山口県公立高校入試の英語問題(大問2〜6)は、浮世絵やランドセルの色といった日本文化の変遷、グリーンカーテンや環境保全といった社会課題、そしてチラシやEメールを用いた実践的なコミュニケーションまで、中学生にも身近で、かつ社会性のあるテーマを背景に構成されている。これらの問題からは、「多様な価値観を理解し、情報を正確に処理して自らの意見を発信する」という、共通して問われている力が見えてくる。
しかし、これらの豊かなテーマ(背景知識)を知っているだけでは、入試本番で正答を導くことはできない。複数の資料や対話が入り組む中で確実に得点を重ねるには、なんとなくの和訳に頼るのではなく、本文に配置された論理マーカーや条件構文を起点とし、客観的な「思考手順」として言語化する力が必要不可欠である。
本稿では、2024年度および2025年度の山口県公立入試英語から、得点差を生む解答の根拠となった重要語彙・構文を抽出し、入試本番で使える実践的な「型」として解剖する。
Macro Analysis(構造の可視化と必須構文リスト)
入試問題全体の構造を解剖し、資料読解や文意の把握、および条件作文に必須となる語彙・構文を以下の通り抽出した。(※注釈で日本語訳が与えられている語であっても、読解構造上重要なものは「確認語」として明記している)
【2024・2025年度 山口県公立入試 英語・必須論理マーカー&構文リスト】
| 英単語/熟語/構文 | 品詞 | 日本語の意味 | 備考(出典・文脈・役割など) |
| 【会話文・長文読解(状況変化と条件)】 | |||
| However / But | 副詞/接続詞 | しかしながら / しかし | 【論理マーカー】(逆接)対策や提案による状況・意見の転換を示す。 |
| because S V | 接続詞 | SがVなので | 【論理マーカー】行動・判断・心理状態の原因や理由を示す。 |
| so / So | 接続詞/副詞 | だから、それで | 【論理マーカー】原因・条件から導かれる結果や次の行動の根拠を示す。 |
| if S V | 接続詞 | もしSがVならば | 【論理マーカー】(条件)前提を満たした場合の帰結を示す。 |
| While S V | 接続詞 | SがVしている間に | 【論理マーカー】(時間・同時進行)2025大問5:行動中の気づき。 |
| At first | 副詞句 | 最初は | 【論理マーカー】変化前の状態を示す。後続のhowever等と対応しやすい。 |
| After lunch | 副詞句 | 昼食後 | 【時間表現】午後の行動開始を示す。出来事の順序整理に使う。 |
| so … that ~ | 構文 | とても…なので~だ | 2024大問2:夏の暑さとエアコン使用の理由を示す。 |
| don’t need to use them too much | 構文 | ~をあまり使う必要がない | 2024大問2:themがair conditionersを指す。使用を減らせるという内容。 |
| influence A | 動詞句 | Aに影響を与える | 2025大問2:浮世絵が海外芸術家に影響を与えたこと。(受動態も関連して確認) |
| have heard of ~ | 動詞句 | ~を聞いたことがある | 2025大問2:Amyが広重の名前を知っていることを示す。 |
| 【資料・グラフ読解(情報処理)】 | |||
| the most common | 熟語 | 最も一般的な | 2024大問4:過去と現在の共通点の提示。 |
| about two thirds of ~ | 数量表現 | ~のおよそ3分の2 | 2024大問4:黒と赤が当時の児童の約90%を占めていた根拠。 |
| don’t have to do | 熟語 | ~する必要がない | 2024大問3:ルート選択の根拠(橋を何度も渡らない)。 |
| in the morning / in the afternoon | 熟語 | 午前中に / 午後に | 2024大問3:旅程の組み立て条件。 |
| make a reservation | 動詞句 | 予約する | 2025大問3:料理教室参加の条件。 |
| have enough time | 動詞句 | 十分な時間がある | 2025大問3:予定を組めるかの判断。 |
| what they did / what they want to do | 構文 | 何をしたか/何をしたいか | 2025大問4:グラフの2種類の質問(対比)。 |
| it is said that S V | 構文 | SがVだと言われている | 2025大問2・4:一般的情報の提示。 |
| let A know about ~ | 構文 | Aに~を知らせる | 2025大問4:結論の行動(使役動詞)。 |
| 【Eメール条件作文・ディベート】 | |||
| know more about ~ | 熟語 | ~についてもっと知る | 2024大問6:相手が知りたい内容の把握。 |
| answer your questions | 熟語 | あなたたちの質問に答える | 2024大問6:返信文の機能。 |
