【岩手県公立高校入試・理科】物理「力の矢印作図」全8問の解法アナトミー(2012〜2026年分析)|方眼マス目の決定基準・作用点の特定・つり合いの思考手順

目次

導入:問題の知的な枠組みと分析軸

岩手県公立高校入試の理科において、物理分野で安定して得点を重ねるためには、「方眼紙上における力の矢印作図」を確実に正答する技術が重要である。

2012年度から2026年度までの15か年(全99大問・477設問・571解答単位)を追跡すると、全21箇所出題された作図・グラフ作成問題のうち、8箇所が「物体にはたらく力の矢印作図」である(2019年度大問2(1)の磁針の向き作図を除く)。出題箇所は物理の単元大問にとどまらず、近年の総合融合大問(大問5)の設問にも組み込まれている。

過去15年間の全8問を分析すると、矢印の長さ(マス数)を決定する仕組みには、大きく分けて「問題文の数値と1目盛りの値(N)から計算してマス数を決める形式」と、「問題図にすでに描かれている矢印のマス目を基準として、力のつり合い・分解・分配・差し引きからマス数を決める形式」の2種類が存在する。

単に「重力は下向き」「垂直抗力は上向き」という用語や公式を知っているだけでは正答できない。本番では、まず「数値換算か、図示された矢印との比較・分解か」という長さの決定基準を確認し、続いて「作用点(●)の位置」と「力学的関係」をどの順序で適用するかという客観的な思考手順が必要である。

本記事では、2012〜2026年度の岩手県公立高校入試に出題された「力の矢印作図」全8設問を対象に、出題データと全体構造、全問解答一覧、各設問の思考手順、および初見問題に転用できる確認手順を解説する。

出題データと全体構造(2012〜2026年度・力の作図全8題)

15年間で出題された「方眼上の力の矢印作図」8題の出題条件、作用点の位置、長さの決定基準、および要求された力学的処理を以下の表に整理する。

年度大問番号単元区分作図対象の力作用点の指定位置長さの決定基準と描くべき矢印決定的な力学的根拠・要求処理
2012大問4(2)中1・力
中3・運動
斜面上の台車にはたらく垂直抗力台車と斜面の接触面に打たれた点●【図示された重力の幾何学的分解とつり合い】
図の重力矢印を分解し垂直分力(4目盛り)を特定
矢印:斜面垂直上向きに4目盛り
図示された重力を斜めの方眼に沿って分解し、斜面に垂直な分力(下向き4目盛り)と大きさが等しく逆向きの力を描く
2014大問4(3)中3・運動水平面を等速運動する小球の重力以外の力(垂直抗力)小球と台(レール)の接点●【数値換算】
1目盛り=0.1N(小球40g=0.4N)
矢印:鉛直上向きに4マス
水平面上の小球は鉛直方向の力がつり合っている。作用点は物体の中心ではなく台との接点●
2018大問5(1)中3・力と運動斜面上の台車の重力の2方向への分力台車の中心に打たれた点●【図示矢印の幾何学的分解】
図示された重力の矢印を対角線とする
矢印:斜面下向き2マス、斜面垂直下向き4マス
重力の先端から斜面に平行・垂直な軸へ垂線を下ろし、長方形(平行四辺形)の2辺として分力を描く
2020大問4(2)中1・力と圧力スポンジ上の直方体Pにはたらく垂直抗力直方体とスポンジの接触面中央の点●【図示矢印との比較】
図示された重力矢印(下向き3マス)が基準
矢印:鉛直上向きに3マス
静止した直方体(質量3kg)にはたらく重力と垂直抗力はつり合うため、図の重力矢印と同じ長さ(3マス)を描く
2021大問4(3)中3・運動水平面を等速運動する小球の重力以外の力(垂直抗力)小球とレールの接点●【数値換算】
1目盛り=0.1N(小球の重さ0.3N)
矢印:鉛直上向きに3マス
等速直線運動時、水平方向の合力は0であり、鉛直方向は重力(0.3N)と垂直抗力がつり合う
2022大問2(3)中3・仕事動滑車を支える左右2本の糸が引く力動滑車の左右両端の点Aおよび点B【図示矢印の均等分配】
図の下向き矢印(4マス)を2等分
矢印:点A・Bからそれぞれ鉛直上向きに2マスずつ
定滑車で引く力20.0Nに対し、動滑車では左右2本の糸が10.0Nずつ均等に支えるため、下向き4マスの半分の2マスずつを描く
2024大問5(5)中1・力
(総合融合)
水中で静止して浮く凍ったペットボトルの重力と浮力(図Ⅳ)ペットボトルの中心に打たれた点●【図示矢印との比較】
前図に示された浮力矢印(3マス)が基準
矢印:下向き3マス(重力)および上向き3マス(浮力)
食塩水を水に替えてもペットボトルは静止して浮いており、不変である重力(下向き3マス)と浮力(上向き3マス)がつり合う
2026大問5(7)中1・浮力
(総合融合)
水中の荷物にはたらく浮力荷物の中心に打たれた点●【図示矢印の差し引き】
荷物重力5マス、船重力2マス、船浮力3マス
矢印:鉛直上向きに4マス
船のつり合いからロープが荷物を引く力は $3 – 2 = 1\,\text{マス}$。荷物の浮力は荷物の重力から差し引き $5 – 1 = 4\,\text{マス}$

