2025年度 島根県公立高校入試 国語 大問2 宮内泰介『社会学をはじめる 複雑さを生きる技法』/暉峻淑子『対話する社会へ』解説と解法分析――「やっかいな問題」における合意形成と複数文章を架橋する指定形式記述の読解手順

目次

確定した解をもたない「社会問題」の特質と複数テクストの関連性を捉える

論説文・説明的文章の読解において、多くの学習者は「客観的なデータや専門家の分析があれば、問題に対する唯一の正しい正解が導き出せる」という前提に立ちがちである。しかし、高校入試の国語において問われるのは、そうした単純化された図式を排し、「あらかじめ解くべき枠組みが決まっていない問題(やっかいな問題)」に対して、なぜ専門家の科学的知見だけでは決定できず、社会的な合意形成が必要となるのか、その論理的な必然性を本文の叙述から緻密にたどる力である。

2025年度の島根県公立高校入試・国語の大問2で出題された宮内泰介の『社会学をはじめる 複雑さを生きる技法』および暉峻淑子の『対話する社会へ』は、社会問題の複雑さと「対話」の意義を二つの異なる視点から論じた複数文章(複合テキスト)形式の問題である。文章Ⅰでは、自然科学やチェスとの対比を通じて社会問題の枠組み設定の難しさが示され、専門家の知見の限界と「合意形成」の不可欠性が論じられる。続く文章Ⅱでは、同質的な集団における「察しの文化」のあり方に疑問を投げかけた上で、異質な他者との対話がもたらす思考や想像力の広がりが語られる。

二つの文章の大まかな論旨を把握するだけでは、入試本番で合格ラインを超える答案を作成することはできない。本問を確実に解き切るためには、対比の意図の識別、ノート図式を用いた概念の換言(定式化)、論理関係(前提と推論)の判定、そして問題用紙に印刷された前後の文脈に文法・意味の両面で完全に合致させる二つの条件付き記述(問四:10〜20字、問五:45〜55字)を処理する客観的な手順が不可欠である。本稿では、各設問の解法手順に基づき、2025年度島根県大問2の全問について、その思考プロセスを分解・明示する。

『社会学をはじめる』(宮内泰介)と『対話する社会へ』(暉峻淑子)の要約と論理構造

本問では、文章Ⅰと文章Ⅱがそれぞれ別の角度から「社会問題」や「対話」を論じており、設問では両者を関連づけて読むことが求められている。

  • 文章Ⅰ(宮内泰介):社会問題の特質と合意形成
    • 第1段落〜第3段落(自然科学・チェスと社会問題の対比)リッテルらの議論を引き、自然科学やチェスは「対象とするものの枠組みが明確で、その枠組みの中で問題を解くことができる」のに対し、貧困などの社会問題は「最初から枠組みを決めて考えることができない」という本質的な差異を提示する。貧困一つをとっても、低収入、経済、技能、教育、医療、文化など多様な切り口が存在し、一つの解決策が別の問題を生み出す連鎖性を持つ。
    • 第4段落〜第6段落(オープンなシステムと専門家の限界)現実社会は閉じたシステムではなく、多様な文化や価値観が存在するオープンなシステムである。専門家はデータを示すことはできても、「どの自然環境を再生すべきか」「どのような福祉を提供すべきか」という望ましい社会のあり方を科学的に唯一決定することはできない。したがって、社会的に合意できたものこそが「解」となる。
    • 第7段落〜第8段落(社会像のズレと対話による規範形成)しかし、人々が目指す社会像にはズレがあり、合意形成そのものが極めて困難である。みんなが共有できる確かな社会像を容易には見いだせないからこそ、一人ひとりが課題や望ましい社会像を語り合い、対話を積み重ねることで共同の規範をつくりあげていく必要がある。
  • 文章Ⅱ(暉峻淑子):同質性の限界と対話の意義
    • 第1段落〜第2段落(「察する文化」への疑問と同質思考の限界)個人化や格差が進んだ現代社会において、言葉にせずとも察し合う同質的な関係に頼るコミュニケーションが現在も成り立つのか、筆者は疑問を示している。閉じた同質性への安住に対して慎重な姿勢を示し、社会の多様な現実を見据える必要性を提起する。
    • 第3段落(異なった人間同士の対話がもたらす地平)考えの異なっている人間同士が対話を行うことによって、自分とは異なる多様な思考や多様な感受性に出会うことができる。それを通じて新たな理解の地平を拓き、想像力を豊かにすることこそが「対話する社会」の価値であると、別角度から「対話」の意義を論じている。

