2025年および2026年の広島大学前期日程(英語)では、メディア言語と平和度指数の相関(2025年)、半世紀ぶりの米国民間月面着陸(2025年)、犬の睡眠メカニズムと進化(2026年)、そしてスーダンにおける文化財破壊の歴史的損失(2026年)など、多岐にわたる学術的・社会的なテーマが出題された。
これらの文章では、「対立構造(高平和社会と低平和社会など)」や「因果関係」に加え、「研究目的→調査方法→結果→限界→結論」「出来事の発生→問題→対応→結果」といった情報の配列が明確に設計されている。高校英語の範囲を超えた社会・科学的な論点に触れられる題材でもある。
しかし、社会課題や動物行動学のテーマを知っているだけでは、入試本番で正答を導き出すことはできない。本番の限られた時間内で正確に要約や図表英作文、空所補充に対応するには、文法や論理マーカーに基づき、客観的な「思考手順」を言語化することが不可欠である。
本記事では、過去2年間のデータを統合し、広島大学の長文読解や図表英作文で要求される情報処理の型を解剖していく。
Macro Analysis(構造の可視化と重要語彙・構文リスト)
2025年と2026年の大問1・2・4を貫く読解の鍵は、「対比」「逆接」「時間的変化」「因果関係」を示す論理マーカーの的確な処理である。以下は、両年度の過去問データから統合・抽出した、文意把握および設問処理の根拠となる重要語彙・構文のリストである。
| 英単語/熟語/構文 | 品詞 | 日本語の意味 | 備考(出典・文脈・テーマなど) |
| Unlike ~ | 前置詞 | 〜とは異なり | 2026年大問1:人間と犬の睡眠パターンの違いを示す【論理マーカー:対比】 |
| While S V | 接続詞 | SがVする一方で/SがVするが | 2025年大問1 / 2026年大問1・2:対立する事象や意見を示す【論理マーカー:対比・譲歩】 |
| On the other hand | 副詞句 | 他方で、それに対して | 2025年大問1:ヘイトスピーチと平和的発言の対立構造【論理マーカー:対比】 |
| Meanwhile | 副詞 | その一方で | 2025年大問1・2:対照する結果や別の出来事への転換【論理マーカー:対比】 |
| However | 副詞 | しかしながら | 両年度大問1・2:予想や前文からの逆接【論理マーカー:逆接】 |
| rather than -ing / rather than A | 接続表現 | AするのではなくBする/AよりもむしろB | 2026年大問1:根本的な変化ではなく適応であることを示す【論理マーカー:対比】 |
| Despite ~ | 前置詞 | 〜にもかかわらず | 2025年大問1 / 2026年大問2:限界や困難を踏まえた上での譲歩【論理マーカー:譲歩】 |
| At first | 副詞句 | 最初は | 2025年大問2:空所補充の正答。通信途絶の状況【論理マーカー:時間的変化(起点)】 |
| eventually | 副詞 | 最終的に、ついに | 2025年大問2:時間経過後の通信回復【論理マーカー:時間的変化(帰結)】 |
| lead to ~ | 動詞句 | 〜につながる、〜を引き起こす | 2025年大問1:ヘイトスピーチがもたらす結果 |
| cause a delay | 動詞句 | 遅れを引き起こす | 2025年大問2:月面着陸時の技術的課題による影響 |
| blame A for B | 構文 | BのことでAを非難する | 2026年大問2:博物館破壊の責任の所在を明確にする表現 |
| originate from ~ | 動詞句 | 〜に由来する、〜から生じる | 2025年大問1:データの収集元(地元ニュース)の特定 |
| date back to ~ | 動詞句 | (過去の時期)にさかのぼる | 2026年大問2:遺物が旧石器時代等に作られた歴史的背景 |
| analyze A for B | 動詞句 | Bを求めてAを分析する | 2025年大問1:テキスト分析におけるパターンと頻度の調査手法 |
| format shares of recorded music sales | 名詞句 | 録音音楽売上に占める各媒体形式の割合 | 2025年大問4:分析対象となるデータの主題 |
| trends in ~ | 名詞句 | 〜の傾向、推移 | 2026年大問4:肉と魚介類の消費量推移の主題 |