全問解答一覧

本記事で扱う「方眼上の力の矢印作図」全8題の正答(作図条件)は以下の通りである。

  • 2012年度 大問4(2): 台車と斜面の接触面にある点●を作用点とし、斜面に対して垂直上向きに4目盛り分の矢印を描く。
  • 2014年度 大問4(3): 小球と水平台の接点●を作用点とし、鉛直上向きに4マス分の矢印を描く。
  • 2018年度 大問5(1): 台車の中心●を作用点とし、斜面に平行な下向きに2マス分、斜面に垂直な下向きに4マス分の矢印をそれぞれ描く(計2本)。
  • 2020年度 大問4(2): 直方体とスポンジの接触面中央の点●を作用点とし、鉛直上向きに3マス分の矢印を描く。
  • 2021年度 大問4(3): 小球とレールの接点●を作用点とし、鉛直上向きに3マス分の矢印を描く。
  • 2022年度 大問2(3): 動滑車上の点Aおよび点Bを作用点とし、それぞれ鉛直上向きに2マス分の矢印を描く(計2本)。
  • 2024年度 大問5(5): 図Ⅳのペットボトルの中心●を作用点とし、鉛直下向きに3マス分(重力)、鉛直上向きに3マス分(浮力)の矢印を描く(計2本)。
  • 2026年度 大問5(7): 荷物の中心●を作用点とし、鉛直上向きに4マス分の矢印を描く。

各設問の解答解説と思考手順

1. 数値換算によって長さを決定する垂直抗力作図(2014年大問4・2021年大問4)

【2014年度 大問4(3)】

  • 手順1(設問要求): 水平な台の上を等速直線運動している小球にはたらいている「重力以外の力」を、図の方眼紙上に矢印でかき入れる。
  • 手順2(条件整理): 問題文より、小球の質量は40g、100gの物体にはたらく重力の大きさは1N、方眼の1目盛りは0.1Nを表す。したがって、小球にはたらく重力の大きさは、$$40\,\text{g} \times \frac{1\,\text{N}}{100\,\text{g}} = 0.4\,\text{N}$$であり、方眼のマス目に換算すると$$0.4\,\text{N} \div 0.1\,\text{N} = 4\,\text{マス分}$$となる。
  • 手順3(結果・資料の読み取り): 図中には、小球と台の接点に作用点「●」が打たれている。小球は水平面を等速直線運動しており、水平方向には力がはたらいていない。
  • 手順4(科学的関係の適用): 小球は上下方向に動かないため、鉛直下向きの重力と、台が小球を押し返す鉛直上向きの「垂直抗力」がつり合っている。したがって、求める「重力以外の力(垂直抗力)」は、大きさが重力と等しい0.4N(4マス分)、向きが「鉛直上向き」となる。
  • 手順5(条件確認): 作用点が指定された「台との接点●」になっているか、矢印の長さが正確に4マス分であるかを確認する。
  • 結論: 小球と台の接点●を始点とし、鉛直上向きに4マス分の矢印を描く。

