2025年度 奈良県公立高校入試 国語 大問2 宮内泰介『社会学をはじめよう 複雑さを生きる技法』解説と解法分析――「不確実性」に対処する順応的思考と抽象・具体の構造読解手順

目次

確実な正解を簡単には示せない社会で「知の限界」を前提とする論理を捉える

現代社会の諸課題を論じる論説文・説明的文章において、筆者が提示する学問観や課題解決の枠組みは、一見すると直感的な常識と対立することがある。多くの学習者は、学問とは「確定的な正解や法則を発見するもの」であり、政策や計画とは「完全な予測に基づいて立案されるもの」と考えがちである。しかし、高校入試の国語において問われるのは、そうした先入観をいったん括弧に入れ、筆者が提示する「人間の知の限界」や「不確実性を抱えたまま暫定的な提言を行い、検証と再考を重ねていく営み」の論理構造を、本文の記述に忠実に追跡する力である。

2025年度の奈良県公立高校入試・国語の大問2で出題された宮内泰介の『社会学をはじめよう 複雑さを生きる技法』は、社会学という学問の特質を、生態系保全における「順応的管理」という具体例と重ね合わせながら論じた文章である。人によって「何が大事か」の認識が異なる社会において、唯一の普遍的正解を性急に提示するのではなく、多様な人々の対話を通じて「正解らしいもの」を暫定的に提案し、実行・検証・軌道修正を反復していく姿勢が説かれる。

本問を正確に解き切るためには、語彙の意味や対義語の知識はもちろんのこと、傍線部前後に列挙された複数の要素を網羅する記述力、長文の根拠から論理の骨格を抽出して指定字数に収める要約力、そして「抽象(主張) $\to$ 具体(事例) $\to$ 抽象(再強調)」という三部構成の展開を鳥瞰する客観的な手順が求められる。内容の良し悪しを感覚で評価するのではなく、設問の要求に対して本文のどのパーツをどのような順序で照合・合成すべきか、その再現可能な思考プロセスを明示する。

『社会学をはじめよう 複雑さを生きる技法』(宮内泰介)の要約と論理構造

本文は、社会学の出発点となる問題意識から、自然保護における具体例の導入、そして社会学の目的とあり方の再定義へと至る、整然とした三段階の論理展開(【Ⅰ】・【Ⅱ】・【Ⅲ】)によって構成されている。

  • 論理の全体構造
    • 第1局面【Ⅰ】(社会学の出発点と「開かれた問い」)社会学が出発点とする「規範」は、個人の内部で完結するものではなく、共同の営みである。しかし、人によって「何が大事か」の認識は異なるため、何がみんなにとっての問題なのか、そもそも共同とは誰のことなのかという「開かれた問い」に向き合わざるを得ない。社会学は不確実性に満ちた社会に伴走し、唯一の正解ではなく「正解らしいもの」を社会とともに模索する。
    • 第2局面【Ⅱ】(具体例:アザラシ問題と「順応的管理」の思想)北海道のアザラシによる漁業被害を例に、事前の推計や対策の効果、実施後の結果には常に「不確実性」が伴うことが示される。生物学者C・S・ホリングの思想を引き合いに出し、人間が獲得できる知識には限界がある以上、不確実性をなくそうとするのではなく、「分からないこと」を前提にして計画・実行・モニタリング・軌道修正を反復する「順応的管理」の必要性を説く。
    • 第3局面【Ⅲ】(社会学への接続と「規範の物語」の創出)自然保護における順応的管理の枠組みを社会学に重ね合わせる。社会学の役割は、すべての真実を突き止めることではなく、不確実性の中で暫定的な提言を行い、実行と検証を通じて再考を重ねることである。日常言語を用いて社会の人々と対話し、ともに「規範の物語」を作り出すことこそが社会学の営みであると結論づける。

本文における「順応的管理」と「社会学の営み」の対応マトリクス

比較項目自然保護分野における「順応的管理」(【Ⅱ】)社会学における「社会に伴走する知」(【Ⅰ】・【Ⅲ】)
前提となる認識生態系について人間が獲得できる知識は、全体に比してはるかに小さい(知の限界)。人によって価値観が異なり、「共同の規範」はあらかじめ定まっていない(不確実性)。
立案と意思決定アザラシの数や効果が完全には予測できなくても、科学的データをもとに計画を立てる。一人ひとりの考えを踏まえ、対話を通じて「正解らしいもの」「暫定的な提言」を出す。
行動と実践計画を実行に移し、現実の生態系の中で介入を行う。提言を社会の中で実行に移す。
事後の処理結果をモニタリング(検証)し、必要に応じて計画を軌道修正する。実行結果を検証し、人々と再び考え直す(反復的なプロセス)。

