距離が近いものを選んでしまう。
  • 正しい解法手順:
    1. 原点 $(0, 0)$ と各点を定規で結ぶ:密度は「$1\text{cm}^3$ あたりの質量($\frac{\text{質量}}{\text{体積}}$)」であり、グラフ上では「原点 $(0, 0)$ とその点を結んだ直線の傾き」として表される。
    2. 同じ直線上に乗る2点を探す:原点からひいた1本の直線上に重なる点は、体積や質量が異なっていても比(密度)が等しいため、同じ種類の物質であると特定できる。
    3. 傾きの大小で密度の大小を判定する:(縦軸が質量・横軸が体積の場合)原点を通る直線の傾きが急であるほど密度が大きく、傾きが緩やかであるほど密度が小さい。
    • ※注意:年度や問題集によって「縦軸=質量、横軸=体積」の場合と「縦軸=体積、横軸=質量」の場合がある。必ず最初に縦軸と横軸の項目名・単位を確認すること。

パターン②:状態変化(液体$\leftrightarrow$固体)に伴う体積・密度変化の判定手順(2013・2017年度・大問2型)

「水」と「水以外の一般的な物質(ロウなど)」が液体から固体に状態変化(凝固)するときの、質量・体積・密度の変化と浮き沈みを比較させる問題である。

  • 押さえるべき基本原則:
    • 質量は変化しない(質量保存):状態が液体から固体に変わっても、物質をつくる粒子(分子)の数そのものは変わらないため、質量($\text{g}$)は一切変化しない。
    • 体積と密度は反比例の関係で変化する:$\text{密度}=\frac{\text{質量(一定)}}{\text{体積}}$ であるため、体積が小さくなれば密度は大きくなり、体積が大きくなれば密度は小さくなる。
物質の区分液体 → 固体(凝固)時の変化同じ物質の液体の中に固体を入れたときの浮き沈み
ロウ(および水以外のほとんどの物質)・粒子のすき間が狭くなり、体積が減少する(液面の中央がくぼむ)
・質量は変わらず体積が減るため、密度は大きくなる(液体密度 $<$ 固体密度)
固体のロウは液体のロウより密度が大きいため、液体のロウの中に沈む。
水(例外的な変化をする物質)・氷になるときに体積が約1割増加する(水面が盛り上がる)
・質量は変わらず体積が増えるため、密度は小さくなる(水の密度 $1.0\text{g/cm}^3 >$ 氷の密度 約 $0.91\text{g/cm}^3$)
固体の水(氷)は液体の水より密度が小さいため、液体の水の上に浮く。
  • 2017年度・大問2の処理と応用:2017年度では、水とロウが液体から固体になった際の体積変化をもとに、それぞれの固体の密度を計算し、同じ物質の液体中で浮くか沈むかを判断する問題が出題された。さらに、この考え方は異なる物質の組み合わせにも応用できる。例えば氷をエタノールに入れた場合、氷の密度がエタノールより大きければ沈む。「氷は水に浮く」という知識だけで判断せず、必ず物体と液体の密度を比較することが重要である。

パターン③:混合液・複数液体の「浮き沈み表」から密度順を特定する手順(2013・2020年度・大問2型)

水(密度 約 $1.0\text{g/cm}^3$)とエタノール(密度 約 $0.79\text{g/cm}^3$)を異なる割合で混ぜた複数の液体(または食塩水・水・エタノールの3種の液体)に、いくつかの固体小片を入れたときの「浮いた/沈んだ」の結果から、物質の密度の順序を決定する問題である。

  • 正しい解法手順:
    1. 先に「液体どうしの密度の順序」を確定する:
      • 水($1.0\text{g/cm}^3$)とエタノール($0.79\text{g/cm}^3$)の混合液であれば、「水の割合が多いほど密度が大きく、エタノールの割合が多いほど密度が小さい」という順序を最初に表の横に書き込む。
    2. 各固体が「何種類の液体に浮いたか(沈んだか)」を数える:
      • すべての液体に沈む固体 $\rightarrow$ どの液体よりも密度が大きい。
      • すべての液体に浮く固体 $\rightarrow$ どの液体よりも密度が小さい。
      • ある液体Aには浮き、別の液体Bには沈む固体 $\rightarrow$ その固体の密度は「液体Bの密度 $<$ 固体の密度 $<$ 液体Aの密度」の間にあると特定できる。