【2021年度 大問4(3)】

  • 手順1(設問要求): 水平なレール上を運動する小球にはたらいている「重力以外の力」を、作用点●から矢印でかき入れる。
  • 手順2(条件整理): 問題文より、小球の重さは0.3N、方眼の1目盛りは0.1Nである。したがって、重力の大きさは$$0.3\,\text{N} \div 0.1\,\text{N} = 3\,\text{マス分}$$に相当する。
  • 手順3(結果・資料の読み取り): 小球と水平レールが接する点に作用点「●」が示されている。
  • 手順4(科学的関係の適用): 水平なレール上を運動する小球において、鉛直下向きの重力(0.3N)と鉛直上向きの垂直抗力がつり合っている。よって、垂直抗力の大きさは0.3N(3マス分)、向きは鉛直上向きとなる。
  • 手順5(条件確認): 始点が接触面の●であること、鉛直上向きに3マス分の長さであることを確認する。
  • 結論: 接点●を始点とし、鉛直上向きに3マス分の矢印を描く。

2. 図示された重力矢印の分解・比較による垂直抗力・分力作図(2012年大問4・2018年大問5・2020年大問4)

【2012年度 大問4(2)】

  • 手順1(設問要求): 斜面上で静止している台車にはたらく「垂直抗力」を、図の作用点●から矢印でかき入れる。
  • 手順2(条件整理): この設問には1目盛りあたりのNの数値指定はない。原図には台車の中心から鉛直下向きに「台車にはたらく重力の矢印」のみが描かれており、斜面に平行な線と斜面に垂直な線からなる斜めの方眼グリッドが与えられている。
  • 手順3(結果・資料の読み取り): まず、原図に描かれた重力の矢印を斜めの方眼に沿って「斜面に平行な方向」と「斜面に垂直な方向」に分解する。重力の矢印の先端から斜面に垂直な軸へ方眼の線に沿って垂線を下ろすと、重力の「斜面に垂直な方向の分力」は、斜面に垂直な下向きに「4目盛り分」の長さであることが読み取れる。また、台車と斜面の接触面に作用点「●」が指定されている。
  • 手順4(科学的関係の適用): 斜面上の台車にはたらく垂直抗力は、斜面の面に対して垂直上向きにはたらき、手順3で重力を分解して求めた「重力の斜面に垂直な分力(下向き4目盛り分)」とつり合う。したがって、求める垂直抗力の向きは「斜面に対して垂直上向き」、長さは垂直分力と等しい「4目盛り分」となる。
  • 手順5(条件確認): 鉛直上向きではなく「斜面に垂直な上向き」になっているか、作用点●から4目盛り分の長さになっているかを確認する。
  • 結論: 斜面上の作用点●から、斜面に対して垂直上向きに4目盛り分の矢印を描く。

【2018年度 大問5(1)】

  • 手順1(設問要求): 斜面上にある台車にはたらく重力を、「斜面に平行な力」と「斜面に垂直な力」に分解し、点●を作用点として2つの分力を矢印でかき入れる。
  • 手順2(条件整理): 台車の中心●から鉛直下向きに重力の矢印が描かれており、背景には斜面に平行な線と垂直な線からなる方眼グリッドが与えられている。
  • 手順3(結果・資料の読み取り): 図示された重力の矢印の先端(終点)の位置を方眼上で確認すると、作用点●から見て「斜面に平行な下向きに2マス」「斜面に垂直な下向きに4マス」進んだ交点に位置している。
  • 手順4(科学的関係の適用): 力の分解では、もとの力(重力)を対角線とする長方形(平行四辺形)をつくる。重力の先端から斜面に平行な軸および垂直な軸へ垂線を下ろすと、2つの分力の先端が確定する。
  • 手順5(条件確認): 作用点●を始点として、「斜面平行下向きに2マス分」「斜面垂直下向きに4マス分」の2本の矢印が正確に描かれているかを確認する。
  • 結論: 作用点●から、斜面平行下向きに2マス分、斜面垂直下向きに4マス分の矢印をそれぞれ描く(計2本)。