| describe and analyze these trends | 動詞句 | これらの傾向を記述し、分析する | 2025年大問4:図表読み取り英作文の指示 |
| discuss one or more potential reasons for ~ | 動詞句 | 〜について考えられる理由を一つ以上論じる | 2026年大問4:図表の変化に対する要因分析の指示 |
上記のリストから読み取れるマクロな視点は、広島大学の長文が「二項対立の整理」や「時系列に伴う事象の変遷」によって構成されている点である。この構造をあらかじめ予測しておくことで、段落内の情報関係を整理しやすくなり、設問処理の迷いを減らせる。
Micro Analysis(論理マーカーを使った設問処理の実例)
抽出したリストの語彙や論理マーカーが、実際の入試本番でどのように機能するのか。2025年大問2(月面着陸)の空所補充問題を例に、受験生が本番で再現すべき客観的な思考手順を解剖する。
【設問】
資料2の第4段落にある空欄 ( ) を補うのにもっともふさわしい語句を、(1)〜(4)の中から一つ選びなさい。
(選択肢:(1) For instance / (2) In the end / (3) In short / (4) At first)
・手順1(設問要求の確認):
前後の文脈から、状況の変化や論理展開を最も正確に表す接続表現を一つ特定する。
・手順2(根拠範囲の限定):
空所の直前である Odysseus touched down at 23:23 GMT. という個別の事実から、空所を含む ( ), there was no signal at all from the robot. を経て、その直後の but eventually a communications link was made までの情報ブロックを分析対象とする。
・手順3(論理関係の整理):
空所の直後には「全く信号がない(no signal at all)」というマイナスの事象がある。しかし、続く文では but と eventually(最終的に)という論理マーカーを経て、「通信が確立された(a communications link was made)」というプラスの事象へ転換している。つまり、ここは「起点(無音)から帰結(通信確立)へ」という【時間的変化】の構造を形成している。
・手順4(選択肢の照合):
各選択肢の論理機能を前後の文脈と照合し、成立しないものを排除する。
- (1)
For instance(例えば):直前の一般的な説明に具体例を加える表現である。しかし、直前は「23時23分に着陸した」という個別の出来事であり、「信号がなかった」はその具体例ではない。 - (2)
In the end(最終的に):これを空所に入れると「最終的に無音だった」となり、直後のeventually(最終的に通信確立)と事実関係が完全に逆転し矛盾する。 - (3)
In short(要約すると):前の内容を要約する表現である。しかし、「信号がなかった」という事象は、直前の着陸時刻や前段落の技術的問題全体を要約していない。 - 残る (4)
At first(最初は)を代入すると、「最初は信号がなかったが、時間が経過し、最終的に(eventually)通信が確立した」という時系列推移が過不足なく成立する。
・手順5(正答の確定):
前後の時間関係が矛盾なく成立することを確認し、(4) At first を正答と確定する。
Conclusion(再現可能な復習手順)
英語長文では、本文のテーマを大まかに理解することと、設問条件に沿って根拠を特定することは別の作業である。語彙力や読書経験は重要だが、それだけに依存すると、選択肢の微細な差や時間関係の変化を処理できないことがある。
少なくともこの2年間の広島大学の問題では、Unlike、However、At first、eventually などの表現を手掛かりに、対比・逆接・時間的変化を整理する力が必要である。さらに、選択肢が本文の情報をどのように追加・省略・逆転しているかを照合しなければならない。
「設問要求の確認」「根拠範囲の限定」「論理関係の整理」「選択肢の照合」「正答の確定」という5段階を、別の過去問でも同じ順序で実行することが重要である。解説を読んで終えるのではなく、自分がどの表現を根拠として判断したのかを言葉にして残すことで、設問処理の安定性を高められる。

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