全問解答一覧

正答・答案選択肢・答案内容形式・条件
(一)「恒久的な」対義語(最も適切なものを1つ)
(二)人びとが大事だと考えることについての認識は人によって異なるので、みんなで考えていく必要があるから。理由説明(最も適切なものを1つ)
(三)答えがあるかどうかもわからない、簡単に答えが見つからない問い。内容説明(最も適切なものを1つ)
(四)アザラシの数の推計、漁業被害を減らすための対策の効果やその対策をやった後の正確な効果。(本文中で示された3つの不確実性)記述(文章中の言葉を用いて簡潔に・43字)
(五)生態系や社会について私たちが知識として獲得できることは、獲得できない部分に比べればはるかに小さいので、不確実なもの、知らないものにどう対処するかが大事だから。(「順応的な管理のしくみ」が必要な理由)記述(文章中の言葉を用いて80字以内・79字)
(六)社会学は揺るぎない正解の発見が目的ではなく、正解らしいものを提案し、実行後に結果を検証して、また考えていくという学問である。本文内容合致(最も適切なものを1つ)
(七)【Ⅰ】で自らの考えの概要を述べ、【Ⅱ】でそれを具体的な例を挙げて補強して、【Ⅲ】で考えの基幹となる部分を再度強調している。文章構成(最も適切なものを1つ)

【大問2】各設問の解答解説と思考手順

(一)「暫定的な」の対義語

  • 手順1(設問要求):二重線部「暫定的な」の対義語として最も適切なものをア〜エから一つ選択する。
  • 手順2(根拠範囲と文脈):第3局面【Ⅲ】「『こうではないか。』という暫定的な提言をする、それを実行する、そしてまた調べて考える、というプロセスをとることです。」
  • 手順3(語義の確認)
    • 「暫定的」とは、「決定したものではなく、一時的な仮の措置として定められているさま」を指す。
    • したがって、その対義語は「一時的」「可変的」の反対概念、すなわち「変化することなく永続して維持されるさま」を表す語でなければならない。
  • 手順4(選択肢の照合)
    • ア「恣意(しい)的な」:論理的な必然性がなく、気ままな思いつきによるさま。客観的・必然的の対立語であり不適切。
    • イ「画期的な」:時代を区切るほど従来にない新しい局面を開くさま。保守的・旧態依然の対立語であり不適切。
    • ウ「合理的な」:理に適っており無駄のないさま。非合理的・不条理の対立語であり不適切。
    • エ「恒久的な」:ある状態が長く永久に変わらず続くさま。一時的・仮設的であることを表す「暫定的」の対義語として完全に一致する。
  • 結論

(二)社会学が「対話的に考えようとする」理由

  • 手順1(設問要求):傍線部①「対話的に考えようとします」の理由として最も適切なものをア〜エから一つ選択する。
  • 手順2(根拠範囲):傍線部①の直前段落を精査する。
    • 「社会学が出発点にする『規範』は、個人が個人の中でそれぞれ独立して作る『規範』ではありません。それは共同の『規範』です。」
    • 「もちろん人びとが大事だと考えることは一つでないし、あることについてその大事さ加減は人によって違います。しかし、単に個人にとっての話ではなく、みんなにとって大事だろうと考える人がいたら、それは社会学のいとなみの出発点になります。」
    • 「ほとんどの『みんなにとって大事だろう』ことは、それがどう大事なのか、どう問題なのか、何が問題なのか、どうすればよいのか、について、まだまだわからなかったり、みんなが納得できていなかったり、あるいは解決していないものでしょう。」
  • 手順3(論理整理)
    • 出発点:人によって「大事だと考えること」やその重み付けは一人ひとり異なる。
    • 課題:社会全体(みんな)にとって何が大事か、どう解決すべきかは自明ではない。
    • 帰結:一人の独断や客観的数値だけで一方的に決定することは不可能なため、複数の人の考えを踏まえながら対話的に考える必要が生じる。
  • 手順4(選択肢の照合)
    • ア(不適切):多くの問題の中から「重要なものだけを抽出・選別する」作業を理由としているが、本文で重視されているのは、人によって異なる考えを踏まえながら、「みんなにとって大事」なことを対話的に考えることである。
    • イ(不適切):「個人の判断基準を平準化(一律化)する」ことは本文で目指されていない。
    • ウ(適切):「人びとが大事だと考えることについての認識は人によって異なるので、みんなで考えていく必要があるから」は、直前の因果関係を的確に要約している。
    • エ(不適切):「守るべき規範を多様に示す」ことが目的ではない。
  • 結論

