2025年度 鳥取県公立高校入試 国語 大問3 吉永明弘『はじめて学ぶ環境倫理 未来のために「しくみ」を問う』解説と解法分析――「個人の禁欲」から「社会制度の改善」へ至る論理展開と環境倫理の三つの重要な主張の読解手順

目次

「個人の努力」の限界から「社会の仕組み」を問う環境倫理の構造を捉える

現代社会の環境問題を扱った論説文・説明的文章において、多くの学習者は「一人ひとりが無駄遣いをやめ、我慢してエコな生活を心がけることが大切だ」という常識的な道徳観を前提にして文章を読みがちである。しかし、高校入試の国語において問われるのは、そうした素朴な実感をいったん相対化し、筆者がどのような問題意識から「個人の努力や我慢だけでは環境問題を根本的に解決できない」と論じ、議論の射程を社会制度や世代間の倫理へと拡大させていくのか、その論理の階段を客観的にたどる力である。

2025年度の鳥取県公立高校入試・国語の大問3で出題された吉永明弘の『はじめて学ぶ環境倫理 未来のために「しくみ」を問う』は、身近な容器選びの難しさや紙コップの使用という日常的な話題から出発し、「個人の倫理」から「社会の倫理」への視点の転換を説く文章である。エシカル消費の判断の困難さ、マイカップ持参者の努力を無駄にする仕組みの不備、社会的要因によって生み出される欲望の性質、そして加藤尚武が整理した環境倫理の三つの重要な主張(自然の生存権・世代間倫理・地球全体主義)に至るまで、抽象度の高まりとともに論理が整然と展開されている。

文章の内容を大まかに理解しているだけでは、入試本番で安定して高得点を獲得することはできない。本問を確実に解き切るためには、文脈に合致する語句の意味や慣用句の選択、傍線部直後の展開を一般化して条件に即してまとめる記述力、対立概念を踏まえた空欄補充、否定極性(誤っているもの)の具体例判定、複数条件を満たす字数制限抜き出し、そして別掲資料(戦後の拡大造林)と本文の倫理原則を正しく照合する対比読解が不可欠である。本稿では、各設問の解法手順に基づき、2025年度鳥取県大問3の全問について、その客観的な思考プロセスを分解・明示する。

『はじめて学ぶ環境倫理 未来のために「しくみ」を問う』(吉永明弘)の要約と論理構造

本文は、身近な生活行為における「エコ」の限界を指摘し、欲望の社会性を経て、社会制度の改善を志向する環境倫理の重要な主張へと論述が深化していく構造を持つ。

  • 論理の全体構造
    • 第1段落〜第3段落(日常的エコの限界と「至難のワザ」)環境に配慮した消費(エシカル消費)が推奨されるが、缶・びん・ペットボトル・紙パックなどの環境負荷を総合的に比較して真のエコ商品を判断することは極めて困難である。また、マイカップを持参して紙コップを節約する人がいても、次の人が紙コップを二重に使えばその努力は無駄になってしまう。個人の善意や説教に頼るのではなく、「紙コップを備え付けない」といった仕組みの工夫が必要であることが示される。
    • 第4段落(小さな節約から大きな浪費への視点の拡大)紙コップの節約のような小さな無駄にとどまらず、筆者は「個人住宅の節電も大切だが、社会のもっと大きなところで大量の電力が浪費されているのではないか」という疑問を提示する。個人の身の回りの節約だけでなく、社会全体の浪費を止めるよう要求することこそが環境倫理の目指す方向性であると位置づける。
    • 第5段落〜第6段落(社会的欲望の発生と「個人の倫理」から「社会の倫理」へ)環境倫理には「欲望を抑えなさい」と個人の意識改革を求めるイメージがあるが、物理学者・槌田敦が指摘するように、「自動車に乗りたい」という欲望は「自動車でなければ通勤できない」という社会構造が生み出している。社会が生み出した欲望を個人の禁欲や自己犠牲で抑えるのは不可能であり、法や経済といった社会制度の改善(社会の倫理)によって解決を図るべきであると論じる。
    • 第7段落〜第8段落(加藤尚武による環境倫理の三つの重要な主張)哲学者・加藤尚武が日本に導入した環境倫理学は、法律や制度を下支えする環境倫理の中身を探究する学問分野として説明される。加藤がまとめた代表的な三つの重要な主張として、(1) 人間以外の種や生態系にも生存権を認める「自然の生存権」、(2) 現在世代が未来世代の生存可能性に責任を持つ「世代間倫理」、(3) 地球生態系を閉じた有限のシステムと捉える「地球全体主義」が整理される。

