岡山大学・前期日程における英語大問3(和文英訳および対話・図表英作文)の攻略は、生まれ持った「語学のセンス」や「日本語の逐語訳」、あるいは「定型フレーズの丸暗記」ではない。もちろん、基礎的な英単語や文法知識(例えば、correlation や difficult などの基本語彙)は不可欠だが、用語を覚えるだけでは不十分であり、与えられた日本語やデータを英語の論理構造へと組み替える「情報変換の手順」が必要である。
例えば、2024年の出題にある「その世界の大きさ」という比喩を物理的な巨大さと捉え、the size of the world のように自己流で直訳してしまうと、文脈上の「作品の幅広さ」という真の意図を見誤り、失点につながりやすい。また、2026年の大問3では形式が対話文・図表説明へと変化したが、グラフ内の数値を漫然とすべて羅列しようとすると、出題者が求める「季節変動の相関」の抽出に失敗しやすい。出題形式が変わっても、設問で求められる情報を的確に選び、安全な構造へ変換する手順の有無が、答案の精度に大きな差を生むのである。
以下に、過去3年間の岡山大学(前期)英語・大問3におけるテーマと、解答の根拠となった処理手順の抽出データを提示する。
岡山大学・英語(前期)大問3 分析データ(2024〜2026年)
| 年度 | 設問形式 | 具体的な単元名 | 解答根拠を抽出するための構文・情報処理 |
| 2024 | 和文英訳 | 比喩の処理と主語の補完 | 比喩が表す意味の確定、動作主の補完 |
| 2025 | 和文英訳 | 程度・結果の構文と形式主語 | so ~ that などの活用、処理しやすい構文への組み替え |
| 2026 | 対話・図表英作文 | 対話の発言機能と図表情報の選択 | 発言の機能からの逆算、同方向の季節変動・相関の抽出 |
岡山大学・英語(前期)大問3(和文英訳・図表説明)の情報変換の型
【和文英訳・比喩の処理】字面ではなく、比喩が表す内容を英語へ変換する手順
岡山大学の和文英訳では、日本語で省略された主語や、字面だけでは意味を確定できない比喩表現が出題されている。2024年度下線部②の「その世界の大きさに驚かずにはいられない」を、the size of the world のように訳すと、物理的な世界の大きさを表す英文になってしまう。
ここでの「世界の大きさ」は、坂本龍一の作品がヒット曲から映画音楽まで広がっていることを受けた表現である。したがって、「音楽世界の広がり」「作品の幅広さ」と意味を確定してから、英語で表しやすい具体的内容に言い換えるか、自然な英語の比喩へと変換する必要がある。
また、日本語では「作品をふり返る」人物が明示されていないため、一般的な読者を示す you などを動作主(主語)として補ってから英文の構造を決める。
【決定ルール(独自の手順)】
比喩を見つけたら、直ちに単語を置き換えるのではなく、まず文脈上何を表しているかを確定する。そのうえで、自然な英語の比喩として残すか、具体的な表現へ言い換えるかを判断する。また、日本語で主語が省略されている場合は、動作主を補ってから英文の構造を決める。
- 解答構成例:Looking back over his works, from hit songs to film music, you cannot help being struck by the breadth of his musical world.
【和文英訳・程度と結果】so ~ that を使って論理関係を組み直す手順
2025年度下線部③の「そう考える人がでてきても不思議ではないほどに、この混乱を整理することはむずかしい」には、「混乱の整理が非常に難しい」という程度と、「そのように考える人が現れても不思議ではない」という結果の論理が含まれている。
日本語の語順をそのまま再現しようとするより、so ~ that を用いて程度と結果の関係を明示すると、処理しやすい構文へと組み替えることができる。
【決定ルール(独自の手順)】
「~するほど…だ」という日本語に出会ったら、「非常に…なので、その結果~だ」と意味を整理する。so ~ that は有力な選択肢だが、唯一の正解ではない。文法的に安定し、元の因果関係を保てる安全な構文を選ぶことが重要である。
- 解答構成例:The confusion is so difficult to make sense of that it is no wonder some people think that way.
【図表説明・対話文】季節変動の相関と発言の機能を読み取る手順
2026年度の図表では、アイスクリームの売上と水難事故件数が、2024年と2025年の双方で似た季節変動を示している。ここで重要なのは、2つが純粋な数学的「比例」をしていると断定することではない。夏に向かって両方が増え、冬に向かって両方が減るという、「同方向の変化(相関)」を説明することである。
対話文の空所補充においても、前後の発言が果たしている機能を客観的に確認することで、入るべき表現が逆算できる。
Because...で答えているなら、理由を尋ねる質問。- 語の意味を説明しているなら、意味を尋ねる質問。
Sureで答えているなら、依頼や提案。
【決定ルール(独自の手順)】
図表では、設問が求めていない細かな数値をすべて列挙するのではなく、共通する変化や比較関係など「必要な情報だけを選ぶ」作業を行う。対話文では、空所の直後の返答から「理由・意味・依頼・承諾」などの発言の機能を逆算し、短く確実な英文を構成する。
- 図表説明の解答構成例:In both 2024 and 2025, ice cream sales and water accidents followed a similar seasonal pattern: both increased toward summer and decreased toward winter.
結論とチェックリスト
大学入試英語における英作文や図表説明の対応力を「一部のセンスや才能」、あるいは「ネイティブ感覚」に帰結させる世間の誤った通念は捨てるべきである。合否を分けるのは、客観的なデータと論理に基づいた『正しい型(手順)』の徹底である。
自己流の学習(単語の丸暗記や、解答例をただ眺めるだけの漫然とした過去問演習)だけでは、出題の真の構造や自身に不足している処理手順へ気づきにくい。今日からすべきアクションは以下の通りである。
- 比喩の意味確定と動作主の補完:日本語の比喩や省略をそのままにせず、文脈から具体的なファクトや主語を確定する。
- 論理関係の組み替え:「程度・結果」など、英語として自然で処理しやすい構文(so ~ that 等)へと事前に設計図を組み直す。
- 図表・対話における情報選択と機能の逆算:すべての情報を詰め込むのではなく、求められる傾向や発言の機能(理由の要求など)に絞って英文を構成する。

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