導入:この大問を解くための2つの分析軸
2026年度の沖縄県公立高校入試・国語の大問1は、堀江敏幸の小説『なずな』を主教材とし、問5では吉野弘の詩『生命は』を補助資料として組み合わせた読解問題であった。生後間もない姪のなずなを預かることになった「私」が、周囲の人々との交流や育児の日常を通じて、人間の結びつきや生命の本質的な支え合いを実感していく過程が描かれている。
小説文の読解において、場面の雰囲気や登場人物の優しさを感覚的に捉えるだけでは、発言の真意を見抜く選択肢問題や、詩と連動した字数指定の抜き出し・自由記述を正確に解き切ることは難しい。問題文と設問から確認できる客観的な構造は、主に以下の2つの軸で整理できる。
- 「表向きの言葉」と「その背後にある気遣い・別れの惜別」の多層的把握問3で問われた喫茶店のママの発言(「こういうときはあったかいものを飲むと楽になるわよ」)は、単なる肉体的な疲労回復の勧めにとどまらない。母親の退院によってなずなを手放さなければならない「私」の複雑な心理(役目を終える安堵と、別れに伴う寂しさ)を周囲が察知しているという、大人の配慮の文脈を本文の出来事から客観的に特定する必要がある。
- 「支える側」から「支えられている側」への認識の転回と相互扶助の構造化物語の前半では、「私」が未熟な乳児を一方的に保護・養育する関係として描かれる。しかし終盤では、なずなの存在そのものが「私」の内面を温め、精神的に支えていたという認識の転換が明示される。問5では、この転換点を表す本文の表現を正確に抜き出したうえで、吉野弘の詩『生命は』が説く「他者によって自らの欠如を満たし合う生命の連鎖」と結びつけ、双方向の支え合いを自らの言葉で具体化する論理的処理が求められる。
背景知識やあらすじをなぞるだけでは正答には至らない。本文・設問・選択肢・資料をどの順序で処理するかという客観的な思考手順を再現していく。
『なずな』(堀江敏幸)の要約と人物関係
本文は、四十代独身の新聞記者である「私」が、海外出張中に負傷した弟の亮二と入院中の義妹・明世に代わり、生後二か月の姪「なずな」を預かった日々の終盤を描いている。明世の退院決定に伴う登場人物の動きと心理の推移は、下表のように整理できる。
| 場面・展開 | 出来事と具体的な描写・発言 | 登場人物の言動と役割 | 「私」の内面と認識の変化 |
| 導入(退院の決定と口実) | 明世の退院が決まり、数日から十日のうちになずなを母親のもとへ送り届ける準備(万端整える)に入る。 | 亮二のリハビリ付き添いを手伝うことが、今後なずなに会いに行く「口実」になると考える(問1、問2 b)。 | 育児の負担から解放される一方で、なずなと離れる寂しさを感じ、今後も関わりを持ち続けたいと願う。 |
| 中盤(喫茶店《美津保》での対話) | マンション1階の喫茶店《美津保》のオーナーであるママに退院を報告する。ママは「私」の目の下の隈に気づき、温かい飲み物を差し出す(問3)。 | ママは「こういうときはあったかいものを飲むと楽になるわよ」と語り、大人の知恵と気遣いで「私」を励ます。 | ママが肉体的な疲労だけでなく、なずなを手放す寂しさを察してくれていることを敏感に受け止める。 |
| 終盤(なずなの世話と比喩) | 部屋に戻り、ミルクを飲ませおむつを替える。首筋や膝の裏にたまった垢を拭き取る(問4)。 | なずなは「ふべっ」と声を出し、「私」の手もとを見つめる。近隣住民や医師を「なずなのもうひとつの家族」と捉える(問5(1)Ⅰ)。 | 垢を「きれいに透き徹った白魚のような垢」と愛おしく見つめ、なずなに対する無償の深い愛情を抱く。 |