「自然科学・チェス」と「現実の社会問題」の対比マトリクス

比較項目自然科学・チェス(文章Ⅰ) JPG現実の社会問題(文章Ⅰ・文章Ⅱ) JPG他 3 件
問題の枠組みあらかじめ明確に決まっており、その内部で解くことができる。最初から枠組みを決めることができない(低収入・教育・医療など多義的)。
システムの性質対象とするものの枠組みが明確で、その範囲内で問題を考えることができる。多様な文化や価値観が交錯する**「オープンなシステム」**。
解決策の波及定められた枠組みの中で完結する。ある解決策がまた別の問題を生み出す連鎖性を持つ。
正解(解)の決定方法対象や枠組みが明確で、その内部で問題を解くことができる。専門家の知見だけでは決定できず、「社会的に合意できたこと」が解となる。
困難を克服する手段明確な枠組みの中で問題を処理する。異なる考えを持つ人間同士が**「対話」を重ねて合意・規範を形成する**。

全問解答一覧

問正答・答案選択肢・答案内容形式・条件
問一イリッテルらの考えに同意し、現実の社会問題の性質は自然科学やチェスの性質とは本質的に異なることを示す。内容説明(最も適切なものを1つ)
問二 1ア問題の原因を一つに絞り、それに対応した解決方法を決めること。ノート空欄補充(最も適切なものを1つ)
問二 2多様(「多様な文化や価値観」)抜き出し(文章Ⅰの【中略】より前から2字)
問三エ傍線部③は、[ ]で囲った部分の内容から推測される意見を述べている。論理関係説明(最も適切なものを1つ)
問四対話によって合意形成する(複雑な社会問題を解決するために必要なこと)記述(指定形式接続・文章Ⅰの言葉を使用・10字以上20字以内・12字)
問五考えの異なっている人間同士が行うからこそ、多様な思考や感受性に出会い、想像力を豊かにすることができるから。(「対話」が効果的に働く理由)記述(指定形式接続・文章Ⅱの言葉を使用・45字以上55字以内・53字)

【大問2】各設問の解答解説と思考手順

問一 自然科学やチェスとの対比を示した理由

  • 手順1(設問要求):傍線部①「リッテルらは……考えます。」について、筆者がリッテルらの考えを説明する際に「自然科学やチェスとの対比」を取り上げた意図として最も適切なものをア〜エから一つ選択する。
  • 手順2(根拠範囲):傍線部①を含む第2段落〜第3段落を精査する。
    • 「たとえば、都市犯罪や貧困の問題を、自然科学やチェスとの対比で考えます。数学も有機化学も、そしてチェスも――とリッテルらは言います――、対象とするものの枠組みがはっきりしていて、その中で問題を解くことができます。」
    • 直後(第3段落):「それに対して、社会の問題、たとえば貧困問題の解決について考えたとき、それは② 最初から枠組みを決めて考えることができません。」
  • 手順3(論理整理):
    • 筆者はリッテルらの所説を否定・批判しているのではなく、その問題提起を肯定的に受け止めて論を展開している。
    • 対比の目的は、「解き方の優劣」を論じることではなく、「自然科学やチェスのように枠組みが自明な領域」と「社会問題のように枠組みの設定そのものが問われる領域」の問題の性質における本質的な違いを浮き彫りにすることにある。
  • 手順4(選択肢の照合):
    • ア(不適切):「社会問題の解決には自然科学やチェスと同じような方法が必要である」は本文の主張(同じ方法では解けない)と正反対である。
    • イ(適切):「リッテルらの考えに同意し、現実の社会問題の性質は自然科学やチェスの性質とは本質的に異なることを示すため」は、文脈および対比の目的に完全に合致する。
    • ウ(不適切):「リッテルらの考えに反論し」という設定が本文と矛盾する。
    • エ(不適切):「異なる方法が必要であることを示すため」と結論のみを述べているが、対比の核心である「問題の性質そのものが本質的に異なること」の提示が抜け落ちている。
  • 結論:イ

