1. 序論:東京理科大学英語大問5攻略の真実
東京理科大学[B方式・建築学部ほか]の英語大問5(学術論文の要約・指示語推測)の攻略は、文脈をなんとなく辿って代名詞の対象を雰囲気で拾うような曖昧な作業ではない。前後の因果関係や対比構造から、入るべき意味や指し示す対象を客観的に限定していく処理手順である。
もちろん、学術的な文章を読むための基礎的な英単語力や、関係代名詞・前置詞などの基本的な文法知識は不可欠である。しかし、単語の日本語訳を覚えるだけでは不十分であり、ディスコースマーカー(論理展開の標識)の機能を見抜く手順や、形容詞の修飾関係から代名詞の中身を逆算する型が必要となる。
一般的な指導では「前後の文脈から一番自然なものを推測しろ」と説明されることが多い。しかし、難関大学の学術要約においては、自己流の不正確な推測ではなく、文法規則や論理展開の「型」を用いて、選択肢を一つに絞り込む再現性の高いアプローチが求められるのである。
2. 2025年度 大問5:設問ごとの構造と処理手順一覧
本年度の大問5は、3つの短い学術論文の要約(心理学・工学分野)を読み、下線部の意味や指示内容を選択する全6問である。一見するとバラバラな問題に見えるが、すべて「因果」「対比」「抽象と具体」「代名詞のルール」のいずれかで処理できる。以下に、全設問の客観的な処理手順を整理した。
| 設問 | 出題形式 | 求められる知識・構造 | 安定して得点する処理手順 | 正答 |
| (1) | 語意推測 | 直前内容を受ける which と結果の読み取り | 直前の「解のないパズル」という原因から、試みが「無益な(hopeless)」ものになる因果を導く | 4 |
| (2) | 指示語推測 | 代名詞 one と対比構造 | unsuccessful attempt と対比される novel one という構造から、one = attempt と特定する | 3 |
| (3) | ディスコース | 抽象から具体への移行 | 感情一般(Emotions)から怒り(anger)へと具体化する標識 In particular を選ぶ | 3 |
| (4) | 指示語推測 | 所有格と主述の対応 | 感情評価(ratings)を行う主体は誰かと考え、実験の「参加者(the participants')」と特定する | 3 |
| (5) | 指示語推測 | 前置詞句内の目的語 | disturb people と causing them が同じ対象を指す構造から、妨害される人々(the people)と特定する | 4 |
| (6) | 語意推測 | 形容詞の対比・同形反復 | 将来の本格的な研究(future formal studies)と対比される「予備的な・初期の(initial)」研究と特定する | 1 |
3. 東京理科大学英語大問5「学術要約・指示語推測」の徹底分析
学術論文のサマリー(要約)において、受験生が陥りやすい「雰囲気での拾い読み」を防ぎ、確実に得点を重ねるための分析手順を解説する。
【語意推測】因果関係と対比構造から意味を限定する型
設問(1)と(6)は、未知の単語や文脈に応じた意味を、前後の構造から客観的に推測する問題である。
設問(1)の futile は、以下の構造から意味を絞り込む。
participants worked on puzzles with no solutions, which generated many futile solution attempts...
カンマを伴う関係代名詞 which は、直前の「解のないパズルに取り組んだ」という状況・内容全体を受けている。「解のないパズル」に取り組んだ結果(generated)として生まれる「解決の試み(solution attempts)」は、論理的に考えて「成功の見込みがない、無益な」ものにしかなり得ない。したがって、選択肢の中で最も近い 4 (hopeless) を選ぶのが正しい手順である。
設問(6)の preliminary は、文中に鮮やかな対比構造が隠されている。
we suggest system parameters that should be examined in detail in future formal studies based on the lessons learned from our preliminary study.
ここでは、future formal studies(将来の本格的な研究)と、our preliminary study(私たちの下線部の研究)が明確に対置されている(同形反復・対比による意味の限定)。「未来の、本格的な」研究に対する、現在の「〇〇な」研究という関係性から、preliminary が「初期の、予備的な(initial)」という意味を持つことが論理的に確定する。
【指示語の特定】文法規則と修飾関係から対象をロックする型
設問(2)、(4)、(5)は、代名詞や所有格が何を指しているかを特定する問題である。これを日本語訳の雰囲気で選んではならない。
設問(2)の one の特定手順は以下の通りである。
creating a pause before the unsuccessful attempt can be replaced by a novel one.
代名詞 one は、直前に出た単数可算名詞の反復を避けるために用いられ、形容詞で修飾することができる。ここでは one が形容詞 novel(新しい)によって修飾されている。文脈上、「失敗に終わった試み(unsuccessful attempt)」が「新しい〇〇(novel one)」に置き換えられる、という明確な対比関係が存在する。したがって、one が指すのは必然的に attempt となる。
設問(4)の their は、名詞と動詞の関係性から所有者を特定する。
Emotion induction in the participants was successful, but no specific emotional music significantly influenced their subjective affect ratings.
下線部 their が誰(何)の所有格であるかを特定する際、主語と述語・目的語の関係に立ち返る。文の構造において、主観的な感情の評価(subjective affect ratings)を行っている主体は誰か。直前の文脈で Emotion induction in the participants(参加者たちへの感情誘導)と明示されているため、評価の主体も当然 the participants(参加者たち)であると見なすことができる。したがって、正解は 3 (the participants’) である。
設問(5)の them は、文の構成要素の働きから対象を特定する。
This effect can disturb people without causing them any physical discomfort...
without 以下で causing O1 O2 の第4文型が形成されている。文法的に整理すると、disturb people(人々を妨害する)という動作の対象と、without causing them...(彼らに〜を引き起こすことなく)という動作の対象は同一である。したがって、them は直前の people、すなわち「この装置によって発話を妨害される人々」を指す。選択肢は 4 (the people) が正解となる。
4. 結論と今日から徹底すべき3つのチェック
東京理科大学のような難関理系大学の学術要約読解で得点を安定させるために必要なのは、生まれ持った語感や勘、あるいは単語帳の暗記量だけではない。合否を分けるのは、英文の論理展開や代名詞のルールを客観的に見抜き、感覚に頼らず解答根拠を本文中から安定して取り出す「正しい型(手順)」の徹底である。
自己流の学習、すなわち「単語の日本語訳をつなぎ合わせて、本文の論理とずれた解釈を作ってしまう」「なんとなく一番近い名詞を代名詞の答えとして選ぶ」といった方法だけでは、出題の真の構造や失点ポイントに気づくことは難しい。
知識を実戦で使える武器に変えるために、今日から以下のステップを実践されたい。
- 未知の単語に出会ってもすぐに辞書を引かず、関係詞や接続詞が作る「因果関係」から意味を論理的に推測する訓練を行うこと。
- 要約文の中で対比関係(昔と今、対象Aと対象B)を見つけたら、それぞれの要素がどのように言い換えられているか(同形反復)を視覚的に追うこと。
- 代名詞(one, them, their など)を見たら、雰囲気で選ばず、修飾語との関係や主語・目的語の文法的なつながりから対象を客観的に限定すること。

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