「個人の倫理」と「社会の倫理(環境倫理)」の対比マトリクス

比較項目個人の倫理(従来のイメージ)社会の倫理・環境倫理(本文の主張)
解決へのアプローチ一人ひとりの我慢、禁欲、自己犠牲、意識改革。法や経済といった社会制度・仕組みの改善。
具体例(紙コップ・節電)マイカップを持参する、個人の住宅でこまめに節電する。紙コップを備え付けない、社会の大規模な電力浪費を止める。
欲望の捉え方個人の身勝手なわがままであり、意志の力で抑えるべきもの。社会の生活環境や仕組みが生み出している「社会的欲望」。
抑止可能性個人の努力で抑え込むことを期待する(しかし限界がある)。個人の努力だけで抑えるのは不可能である。
時間的・空間的射程目の前の生活空間、同時代の人々の関係。**未来世代への責任(世代間倫理)**や地球全体を視野に入れる。

全問解答一覧

問正答・答案選択肢・答案内容形式・条件
問一エ様々な材質が使用される中で、地球環境に与える影響が少ないものを選ぶのは非常に難しいということ。内容説明(最も適切なものを1つ)
問二ア水の泡慣用句(最も適切なものを1つ)
問三紙コップを節約するだけでなく、もっと大きなところの無駄をなくすべきではないか。(傍線部2「次の疑問」の内容説明)記述(「紙コップ」を使用・50字以内・39字)
問四ウ個人空欄補充(最も適切なものを1つ)
問五ア暖房が効きすぎて暑いので、設定温度を下げたい。具体例判定(誤っているものを1つ)
問六 Ⅰ個人の努力で抑えるのは不可能である(社会的欲望の性質)抜き出し(20字以内・17字)
問六 Ⅱ法や経済といった社会制度の改善(社会問題の解決方法)抜き出し(15字以内・15字)
問七イ(2) 世代間倫理資料対応(最も適切なものを1つ)

【大問3】各設問の解答解説と思考手順

問一 「至難のワザ」とはどういうことか

  • 手順1(設問要求):傍線部1「至難のワザ」の内容を説明したものとして最も適切なものをア〜エから一つ選択する。「至難」とは極めて困難であることを意味するため、「何を行うことが非常に難しいのか」を前後の文脈から正確に特定する。
  • 手順2(根拠範囲):第2段落を精査する。
    • 「エコな商品を選ぶことが推奨されていますが、たとえばジュースを飲むときに、缶、ビン、ペットボトル、紙パックのうちどの容器の商品がエコなのかを判断するのは1 至難のワザです。ネット検索をしていたら、それぞれの容器の環境負荷を比較しているウェブサイトを見つけました。」
  • 手順3(論理整理):
    • 本文で「至難」とされている対象は、デザインの優劣や個人の嗜好に合わせることではなく、「缶、ビン、ペットボトル、紙パックなど、異なる材質の容器について、どれが環境負荷が小さい(エコである)かを判断すること」である。
  • 手順4(選択肢の照合):
    • ア(不適切):多様な形やデザインの中から「すべての人に配慮されたものを選ぶ」というユニバーサルデザインの話ではない。
    • イ(不適切):企業の「生産コスト」を比較する話ではない。
    • ウ(不適切):「自分の生活スタイルに合わせたものを選ぶ」難しさを論じているのではない。
    • エ(適切):「様々な材質が使用される中で、地球環境に与える影響が少ないものを選ぶのは非常に難しいということ」は、本文の「多種多様な容器の環境負荷の判断」と完全に合致する。
  • 結論:エ

問二 空欄Aに入る慣用句

  • 手順1(設問要求):本文中の空欄[ A ]にあてはまる最も適切な言葉をア〜エから一つ選択する。
  • 手順2(根拠範囲と文脈):第3段落後半を精査する。
    • 「それで毎回マイカップを持って来てお茶を注いでいた人がいましたが、ふと次の人を見たら、次の人は備え付けの紙コップを二つ取り、二重にして使っていたという話です(熱いからでしょう)。それではマイカップを使っている人の努力が[ A ]です。」
  • 手順3(論理整理):
    • マイカップ持参者は紙コップを節約しようと努力しているが、直後の人が紙コップを2枚消費したため、節約した分の成果が完全に相殺・無効化されてしまっている。
    • したがって、「それまでの努力や苦労が無駄になってしまうこと」を意味する慣用句が入る。
  • 手順4(選択肢の照合):
    • ア「水の泡」:努力や苦労の成果が消えて無駄になることを意味し、文脈に完全に合致する。
    • イ「机上の空論」:頭の中で描いただけで、実際には役に立たない理論のこと。
    • ウ「濡れ手で粟」:何の苦労もせずに多くの利益を得ること。
    • エ「ぬかにくぎ」:働きかけても何の手応えも効き目もないこと。ここでは「行われた努力が無に帰す」ことが論点であるため不適。
  • 結論:ア