問二 1 ノート空欄(A)「定式化」の言い換え

  • 手順1(設問要求):生徒が作成した[ノート]の空欄( A )に入る言葉として、文章Ⅰにおける「定式化」を言い換えた最も適切なものをア〜エから一つ選択する。
  • 手順2(根拠範囲とノート構造の確認):
    • 文章Ⅰ第3段落末尾:「それは、解決策を考える中で初めて定式化できるものなのだ、とリッテルらは言います。たとえば、教育の改善で解決しようと考えて初めて、貧困問題とは教育の欠如の問題であると定式化できます。」
    • [ノート]の構造:
      • 「(例)貧困問題 $\to$ 経済の問題/教育の問題/文化の問題/保健医療の問題」
      • 「〈このため〉どういう問題なのかを最初から定式化できるわけではない。=( A )」
  • 手順3(論理整理):
    • 本文における「定式化」とは、数式を作ることではなく、「多面的な原因を持つ社会問題に対し、特定の観点(例:教育の欠如)に枠組みを定め、それに対応する特定の解決策(例:教育の改善)を設定すること」を指している。
    • したがって、「問題の原因を一つに絞り込み、それに応じた解決方法を決めること」が過不足のない換言となる。
  • 手順4(選択肢の照合):
    • ア(適切):「問題の原因を一つに絞り、それに対応した解決方法を決めること」は、本文の「教育の改善で解決しようと考えて初めて、教育の欠如の問題であると定式化できる」という具体例と完全に一致する。
    • イ(不適切):「専門家の意見を比較し、最善の意見を選び出すこと」は定式化の意味ではない。
    • ウ(不適切):「人々の意識を段階的に変えていき、将来の社会像を共有すること」は、後半で論じられる合意形成に近い。
    • エ(不適切):「複数の改善策を組み合わせ、新しく理想的な社会を作り上げること」は本文にない。
  • 結論:ア

問二 2 ノート空欄(B)現実社会の特徴(抜き出し)

  • 手順1(設問要求と指定条件):
    • [ノート]の空欄( B )にあてはまる言葉を、文章Ⅰの【中略】より前の文章中から二字で抜き出す。
    • [ノート]の文脈:「現実社会:……・( B )な文化や価値観が存在するから。」
  • 手順2(根拠範囲の探索):文章Ⅰの【中略】直前(第4段落末尾)を精査する。
    • 「現実社会は閉じたシステムではなく、オープンなシステムだからです。現実社会は文化や価値観も多様だからです。」
  • 手順3(接続と字数の照合):
    • ノートの「( B )な文化や価値観」に接続する語を抽出する。
    • 「多様」+「な文化や価値観」となり、指定字数(2字)に合致する。
  • 結論:多様

問三 傍線部③と囲み部分との論理関係

  • 手順1(設問要求):傍線部③「こうすることが望ましいと社会的に合意できたことが『解』なのです」の内容と、その直前にある点線[ ]で囲まれた部分の内容との関係を説明したものとして最も適切なものをア〜エから一つ選択する。
  • 手順2(根拠範囲の精査):
    • 囲み部分:「しかし、専門家は、データは出せても、答えは出せません。地域でどういう自然環境を再生すべきなのかを科学的に決定することはできません。どういう福祉サービスを提供するべきなのかについて、科学的な解があるわけではありません。問題はいつも不確実性を有し、さまざまなファクターがからみあっています。こうすればこうなりそうだ、ということは科学的に言えても、不確実性を拭うことはできません。また、そうなることが『望ましい』ことなのかどうかも、専門家には決められません。」
    • 傍線部③:「結局のところ、こうすることが望ましいと社会的に合意できたことが『解』なのです。『解』は社会的にしか決定されません。」
  • 手順3(論理整理):
    • 囲み部分の論旨:科学的データや専門家の分析だけでは、「何が望ましいか」という社会問題の唯一の解を決定できない(前提・客観的限界)。
    • 傍線部③の論旨:専門家の知見だけでは決められない以上、関係者たちが議論して社会的に合意できたものこそを「解」とみなすほかない(前提から導かれる帰結・意見)。
    • したがって、傍線部③は囲み部分の根拠から導出された筆者の「意見・推測される判断」である。
  • 手順4(選択肢の照合):
    • ア(不適切):「囲った部分の内容について例を挙げて否定している」は誤り。否定していない。
    • イ(不適切):「囲った部分の内容を裏付けるための根拠を提示している」は原因と結果が逆転している。囲み部分が根拠であり、傍線部が意見である。
    • ウ(不適切):「囲った部分の内容を具体的に言い換えて説明している」は誤り。具体化ではなく、限界の提示から別の解決基準(社会的合意)への論理の進展である。
    • エ(適切):「傍線部③は、囲った部分の内容から推測される意見を述べている」は、前提(専門家の限界)から結論(合意による決定)への論理的関係を的確に表している。
  • 結論:エ