【2020年度 大問4(2)】

  • 手順1(設問要求): スポンジの上に置かれた質量3kgの直方体Pにはたらく「垂直抗力」を、図の作用点●から矢印でかき入れる。
  • 手順2(条件整理): 問題文で直方体Pの質量は3kg(100gにはたらく重力を1Nとすれば重力は30N)と与えられているが、作図欄には1マスあたりのNの指定はなく、すでに図中に描かれている「重力の矢印」の長さを基準として作図する設定である。
  • 手順3(結果・資料の読み取り): 図を確認すると、直方体Pの中心から鉛直下向きに「3マス分」の長さで重力の矢印が描かれている。また、直方体Pとスポンジの接触面の中央に作用点「●」が打たれている。
  • 手順4(科学的関係の適用): 直方体Pはスポンジ上で静止しているため、鉛直下向きの重力と、スポンジが直方体Pを押し返す鉛直上向きの垂直抗力がつり合っている。したがって、垂直抗力は図示された重力矢印と同じ長さ(3マス分)で、逆向き(鉛直上向き)となる。
  • 手順5(条件確認): 接触面中央の作用点●から描き始めているか、鉛直上向きに3マス分の長さになっているかを確認する。
  • 結論: 接触面中央の点●から、鉛直上向きに3マス分の矢印を描く。

3. 図示された矢印の分配・つり合い・差し引きによる作図(2022年大問2・2024年大問5・2026年大問5)

【2022年度 大問2(3)】

  • 手順1(設問要求): 動滑車を使って物体を引き上げるとき、動滑車を支える左右2本の糸が動滑車を引く力を、図の点Aおよび点Bを作用点としてそれぞれ矢印でかき入れる。
  • 手順2(条件整理): 実験結果の表より、定滑車を用いて物体を引き上げるときに糸を引く力は「20.0N」、動滑車を用いて引き上げるときに糸を引く力は「10.0N」である。すなわち、動滑車を支える左右2本の糸にはそれぞれ10.0Nずつの上向きの力がはたらいている。
  • 手順3(結果・資料の読み取り): 問題図を見ると、物体と動滑車にはたらく下向きの力(20.0Nに相当)が、鉛直下向きに「4マス分」の矢印として描かれている。また、動滑車の左右に糸が接する作用点「A」および「B」が指定されている。
  • 手順4(科学的関係の適用): 下向きの力(20.0N=4マス分)を、左右2本の平行な糸が10.0Nずつ均等に二等分して支えている。したがって、点Aおよび点Bから描くべき上向きの矢印の長さは、下向き矢印(4マス)の半分にあたる、$$4\,\text{マス} \div 2 = 2\,\text{マス分}$$となる。
  • 手順5(条件確認): 点Aと点Bの両方からそれぞれ鉛直上向きに2マス分の矢印が描かれているかを確認する。
  • 結論: 点A、点Bから、それぞれ鉛直上向きに2マス分の矢印を描く(計2本)。

【2024年度 大問5(5)】

  • 手順1(設問要求): 食塩水を水に替えた図Ⅳにおいて、水中で静止して浮いている凍ったペットボトルにはたらく「重力」と「浮力」を、図Ⅳの作用点●からそれぞれ矢印でかき入れる。
  • 手順2(条件整理): この設問には1マスあたりのNの数値は与えられておらず、前の図(食塩水中で静止して浮いている状態の図)に示された矢印の長さを基準として読み取る。
  • 手順3(結果・資料の読み取り): 問題図を確認すると、食塩水中で浮いているペットボトルにはたらく浮力が、上向きに「3マス分」の矢印として示されている。また、食塩水を水に替えた図Ⅳでも、水面に達する深さ(水没体積の割合)は変化したものの、ペットボトルは水中で沈まずに静止して浮いている。作用点「●」はペットボトルの中心に打たれている。
  • 手順4(科学的関係の適用):
    1. 食塩水中でも水中(図Ⅳ)でも、凍ったペットボトルそのものの質量は変わらないため、ペットボトルにはたらく「重力」の大きさは変化しない。食塩水中で静止していたとき、重力と浮力(上向き3マス)はつり合っていたため、ペットボトルの重力は「鉛直下向きに3マス分」である。
    2. 水に替えた図Ⅳでもペットボトルは静止して浮いているため、水中で受ける「浮力」はペットボトルの重力とつり合っている。したがって、図Ⅳにおける浮力も「鉛直上向きに3マス分」となる。
  • 手順5(条件確認): 設問は「重力と浮力の両方」の作図を要求しているため、図Ⅳの中心●から下向きに3マス、上向きに3マスの計2本の矢印が描かれているかを確認する。
  • 結論: 図Ⅳの中心●を始点とし、鉛直下向きに3マス分(重力)、鉛直上向きに3マス分(浮力)の矢印をそれぞれ描く(計2本)。