問三 「次の疑問」とは何か(記述)

  • 手順1(設問要求と指定条件):
    • 傍線部2「次の疑問がわきます」について、[ B ]に入る疑問の内容を記述する。
    • 条件①:「紙コップ」という語を必ず用いる。
    • 条件②:五十字以内で書く。
  • 手順2(根拠範囲の特定):第4段落前半〜中盤を精査する。
    • 「有力な解答は、『紙コップを備え付けない』ということです。……しかし、2 次の疑問がわきます。[ B ]。似たような例でいえば、個人住宅で電気を節約するのも大切ですが、もっと大きなところでたくさんの電力が浪費されている可能性があります。浪費をやめるのであれば、それらを止めるよう要求するほうが『エコ』になるでしょう。」
  • 手順3(論理整理):
    • 直後の「似たような例」である電力の議論から論理を抽出する。
      • 「個人住宅での節電も大切だが、もっと大きなところで電力が浪費されている可能性がある。」
      • 「それら(大きな浪費)を止めるよう要求するほうがエコになる。」
    • これを紙コップの話へとフィードバックして[ B ]の疑問を復元する。
      • 「紙コップを節約する(備え付けない)ことも大切だが、社会のもっと大きなところで無駄や浪費が生じているのではないか。」
      • 「そうしたもっと大きな無駄をなくす・省くべきではないか。」
  • 手順4(答案の合成と字数計算):
    • 「紙コップを節約するだけでなく、もっと大きなところの無駄をなくすべきではないか。」
    • 文字数:句読点を含めて39字(50字以内の指定を満たし、「紙コップ」の指定語も充填)。
  • 結論:紙コップを節約するだけでなく、もっと大きなところの無駄をなくすべきではないか。

問四 空欄Cに入る言葉

  • 手順1(設問要求):本文中の空欄[ C ]にあてはまる最も適切な言葉をア〜エから一つ選択する。
  • 手順2(根拠範囲と対比構造):第5段落を精査する。
    • 「環境倫理という言葉には、無駄な買い物をやめなさい、商品に対する欲望をおさえなさい、と[ C ]の意識改革を求めるイメージがあるかもしれません。」
    • 直後:「……そのような社会的欲望を個人の努力で抑えるのは不可能であると述べています。……ここでは個人の倫理と社会の倫理が区別されています。」
  • 手順3(論理整理):
    • 「買い物をやめなさい」「欲望をおさえなさい」と説かれる対象は、制度や企業ではなく、生活者一人ひとりの内面である。
    • 直後で「個人の努力」「個人の倫理と社会の倫理」と対比されていることから、従来の環境倫理の通俗的イメージは「個人の意識改革」を指していることが自明である。
  • 手順4(選択肢の照合):
    • ア「企業」:企業の意識改革ではなく、個別の生活者の内面が論点である。
    • イ「社会」:空欄の箇所は、筆者がこれから提示する「社会の倫理」に対立する従来の考え方を述べているため不適。
    • ウ「個人」:「個人の意識改革」となり、後続の「個人の努力」「個人の倫理」という対比語と完全に呼応する。
    • エ「人間」:語の射程が広すぎ、個人と社会の対立軸を表現できない。
  • 結論:ウ

問五 「社会的欲望」の例として誤っているもの

  • 手順1(設問要求):傍線部3「欲望には社会性がある」の具体例として誤っているものをア〜エから一つ選択する(否定極性の設問)。
  • 手順2(根拠範囲と概念の定義):第5段落中盤を精査する。
    • 「槌田敦は、『自動車に乗りたい』という欲望は、自動車でないと通勤できないという状況が生み出しているという例を挙げて、3 欲望には社会性があると主張し、……」
    • 本文における「社会的欲望」とは、個人の内側だけから生じるものとして欲望を捉えるのではなく、社会の仕組みや生活環境などによって生み出される面を持つ欲望を指す。
  • 手順3(選択肢の照合):
    • ア「暖房が効きすぎて暑いので、設定温度を下げたい。」:暑さという身体的・生理的な感覚に直接起因する欲求であり、社会構造や社会制度によって生み出された欲望とはいえないため、誤り(正答)となる。
    • イ「多様な職種から選べるので、都会で就職したい。」:求人や産業が都市部に集中しているという社会的な構造によって生じている欲望であり、社会的欲望の例として合致する。
    • ウ「流行におくれたくないので、新しい服が欲しい。」:ファッションの流行や他者との関係性という社会的状況から生じる欲望であり、合致する。
    • エ「持っていると便利なので、スマートフォンが欲しい。」:通信網やデジタルインフラが普及した現代社会の生活環境を前提として生じる欲望であり、合致する。
  • 結論:ア