問四 なぜ「対話を積み重ねていくしかない」のか(指定形式記述)

  • 手順1(設問要求と指定条件の確認):
    • 内容:傍線部④「対話を積み重ねていくしかありません。」と筆者が述べる理由を説明する。
    • 条件①:文章Ⅰ中の言葉を用いる。
    • 条件②:十字以上、二十字以内で答える。
    • 条件③(指定形式):「複雑な社会問題を解決するためには、( )必要があるから。」の空欄部分に入るように書く。
  • 手順2(根拠範囲の特定):傍線部④を含む文章Ⅰ最終段落を精査する。
    • 「合意形成の困難、共通の社会像を描くことの困難の中で、それを突破するには、いかにも地道な方法であるものの、④ 対話を積み重ねていくしかありません。一人ひとりがどういう課題を感じているのか、どういう社会像が望ましいと考えているのか、そうしたことを対話しながら、一つひとつ共同の規範をつくりあげていくことが必要です。」
    • 遡行確認(第5段落冒頭):「社会が複雑だからこそ、問題解決には合意形成が必須です。」
  • 手順3(論理整理と要素抽出):
    • 設問の枠組み:「複雑な社会問題を解決するためには、[ ]必要があるから。」
    • 本文の論理:「問題解決には合意形成が必須」であり、その困難を突破するために「対話を積み重ねる」ことが求められている。
    • したがって、空欄には「対話」によって「合意形成」を行うという主軸を組み込む。
  • 手順4(答案の合成と指定形式への接続確認):
    • 答案:対話によって合意形成する
    • 指定形式への接続確認: 「複雑な社会問題を解決するためには、[対話によって合意形成する]必要があるから。」 枠外の後方に印刷されている「必要があるから。」に文法的にそのまま美しく接続し、指定字数(12字/10字以上20字以内)を満たす。
  • 結論:対話によって合意形成する

問五 なぜ「対話」が効果的に働くのか(複数文章統合・指定形式記述)

  • 手順1(設問要求と指定条件の確認):
    • 内容:文章Ⅰの波線部Xと文章Ⅱの波線部Yのような状況にある人々にとって、「対話」がなぜ効果的に働くのか、その理由を説明する。
    • 条件①:文章Ⅱ中の言葉を用いる。
    • 条件②:四十五字以上、五十五字以内で答える。
    • 条件③(指定形式):「『新しい理解の地平を拓く』ことができる『対話』は、( )」の空欄部分に書く。
    • 重要注意点:解答欄の末尾に「から。」は印刷されていない。理由を説明する設問であるため、答案の末尾を自分自身で「〜から。」で結ぶ必要がある。
  • 手順2(波線部X・Yの状況の確認):
    • 波線部X(文章Ⅰ):「それぞれが目指す社会像にはズレがあり、ややもすればそれは対立となります。」 $\to$ 人々の考えが異なり、対立が生じる状況。
    • 波線部Y(文章Ⅱ):「同質思考、同質感覚でもたれ合うことが、はたして現実に可能なのか、私は懐疑的です。」 $\to$ 同質性に安住できず、考えの異なる他者と向き合わざるを得ない状況。
    • 両者の交点:「考えの異なる人間同士」が社会に対峙している状況。
  • 手順3(根拠範囲の特定と要素抽出):文章Ⅱ最終段落を精査する。
    • 「しかし他方では、異なっている人間同士であればこそ、対話によって、新しい理解の地平を拓くという、よろこびもあるのです。対話する社会とは、多様な思考、多様な感受性に出会い、想像力を豊かにする社会でもあります。」
    • 答案に必要な3つの必須要素:
      • 要素①:考えの異なっている人間同士が行う(前提)
      • 要素②:多様な思考や感受性に出会う(契機)
      • 要素③:想像力を豊かにすることができる(効果)
  • 手順4(答案の合成・指定形式接続・字数確認):
    • 答案:考えの異なっている人間同士が行うからこそ、多様な思考や感受性に出会い、想像力を豊かにすることができるから。
    • 指定形式への接続確認: 「『新しい理解の地平を拓く』ことができる『対話』は、[考えの異なっている人間同士が行うからこそ、多様な思考や感受性に出会い、想像力を豊かにすることができるから。]」 主語「『対話』は、」に対して理由表現として過不足なく呼応し、指定字数(53字/45字以上55字以内)を満たす。
  • 結論:考えの異なっている人間同士が行うからこそ、多様な思考や感受性に出会い、想像力を豊かにすることができるから。