【2026年度 大問5(7)】

  • 手順1(設問要求): 水面に浮かぶ船の下に荷物をロープでつり下げて全体が静止しているとき、水中の荷物にはたらく「浮力」を、荷物の中心●から矢印でかき入れる。
  • 手順2(条件整理): この設問にはNの数値指定はなく、問題図にすでに描かれている3本の力の矢印のマス目を読み取り、力のつり合いから荷物の浮力を導出する。
  • 手順3(結果・資料の読み取り): 問題図の方眼から、すでに描かれている3つの力の矢印の長さを読み取る。
    • 荷物にはたらく重力:鉛直下向きに 5マス分
    • 船にはたらく重力:鉛直下向きに 2マス分
    • 船にはたらく浮力:鉛直上向きに 3マス分 また、荷物の中心に作用点「●」が指定されている。
  • 手順4(科学的関係の適用): 船と荷物はそれぞれ静止しているため、力のつり合いを段階的に適用する。
    1. 船にはたらく力のつり合い: 船には「上向きの浮力(3マス)」と「下向きの船の重力(2マス)」および「ロープが船を下に引く力」がはたらいている。これらがつり合っているため、ロープが船を下に引く力(=船がロープを通して荷物を上に引き上げる力)は、$$3\,\text{マス} – 2\,\text{マス} = 1\,\text{マス分}$$である。
    2. 荷物にはたらく力のつり合い: 荷物には「下向きの荷物の重力(5マス)」と「ロープが荷物を上に引き上げる力(1マス)」および「上向きの荷物の浮力」がはたらいている。これらがつり合っているため、荷物にはたらく浮力の大きさは、$$5\,\text{マス} – 1\,\text{マス} = 4\,\text{マス分}$$となる(※船と荷物を一体とみなしても、全重力 $5 + 2 = 7\,\text{マス}$ から船の浮力 $3\,\text{マス}$ を引いて $7 – 3 = 4\,\text{マス}$ と求められる)。向きは「鉛直上向き」である。
  • 手順5(条件確認): 荷物の中心●を始点とし、鉛直上向きに4マス分の矢印が描かれているかを確認する。
  • 結論: 荷物の中心●から、鉛直上向きに4マス分の矢印を描く。

複数年度の出題比較から確認できる処理構造

過去15年間の力の作図8問を比較すると、「全年度で共通する判断基準」と「設問の設定によって分岐する処理構造」が明確に区別できる。

1. 複数年度で共通する判断基準:作用点(始点)の厳格な区別

8問すべてにおいて、力の性質に応じた作用点の位置が厳密に指定されている。

  • 物体の中心(●)から描く力: 重力、浮力、および重力を分解した分力(2018年、2024年、2026年)。
  • 接触面・接点(●やA・B)から描く力: 垂直抗力、および糸が物体を引く力(2012年、2014年、2020年、2021年、2022年)。 特に2014年度・2021年度の水平面上の小球では、問題文に「重力以外の力」とだけ書かれており、それが垂直抗力であることを見抜いた上で、小球の中心ではなく「台・レールとの接点●」から描き始めることが要求されている。

2. 長さ(マス数)の決定構造における2大分類と4つの分岐

方眼のマス数を決める処理は、すべての問題で「1目盛り=○N」を計算するわけではなく、以下の4つのパターンに分岐している。

  • 分岐1:数値と目盛り基準からの換算(2014年・2021年) 問題文で与えられた質量(g)や重さ(N)と「1目盛り=0.1N」という基準から、割り算によって描くべきマス数を算出する。
  • 分岐2:図示された基準矢印との直接つり合い(2020年・2024年) 1マスあたりのNは与えられず、問題図にすでに描かれている重力や浮力の矢印のマス数を数え、つり合いの関係から「同じマス数・逆向き」の矢印を描く。
  • 分岐3:図示された基準矢印の幾何学的分解・均等分配(2012年・2018年・2022年) 図示された重力の矢印を斜めの方眼に沿って2方向へ分解する(2018年)、重力を幾何学的に分解して得た斜面垂直分力(4目盛り)とつり合う垂直抗力を描く(2012年)、または図示された下向きの力(4マス)を動滑車の左右2本の糸へ半分ずつ(各2マス)分配する(2022年)。
  • 分岐4:図示された複数の矢印の差し引き(2026年) 図示された複数の力(荷物の重力5マス、船の重力2マス、船の浮力3マス)のマス目を読み取り、つり合いの式から引き算($5 – 1 = 4\,\text{マス}$)によって未知の浮力のマス数を決定する。