(三)「開かれた問い」とはどのような問いか

  • 手順1(設問要求):傍線部②「開かれた問い」とはどのような問いか。最も適切なものをア〜エから一つ選択する。
  • 手順2(根拠範囲):傍線部②の直前文および直後文を精査する。
    • 直前:「もちろんそれは、『共同の規範』なんてありうるのか、あるいは、『共同』とは誰と誰の共同なのか、という開かれた問いをつねに含みつつのいとなみです。」
    • 直後:「社会学は、複雑な社会の中で、社会に伴走しながら知識生産していく学問です。しかし、伴走は簡単ではありません。何より不確実性に満ちているので、確実な正解を提案できるわけではありません。」
  • 手順3(文脈からの意味特定)
    • 「開かれた」とは、あらかじめ決められた単一の正解(閉じた答え)が用意されておらず、問いそのものの前提(共同とは何か、そもそも規範は可能なのか)すら疑われ続ける開口状態を指している。
    • したがって、「容易に確定的な答えに到達できない、解答の可能性が開かれたままの状態」を指す。
  • 手順4(選択肢の照合)
    • ア(適切):「答えがあるかどうかもわからない、簡単に答えが見つからない問い」は、本文の「確実な正解を提案できるわけではない」「共同の規範なんてありうるのか」という記述と合致する。
    • イ(不適切):誰もが納得できる問いという意味ではない(納得できないからこそ問い続ける)。
    • ウ(不適切):具体的で分かりやすい問いという意味ではない。むしろ抽象的で根本的な問いである。
    • エ(不適切):難しい問題を簡単にした問いという意味ではない。
  • 結論

(四)どのようなことに「不確実性」があるのか

  • 手順1(設問要求):傍線部③「そうした不確実性を前提にしながら」について、筆者がどのようなことに「不確実性」があると述べているかを、文章中の言葉を用いて簡潔に記述する(字数制限なし)。
  • 手順2(根拠範囲の特定):傍線部③の直前(第2局面【Ⅱ】の第1段落後半)を精査する。
    • 「しかし、一方でアザラシを絶滅させることも避けなければなりません。そこで、まずアザラシが現実にどのくらいいるのかを実測から推計します。しかし、その推計は不確実性を強くもちます。また対策を立てたとして、それがどういう効果があるかはやってみないとわかりませんし、やってみても正確な効果についてはわかりません。」
  • 手順3(不確実性の3要素の抽出):本文では「不確実」「わからない」という述語に直結する要素が、明確に3点列挙されている。
    • 要素1(現況把握の不確実性):アザラシの数の推計
    • 要素2(事前予測の不確実性):漁業被害を減らすための対策の効果(どういう効果があるか)
    • 要素3(事後評価の不確実性):その対策をやった後の正確な効果
  • 手順4(答案の合成と結合処理):これら3つの要素を「、」および「や」を用いて過不足なく接続する。
    • 「アザラシの数の推計」+「、」+「漁業被害を減らすための対策の効果」+「や」+「その対策をやった後の正確な効果。」
    • 句読点を含めて43字。本文の重要語句を損なうことなく、3つの対象が客観的に網羅されている。
  • 結論アザラシの数の推計、漁業被害を減らすための対策の効果やその対策をやった後の正確な効果。

(五)「順応的な管理のしくみ」が必要な理由

  • 手順1(設問要求):傍線部④「順応的な管理のしくみを作る」について、ホリングがこのように主張する理由を、文章中の言葉を用いて80字以内で記述する。
  • 手順2(根拠範囲の特定):傍線部④の直後段落(【Ⅱ】の最終段落)におけるC・S・ホリングの言説を精査する。
    • 「ホリングは、順応的管理の考え方をこう強調します。いくらがんばって大量のデータを集めたとしても、生態系や社会について私たちが知識として獲得できることは、獲得できない部分に比べればはるかに小さい。だから、大事なことは、不確実なもの、知らないものにどう対処するかなのだ、とホリングは説きます。完全に『わかる』ことを目標とするのではなくて、ある程度わかったところで周到に実行してみて、その結果を見ながらまた分析して、軌道修正していく、そういう順応的な管理のしくみを作ることが必要だ、というのです。」
  • 手順3(答案骨格の抽出と削ぎ落とし)
    • 理由の核心(因果関係)
      • 原因(前提):生態系や社会について私たちが知識として獲得できることは、獲得できない部分に比べればはるかに小さい。
      • 結果(帰結):不確実なもの、知らないものにどう対処するかが大事である。
    • 削ぎ落とすべき修飾部:「いくらがんばって大量のデータを集めたとしても」という譲歩表現は、文字数制約(80字)および論理の骨格を維持する観点から省略可能である。
  • 手順4(文末処理と文字数計算)
    • 接続形式:「〜ので、……が大事だから。」(理由説明の文末)
    • 合成:「生態系や社会について私たちが知識として獲得できることは、獲得できない部分に比べればはるかに小さいので、不確実なもの、知らないものにどう対処するかが大事だから。」
    • 文字数:79字(句読点を含む。80字以内の指定を過不足なく充足)。
  • 結論生態系や社会について私たちが知識として獲得できることは、獲得できない部分に比べればはるかに小さいので、不確実なもの、知らないものにどう対処するかが大事だから。