問六 傍線部4「社会的欲望によって引き起こされた問題は社会の倫理によって解決するしかない」の内容(抜き出し)

設問要求:傍線部4の内容をまとめた【説明】の空欄( Ⅰ )・( Ⅱ )にあてはまる内容を本文中から抜き出す。 【説明】「社会的な欲望は( Ⅰ ※二十字以内 )から、それによって引き起こされた社会問題は( Ⅱ ※十五字以内 )をすることでしか解決できないということ。」

問六 Ⅰ(社会的欲望の性質)

  • 手順1(指定条件と接続関係):
    • 条件:本文中から20字以内で抜き出す。
    • 接続形式:「社会的な欲望は[ Ⅰ ]から、」に意味的・文法的に適合する述部を特定する。
  • 手順2(根拠範囲の探索):傍線部4の直前(第5段落後半)を精査する。
    • 「……そのような社会的欲望を個人の努力で抑えるのは不可能であると述べています。そして4 社会的欲望によって引き起こされた問題は社会の倫理によって解決するしかないと主張します。」
  • 手順3(抜き出し箇所の確定と字数計算):
    • 該当箇所:「個人の努力で抑えるのは不可能である」
    • 文字数:17字(20字以内の指定を過不足なく充足)。
  • 結論(Ⅰ):個人の努力で抑えるのは不可能である

問六 Ⅱ(社会問題の解決方法)

  • 手順1(指定条件と接続関係):
    • 条件:本文中から15字以内で抜き出す。
    • 接続形式:「社会問題は[ Ⅱ ]をすることでしか解決できない」の「〜をすること」に直結する名詞句を特定する。
  • 手順2(根拠範囲の探索):傍線部4の直後(第6段落)を精査する。
    • 「そして環境倫理は禁欲や自己犠牲といった個人倫理よりも、法や経済といった社会制度の改善に目を向けるものなのです。」
  • 手順3(抜き出し箇所の確定と字数計算):
    • 該当箇所:「法や経済といった社会制度の改善」
    • 文字数:15字(15字以内の上限に完全に合致)。
  • 結論(Ⅱ):法や経済といった社会制度の改善

問七 【文章】は環境倫理のどの主張の具体例か

  • 手順1(設問要求):本文の傍線部5「重要な主張を三つにまとめて紹介しています」にある主張のうち、別掲の【文章】がいずれの主張の具体例として書かれたものかをア〜ウから一つ選択する。
  • 手順2(本文における三つの主張の定義の確認):第7段落末尾〜第8段落冒頭を精査する。
    • (1) 自然の生存権:人間だけでなく、生物の種、生態系、景観などにも生存の権利がある。
    • (2) 世代間倫理:現在世代は、未来世代の生存可能性に対して責任がある。
    • (3) 地球全体主義:地球の生態系は開いた宇宙ではなくて閉じた世界である。
  • 手順3(【文章】の内容分析):別掲【文章】の論理を精査する。
    • 事実:戦後復興のために木材が必要となり、「拡大造林」政策によってスギなどが大量に植えられた。
    • 展開:その後輸入木材が増加して国内林業が衰退し、手入れされないスギ林が放置された結果、現代の人々が花粉症に苦しむデメリットだけが残された。
    • 結び:「拡大造林を立案した人々はすでに亡くなっている」ため、現在の私たちは責任者に苦情を言うことすらできない。
  • 手順4(論理整理と選択肢照合):
    • 【文章】が提示している本質的な問題は、「過去の世代が決定した政策の負の影響を、何十年もあとの現在の世代(あるいは未来の世代)が一方的に引き受けさせられている」という、世代を越えた責任の所在である。
    • これは、「現在世代は未来世代の生存可能性に責任を負わなければならない」とする「(2) 世代間倫理」の論理と完全に一致する。
  • 結論:イ