3. 加熱時間と温度変化のグラフ(融解曲線・沸点)の読み取りポイント

2017年度・大問2の後半のように、状態変化の大問では「固体を加熱したときの時間と温度の関係グラフ」が組み合わされることが多い。グラフを読む際は次の3点を確認する。

  1. 温度が一定になる水平な区間(状態変化中の区間):
    • 固体の物質を加熱し始めて最初に温度変化が止まり水平になる温度が融点、さらに加熱して液体が気体に変わる際に水平になる温度が沸点である。
    • 純粋な物質(純物質)では融点・沸点が一定の温度になりグラフに水平な区間が現れるが、混合物(水とエタノールの混合物など)では温度が一定にならず緩やかに上がり続ける。
  2. 水平な区間における「物質の状態」:
    • 融点の水平区間が始まる直前までは「固体のみ」、水平区間が終わった直後からは「液体のみ」であるが、水平になっている途中の区間は「固体と液体の両方(固体+液体)」が混ざって存在している状態である(「液体のみ」と選ばないよう注意する)。
  3. 物質の量(質量)を変えた場合のグラフの変化:
    • 同じ物質の質量を増やしても、物質固有の融点・沸点は変わらない。一方、同じ温度まで上げるために必要な熱量は増加するため、同じ加熱条件では一般に加熱時間が長くなる。熱の損失を無視でき、一定の割合で熱を与える理想的な条件では、質量を2倍にすると必要な加熱時間も2倍になる。

授業ではここまで扱う:密度・浮き沈み・状態変化の「4段階の確認手順」

実際の授業では、密度や状態変化・浮き沈みの計算・考察問題に直面した際、感覚で「浮く・沈む」を判断させず、次の4段階の手順で数値を整理させる。

段階確認・処理する内容具体的なチェックポイント(ミス防止の急所)
第1段階
基準単位と軸の確認
密度の単位($\text{g/cm}^3$)と、グラフの縦軸・横軸がそれぞれ「質量」と「体積」のどちらになっているかを確認する。・メスシリンダーで体積を測る場合は、「物体を入れた後の目盛り − 入れる前の水の目盛り」の引き算を忘れないこと。
・最小目盛りの10分の1(例:最小目盛りが $1\text{cm}^3$ なら $0.1\text{cm}^3$ の位)まで読み取っているか確認する。
第2段階
変わらない量と変わる量を区別する
状態変化や条件変更において、「変わらない量(質量や融点)」と「変わる量(体積や加熱時間)」を分けて書き出す。・液体が固体に凝固しても「質量($\text{g}$)は前のまま変わらない」ことを計算式の分子にそのまま使う(2017年度・大問2)。
第3段階
密度を計算して比較する
公式「密度=質量÷体積」で計算し、途中計算では必要な桁数を保つ。最終答案では、問題文で指定された小数の位に合わせて四捨五入する(またはグラフ上で原点を通る直線をひく)。・割り切れない場合や四捨五入の指定がある場合は、指定の桁数の1つ下の位まで計算して四捨五入する。
第4段階
大小比較と設問要求の照合
「物体の密度 $<$ 液体の密度 なら浮く」「物体の密度 $>$ 液体の密度 なら沈む」の不等号で判定し、設問の聞き方に合わせて答える。・「密度が大きい順に並べよ」なのか「小さい順に並べよ」なのか、記号で答えるのか物質名で答えるのかを最後に必ず照合する。

まとめ:復習時のチェックリスト

手元の問題集や過去問で「物質の性質(密度・状態変化・水溶液の蒸留や融解曲線)」の単元を復習する際は、以下の4点が自力で再現できるかを点検してほしい。

  1. メスシリンダーと電子てんびんの測定値から、引き算(体積変化)と割り算(質量$\div$体積)を経て正確に密度を計算できるか。
  2. 質量と体積を点で表したグラフに「原点 $(0, 0)$ を通る直線」をひき、同じ物質のペアや密度の大小を特定できるか。
  3. 水とロウの状態変化(液体$\rightarrow$固体)における体積変化・密度変化の違いを説明でき、具体的な数値から浮き沈みを判定できるか。
  4. 加熱時間と温度のグラフから融点・沸点を読み取り、「固体+液体」が共存する区間や、質量を変えたときのグラフの変化を作図・選択できるか。
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この記事を書いた人

千葉県・習志野市を拠点とする「習志野受験研究所」所長。10年以上の指導現場から得た知見をもとに、全国の入試問題を分析・発信しています。

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