(六)本文で述べられている社会学のあり方

  • 手順1(設問要求):本文で筆者が述べている内容として最も適切なものをア〜エから一つ選択する。
  • 手順2(根拠範囲):第1局面【Ⅰ】の末尾および第3局面【Ⅲ】の全体。
    • 【Ⅰ】:「社会学は、複雑な社会の中で、社会に伴走しながら知識生産していく学問です。……確実な正解を提案できるわけではありません。……社会と一緒に考えて、正解らしきものを提示する。でもそれは本当に正解かどうかわからないので、それを実際に進めてみて、検証して、また考える。」
    • 【Ⅲ】:「社会学が果たすべき役割は、その問題についての誰からも否定されないすべての真実をつきとめることではなく、可能な限り調べて考えて『こうではないか。』という暫定的な提言をする、それを実行する、そしてまた調べて考える、というプロセスをとることです。」
  • 手順3(論理整理)
    • 社会学の目的:客観的で永遠不変の「真実の発見」ではない。
    • 社会学の方法:社会に伴走し、「暫定的な提言 $\to$ 実行 $\to$ 検証 $\to$ 再考」という反復的な実践プロセスそのものにある。
  • 手順4(選択肢の照合)
    • ア(適切):「社会学は揺るぎない正解の発見が目的ではなく、正解らしいものを提案し、実行後に結果を検証して、また考えていくという学問である」は、本文の主旨と正確に合致する。
    • イ(不適切):「一人の学者だけで研究するのではなく、我々に協調性が求められる学問」という研究者個人の心理や協調性の有無を論じているのではない。
    • ウ(不適切):「日常言語に近い言葉で提案をするものなので、人びとの共感を得やすく、問題の抜本的解決につながる」は因果の捏造である。本文では抜本的・全面的な解明はできないと述べられている。
    • エ(不適切):「理想的な社会の実現を目指すものではなく」という前半だけでは誤りとはいえないが、後半の「個人にとって重要な問題を中核に据えて考える」が本文と合致しない。本文では、単に個人にとって大事なことではなく、「みんなにとって大事」なことを社会学の出発点としている。
  • 結論

(七)文章の構成と論の展開

  • 手順1(設問要求):文章を【Ⅰ】〜【Ⅲ】の三つの部分に分けたとき、論の展開の仕方として最も適切なものをア〜エから一つ選択する。
  • 手順2(各部分の機能的役割の同定)
    • 【Ⅰ】(問題提起と主張の概要提示):社会学とは「共同の規範」について社会に伴走しながら考える学問であり、確実な正解ではなく「正解らしきもの」を提示して検証・再考していく営みであるという自説の全体像(概要)を示す。
    • 【Ⅱ】(具体的事例による論理の補強):抽象的な議論を裏付けるため、北海道のアザラシ問題と生態学者ホリングの「順応的管理」の思想を援用し、不確実性を前提としたプロセスの妥当性を具体的な例を挙げて補強する。
    • 【Ⅲ】(主張の再強調と統合):順応的管理の枠組みを再度社会学へと引き戻し、社会学の目的が「真実の究明」ではなく「暫定的な提言と検証のプロセス」にあること、すなわち「みんなで規範の物語を作り出そうといういとなみ」であることを再強調して論を結ぶ。
  • 手順3(選択肢の照合)
    • ア(不適切):【Ⅰ】で問題の核心を述べ、【Ⅱ】でわかりやすく解説し、【Ⅲ】で問題の解決に向けた「糸口を暗示」しているのではない。結論として主張を確立している。
    • イ(適切):「【Ⅰ】で自らの考えの概要を述べ、【Ⅱ】でそれを具体的な例を挙げて補強して、【Ⅲ】で考えの基幹となる部分を再度強調している」は、典型的な「主張の概要 $\to$ 具体例による論証 $\to$ 主張の再強調」という論説文の構成を正確に捉えている。
    • ウ(不適切):【Ⅰ】を「従来の考え方」とする点が明確な誤りである。【Ⅰ】から筆者自身の見解が述べられている。
    • エ(不適切):【Ⅰ】は「多角的に様々な考え方を述べている」のではなく、筆者自身の一貫した社会学観を展開している。
  • 結論