授業ではここまで扱う:複数テクストを読み解く手順

実際の授業では、単に正答の記号や模範解答を確認するにとどまらず、二つの異なる文章が提示された際に「それぞれの文章がどのような角度から主題を照らしているか」を客観的に整理する手順を指導する。

複数テクストの論理展開

本問では、文章Ⅰで示された「対話の必要性」と、文章Ⅱで示された「対話の効果」を関連づけて考えることが求められる。

読解段階本文における論理の展開読解・解法上の着眼点
① 問題構造の把握
(文章Ⅰ・前半)
自然科学・チェスと社会問題を対比し、社会問題は「枠組みを最初から決められない」ことを確認する。「定式化」の概念を具体例から換言し、問題の不確実性を捉える(問一・問二)。
② 限界と帰結の導出
(文章Ⅰ・中盤)
オープンな社会では専門家の知見だけでは答えを決定できず、「社会的合意」こそが解になると論証する。囲み部分(前提・限界)から傍線部③(意見・合意)への推論関係を見抜く(問三)。
③ 制度的課題の提示
(文章Ⅰ・後半)
人々の社会像にはズレがあり対立するため、地道に「対話」を重ねて合意を形成するしかない。指定形式「〜必要があるから」に接続する端的な解決策(問四:12字)を抽出する。
④ 認識論的展開
(文章Ⅱ)
同質的な関係への疑問を踏まえ、異なる他者との対話を通じて「多様な思考・感受性」に出会い想像力を拡張する。波線部X・Yの状況を架橋し、文章Ⅱの言葉で理由記述(問五:53字)を完成させる。

重要なのは、二つの文章を無理に一つの型に押し込めるのではなく、文章Ⅰで示された合意形成の難しさに対し、文章Ⅱが「異なる人間同士の対話が、多様な思考や感受性に出会い、想像力を豊かにする契機になる」という角度から対話の意義を論じている関係性を丁寧に捉えることである。

【島根県】国語・論説文の対策と復習手順

2025年度の本問では、現代社会論に関わる二つの文章を組み合わせ、読解の客観性と論理的な表現力を高い精度で測定する問題が出題された。対策においては、以下の手順を定着させることが重要である。

  • 1. ノート形式・図式空欄における「具体例からの抽象化」 問二のように、ノートの空欄補充が出題された場合、図の矢印や対応関係を精査する。「貧困問題から教育や医療へ分岐する例」を手がかりにして、「定式化」という抽象概念を「原因を一つに絞り、対応する解決策を決めること」へと客観的に換言する力を養う。
  • 2. 指定形式記述における「印刷枠外の文末処理の徹底点検」 問四と問五の対比は、形式面での極めて重要な教訓を含んでいる。
    • 問四:枠外の後方に「必要があるから。」が印刷されている $\to$ 答案末尾は「〜する」などの形で止める。
    • 問五:枠外の後方に文末表現がない $\to$ 理由説明の設問要求を満たすため、答案内に自力で「〜から。」を必ず書き込む。 問題用紙のレイアウトを事前に確認し、指定された文脈と文法的に一致しているかを点検する習慣を徹底する。
  • 3. 複数文章問題における「共通キーワードの機能分担の整理」 二つの文章に共通して現れるキーワード(本問では「対話」)に着目する。文章Ⅰでは「合意形成のための社会的手段」として論じられ、文章Ⅱでは「他者理解と想像力の拡張のための契機」として論じられている。同一の言葉がそれぞれの文章でどのような異なる役割を担っているのかを整理して記述に落とし込む訓練を積む。

過去問演習の復習においては、「単に〇×をつけた」だけで終わらせず、「問三でなぜエが選べるのか論理関係を説明できるか」「問四と問五で文末の処理を正しく区別して書けたか」を検証することが、初見の複合文章でも本文根拠に基づいて安定して得点するための確かな土台となる。

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この記事を書いた人

千葉県・習志野市を拠点とする「習志野受験研究所」所長。10年以上の指導現場から得た知見をもとに、全国の入試問題を分析・発信しています。

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