| have no allergies | 熟語 | アレルギーはない | 2024大問6:条件に対する具体的な返信内容。 |
| I like / I often / I want to ~ | 構文 | 私は~が好きだ/よく~する/~したい | 2024大問6:20〜30語作文で使える基本型。 |
| be better than ~ | 比較構文 | ~よりよい | 2025大問6:ディベートの主張文。 |
| We have two reasons. | 定型表現 | 理由は2つある | 2025大問6:英作文・ディベートの構成。 |
山口県公立英語・長文読解と資料処理における客観的アプローチ
【長文読解・会話文】状況の変化と指示語を捉える「論理マーカー追跡」の型
英語の長文や会話文において、設問の根拠となるのは「状況が変化した瞬間」である。この変化を客観的に捉えるための標識が論理マーカーだ。
- 決定ルール:
HoweverやBecauseが現れたら、その前後で「何が原因で、どう結果が変わったか」を本文と照合して確定させる。- 事例(2024大問2): 「夏はとても暑く、いつもエアコンを使う」という前提に対し、
Howeverとifによって、「もしグリーンカーテンがあれば、エアコンをあまり使う必要がなくなる(we don't need to use them too much)」という解決策へ展開している。このとき、代名詞themが指すものを直前文から正確に拾うことが正答の鍵となる。 - 事例(2024大問5): 主人公はボランティア活動中、子供たちが退屈して去ってしまった後、「午後にもう一度読む必要がある」ため、昼食を楽しめなかった。ここでは
because(because she had to read a story again in the afternoon)が、couldn't enjoy her lunchの理由(心理状態の原因)を明確にしている。
- 事例(2024大問2): 「夏はとても暑く、いつもエアコンを使う」という前提に対し、
【条件付きチラシ・グラフ読解】前提条件と対比を処理する「情報抽出」の型
大問3や大問4の資料問題では、本文全体を漠然と読むのではなく、設問で問われている「時間」「手段」「対比」の条件を絞り込む作業が求められる。
- 決定ルール:対話や原稿の中にある
if(もし〜なら)、only(〜だけ)、the most common(最も一般的な)といった制限・比較の表現を起点にグラフや表を照合する。- 事例(2025大問4): 訪日外国人の行動グラフにおいて、
what they did(何をしたか)とwhat they want to do(何をしたいか)が比較されている。本文では、実際に温泉へ行った人は約30%にとどまる一方で、次回温泉へ行きたい人は約48%いる事実が示される。この具体的な数値の差を根拠に、地元の温泉を外国人観光客に知らせるべきだという主張へ繋げている。
- 事例(2025大問4): 訪日外国人の行動グラフにおいて、
【Eメール・条件作文】相手の要求に応答する「過不足ない情報提供」の型
大問6のような条件作文では、自分の書きたいことを書くのではなく、相手からの質問(要件)に対して漏れなく返答する「処理能力」が問われる。
- 決定ルール:相手のEメール内にある
?(疑問符)やtell usなどの要求表現を抽出し、それに対してI like ~やI have ~の基本構文で1対1の返答を構成する。- 事例(2024大問6): 相手からの
Is there any food that you do not eat?に対してはI have no allergies(アレルギーはない)等で打ち返し、What do you do in your free time?に対してはIn my free time, I often read books.といった基本型で過不足なく情報を提示することが、減点を防ぐうえで重要である。
- 事例(2024大問6): 相手からの
結論:英語の読解・情報処理は才能ではなく、正確な手順の反復である
英語の読解・情報処理は、センスやフィーリングだけに頼るものではない。公立高校入試では、本文・資料・設問条件を照合し、根拠を持って判断する力が求められる。
単語を覚えることはもちろん重要である。しかし、単語の意味を知っているだけでは、複数の資料をまたぐ問題や、条件作文の設問には対応しきれない。自己流の漫然とした過去問演習から脱却するため、以下の手順を必ず確認してほしい。
- 設問要求を確定する:チラシやグラフから、時間・数値・条件を正確に翻訳し、本文と照合する。
- 論理マーカーをマーキングする:本文を読み進める際、
However、Because、So、Ifなどの標識に必ず印をつける。 - 代名詞が指す内容を特定する:マーカーの前後で生じた変化を整理し、
itやthemが指す具体的内容を直前文から確認する。 - 英作文では1対1で答える:相手の質問に対し、過不足なくシンプルに応答する。
この手順を積み重ねることで、初見の問題でも解答根拠を見つけやすくなる。山口県公立英語では、こうした客観的な処理の積み重ねが、安定した得点力を支えるのである。

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