授業ではここまで扱う:論理的文章における「順応的プロセス」の抽出手順

実際の授業では、単に正答の記号や模範解答を確認するにとどまらず、本問のように「不完全な状況下で合意や解決を模索する論説文」を読み解くための汎用的な分析枠組みを指導する。

順応的管理と課題解決の5段階プロセス

筆者が提示した「順応的管理」のモデルは、国語の論説文で、複雑な問題を扱う文章を読む際にも応用しやすい整理方法である。

段階プロセスの実務的内容本文における具体的記述(アザラシ問題・社会学)
① 不確実性の承認知識の限界を自覚し、完全な事前予測が不可能であることを前提に置く。「推計は不確実性を強くもつ」「知識として獲得できることははるかに小さい」
② 暫定的な仮説・計画完全な正解を待たず、現時点で得られたデータをもとに仮の提案を立てる。「科学的なデータをもとに計画を立てる」「暫定的な提言をする」
③ 実践・介入計画を現実のフィールドで実行に移す。「実行します」「実際に進めてみて」
④ モニタリング(検証)実行によって何が生じたのか、結果を観察・記録して仮説と照合する。「その結果がどうなったのかをモニタリングし」「結果を見ながらまた分析して」
⑤ 軌道修正(再考)結果に基づき、計画や提言を柔軟に修正して次の段階へフィードバックする。「また計画を立て直します」「軌道修正していく」「そしてまた調べて考える」

重要なのは、「順応的管理」という特定の専門用語を知識として暗記することではない。本文中に「完全にはわからない」「不確実である」という記述が現れた際、筆者がそれを「思考停止の口実」としているのか、それとも「検証と修正を繰り返すための出発点」と位置づけているのか、その論理的な機能を見抜くことである。

【2025年度奈良県公立高校入試・大問2から整理する】国語・論説文の対策と復習手順

奈良県公立高校入試の国語(大問2)では、抽象的な概念規定と具体的な事例解説が有機的に連動した本格的な論説文が出題される。対策においては、感覚的な読解から脱却し、以下の客観的な処理手順を定着させることが重要である。

  • 1. 列挙された具体例の「要素網羅型」記述(四)のように、本文中の抽象語(「不確実性」)の具体的内容を問われた場合、本文の直前直後に並列されている具体的事象を機械的にチェックする習慣をつける。「アザラシの数」「事前の効果」「事後の効果」という3つの要素のうち、1つでも欠落すれば減点対象となる。指示語や接続語(「また」「そして」など)を手がかりに、同格で並べられたパーツをすべて拾い上げる訓練を徹底する。
  • 2. 字数制限記述における「主幹の抽出」と「修飾句の削ぎ落とし」(五)の80字記述のように、本文の根拠文が長い場合、そのまま引き写すと即座に字数オーバーとなる。「いくらがんばって……集めたとしても」といった譲歩・前置きの修飾句を冷静に削ぎ落とし、「知識の限界(原因)」と「不確実性への対処の重要性(結論)」という論理の主幹だけを取り出して接続する要約力を養う。
  • 3. 文章の巨視的な構成(抽象 $\to$ 具体 $\to$ 抽象)の把握(七)の文章構成問題に対応するためには、各段落の細部にとらわれず、文章全体を大きく意味段落に区分する巨視的な視点が必要である。具体例(アザラシの話)が始まった箇所で「ここから具体化」、具体例が終わり再び一般論や学問論に戻った箇所で「ここから再主張・まとめ」と境界線を引き、文章の展開パターンを構造として把握する練習を反復する。

過去問演習の復習においては、「解答の正誤」で終わらせず、「なぜ(四)で3つの要素を入れなければならないのか」「(五)で削った部分はなぜ削ってよいのか」「【Ⅰ】〜【Ⅲ】の役割分担を本文の言葉で説明できるか」を徹底して言語化することが、合格力を確固たるものにする。

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この記事を書いた人

千葉県・習志野市を拠点とする「習志野受験研究所」所長。10年以上の指導現場から得た知見をもとに、全国の入試問題を分析・発信しています。

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