授業ではここまで扱う:論説文における「議論の階層上昇」の読解手順

実際の授業では、単に正答の記号や模範解答を確認するにとどまらず、論説文において筆者が「身近な具体的事例から、いかに抽象度の高い社会システム論へと議論の射程を押し広げていくか」という議論の階層上昇(スケールアップ)の手順を体系化して指導する。

個人から社会・制度への4段階スケールアップ構造

本問では、読者にとって身近な生活上の話題から始め、その限界を示しながら、最終的に法制度や環境倫理の考え方へと議論を発展させている。

階層本文における議論の内容読解・解法上の着眼点
第1段階
身近な日常の実践
どの容器がエコか判断が難しく(至難のワザ)、マイカップを使っても他人が紙コップを重ねれば無駄になる。「個人の善意や心がけだけでは限界がある」という問題意識を押さえる。
第2段階
身の回りの仕組み
紙コップ使用を個人の道徳に頼るのではなく、「備え付けない」というルールにする。「個人の意識」から「周囲の物理的な仕組み」への最初の視点移動を捉える。
第3段階
社会全体の浪費と構造
個人の節電よりも大きな電力浪費に目を向け、欲望自体が社会構造から生じていることを見る。欲望を個人の内側だけで捉えるのではなく、「社会的欲望」として客観的に再定義する(問五・問六)。
第4段階
法・制度・普遍的倫理
禁欲ではなく法や経済制度を改善し、未来世代への責任(世代間倫理)を引き受ける。個人の倫理にとどまらず、「社会の倫理」としての制度設計や時間軸の拡大へ到達する(問七)。

重要なのは、「筆者は環境問題について述べている」という大まかな理解で満足することではない。筆者が「容器の比較」という身近な日常行為からスタートし、どのような論理の必然性をもって「法や経済制度の改善」や「世代間倫理」という大きなテーマへと議論の階段を上っていったのか、その展開の道筋を初見の文章でも追跡できるようにすることである。

【鳥取県】国語・論説文の対策と復習手順

2025年度の本問では、身近なエシカル消費の話題から環境倫理学の基本概念へと至る論説文が出題され、語句・慣用句・記述(39字)・空欄補充・否定極性の具体例判定・二箇所の抜き出し・別掲資料との照合まで、総合的な読解力が試された。対策においては、感覚的な判断を排し、以下の客観的な処理手順を定着させることが重要である。

  • 1. 指示接続語と「具体例の一般化」による記述作成 問三のように傍線部直後の疑問内容を記述する場合、「似たような例」として挙げられた具体例(電力の浪費)の論理構造をまず抽象化する。「個別の小さな節電だけでなく、社会のもっと大きな浪費を止めるべきだ」というエッセンスを抽出し、それを設問の要求(「紙コップ」の指定語)に合わせて再適用することで、50字以内の指定を満たす盤石な答案を組み立てる習慣をつける。
  • 2. 対立概念の軸を固定した「空欄補充と抜き出し」 問四の空欄補充や問六の抜き出しでは、文章の根底に流れる対立軸「個人の倫理(禁欲・自己犠牲・意識改革)」対「社会の倫理(法や経済・社会制度の改善)」を明確に意識する。空欄や抜き出し箇所の前後に置かれた接続詞・助詞に注目し、今どちらの極の議論が展開されているのかを照合することで、誤答の選択肢を確実に排除する。
  • 3. 概念の定義と「別掲資料の論理的対応関係」の検証 問七のように本文中の抽象概念(三つの重要な主張)と初見の具体的事例(拡大造林)を照合する問題では、本文に書かれた各概念の定義(自然の生存権・世代間倫理・地球全体主義)を正確に押さえる。資料中の「政策立案者は既に亡くなっており、今の世代が不利益を引き受けている」という核心部分を抽出し、「現在世代と未来世代の間の責任関係」という定義と1対1で合致する選択肢を論理的に射抜く力を鍛える。

過去問演習の復習においては、「単に正解を選べたか」で終わらせず、「問三で電力の例を紙コップの議論へ正しく変換できたか」「問五でなぜアだけが身体的欲求なのかを説明できるか」「問七で拡大造林のどの記述が世代間倫理に結びつくのかを言語化できるか」を徹底的に確認することが、初見の文章でも本文根拠に基づいて安定して得点するための確かな土台となる。

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この記事を書いた人

千葉県・習志野市を拠点とする「習志野受験研究所」所長。10年以上の指導現場から得た知見をもとに、全国の入試問題を分析・発信しています。

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