授業ではここまで扱う:初見の作図問題に対応する「3段階確認法」

実際の指導では、数値換算型と図示矢印比較・分解型のどちらが出題されても迷わず処理できるよう、次の「3段階確認法」を手順化している。

段階確認項目具体的な判断・作業内容岩手県入試での適用例
第1段階長さの決定基準の特定問題文に「1目盛り=○N」があるかを確認する。
・ある場合: 重さ(N)$\div$ 1目盛りの値でマス数を計算する。
・ない場合: 問題図に描かれている既存の矢印の位置・マス数を読み取って基準とする。
・数値換算: $0.4\,\text{N} \div 0.1\,\text{N} = 4\,\text{マス}$(2014年)
・図示比較: 図の重力矢印が3マス $\rightarrow$ 基準は3マス(2020年)
第2段階力の分解とつり合い関係の適用物体が静止・等速運動していることを確認し、必要に応じて力を分解した上でつり合い関係を確定する。
・単一つり合い: 基準と同じマス数・逆向き
・分解+つり合い: 斜めの方眼で重力を分解して垂直分力の目盛り数を求め、それと同長・逆向き
・動滑車分配: 基準マス数 $\div 2$
・複数物体つり合い: 下向き合計マス数 $-$ 既知の上向きマス数
・単一つり合い: 上向き3マス(2020, 2021, 2024年)
・分解+つり合い: 重力を分解して垂直分力4目盛りを特定 $\rightarrow$ 斜面垂直上向き4目盛り(2012年)
・動滑車分配: $4\,\text{マス} \div 2 =$ 各2マス(2022年)
・差し引き: 荷物5マス $-$ ロープ1マス = 上向き4マス(2026年)
第3段階作用点・向き・本数の点検鉛筆で描く前に、始点の位置(中心か接点か)、面の傾きに対する角度、要求された矢印の本数(1本か2本か)を指差し確認する。・斜面垂直抗力: 斜面に直角上向き(2012年)
・2本要求: 分力2本(2018年)、動滑車A・B(2022年)、重力と浮力(2024年)

重要なのは、名称や公式だけを覚えることではなく、どの条件を確認し、どの処理を選択するかを別の問題でも再現できるようにすることである。

【岩手県】【理科】の対策と復習手順

過去問の解答を見て「上向きに3マス描けばよい」と結果だけを確認する学習では、本番の初見問題で同じ判断手順を自力で再現することはできない。

普段の過去問演習および復習では、次の3つの手順を反復して身につけてほしい。

1. 複数年度で実際に確認できたこと

岩手県の力の作図では、「垂直抗力」「重力の分力」「動滑車の糸が引く力」「浮力と重力のつり合い」が繰り返し出題されている。特に近年(2020年、2022年、2024年、2026年)は、1マスあたりのNを計算させるのではなく、「問題図に描かれた矢印が何マス分あるかを正確に数え、つり合いや分配の法則から作図する問題」が続けて出題されている。また斜面上の作図(2012年、2018年)では、斜めの方眼を使って重力を分解する操作が不可欠となる。

2. 初見問題にも利用できる手順

本記事で整理した「第1段階:長さの決定基準の特定(数値換算か図示矢印の読み取りか) $\rightarrow$ 第2段階:力の分解とつり合い関係(つり合い・分解・分配・差し引き)の適用 $\rightarrow$ 第3段階:作用点・向き・本数の点検」という手順は、どのような実験装置が題材であってもそのまま適用できる。演習時には、作図の横に「なぜそのマス数になったのか」の式や分解の補助線を残す復習法を推奨する。

3. 年度によって変わるため固定化すべきでない部分

「作図する矢印は常に1本である」「数値が与えられて割り算する問題しか出ない」といった思い込みは禁物である。2024年度のように「重力と浮力の両方(2本)」を同一作用点から描かせる問題や、2026年度のように船と荷物の2物体にはたらく複数の矢印から差し引き計算を行う問題も出題されている。設問文が「どの物体にはたらく」「どの力を」「何本」求めているのかを、最後まで正確に読み取って解答してほしい。

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この記事を書いた人

習志野受験研究所 所長/新・個別指導アシスト習志野校 塾長。10年以上の指導現場から得た知見をもとに、全国の入試問題を分析・発信しています。

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