| 結び(相互扶助の自覚) | なずなが眠りにつく中、冷えた床の上から温かい空気が覆い被さってくるのを感じる。 | なずなの小さな身体が放つ温もりが「私」の顔を包む。 | 「私は守っているのではなく、守られているのだ、この子に。」と気づき、支える側と支えられる側の反転を自覚する(問5(1)Ⅱ)。 |
全問解答一覧
| 設問 | 正答・答案 | 形式・条件 | 設問条件の概要 |
| 問1 | エ「表向きの理由」 | 語句の意味(記号選択) | 傍線部a「口実」の本文中での意味として最も適当なものを1つ選ぶ。 |
| 問2 b | ばんたん | 漢字の読み(ひらがな) | 二重傍線部b「万端」の読みをひらがなで書く。 |
| 問2 c | 眺 | 漢字の書き取り(1字) | 二重傍線部c「ナガ(め)」のカタカナ部分を漢字に直す。 |
| 問3 | ウ | 心情説明(記号選択) | 傍線部①におけるママの「私」に対する心情として最も適当なものを1つ選ぶ。 |
| 問4 | ア | 比喩の効果(記号選択) | 傍線部②「きれいに透き徹った白魚のような垢」の表現効果として最も適当なものを1つ選ぶ。 |
| 問5(1)Ⅰ | なずなのも | 抜き出し(12字の始めの5字) | 会話文の空欄Ⅰに入る12字の表現を探し、その初めの5字を書く。 |
| 問5(1)Ⅱ | 私は守って | 抜き出し(27字の始めの5字) | 会話文の空欄Ⅱに入る27字の表現(句読点含む)を探し、その初めの5字を書く。 |
| 問5(2) | 私は友人と、相手が落ち込んだときは話を聞き、自分が悩んだときには相談に乗ってもらう | 自由記述(35〜50字 / 本命41字) | 支え合いの経験・希望を、指定文末「ことによって、お互い支えあったことがある(支えあっていきたい)。」に続く形で書く。 |
※問5(2)の別解(公式解答準拠・49字):
私は友達と、悩みがあるときは相談しあい、共に解決策を考えたり、時には悲しい気持ちに寄り添ったりする
【大問1】各設問の解答解説と思考手順
問1(語句の意味・記号選択)
手順1(設問要求の確定)
二重傍線部a「口実」の本文中での意味として、最も適当な選択肢を1つ選ぶ。文脈における機能と語句の定義を確認する。
手順2(根拠範囲の限定)
本文1ページ目の該当箇所を確認する。
「明世さんとお父さんが交代で付き添うにしても限界がある。そのときどうするか。ほんとうに困ったときは、私が手伝いに行かざるをえないだろう。ベビーシッターでも頼まないかぎり、ほかに方法がない。逆に、私の立場からすると静山に出かける口実にもなるわけで、そうなれば定期的になずなの顔を拝むこともできる。ともあれ、早ければあと数日、遅くとも一週間から十日のうちには、万端整えてわが姪っ子を母親のもとに送り届けることになるだろう。」
手順3(論理整理:文脈における「口実」の役割)
「私」は、弟のリハビリを手伝う必要が生じれば、静山へ出かける理由ができ、その機会になずなの顔も見られると考えている。弟への手助けが実際に必要になる可能性と、なずなに会いたいという「私」の希望は両立している。ここでの「口実」は、単なる嘘や方便ではなく、堂々となずなに会いに行くための「表向きの理由」を意味している。
手順4(設問形式に応じた処理:選択肢の照合)
- ア「暗黙の了解」(不適切):言葉に出さなくても共通認識になっている合意事項を指し、出かける名目を表す語ではない。
- イ「強い原動力」(不適切):物事を進める直接のエネルギーや動機を指すが、「口実」は表向きの名目を意味するため不適。
- ウ「絶好の機会」(不適切):都合の良いタイミングを指す言葉であり、「理由付け」そのものを表す語ではない。
- エ「表向きの理由」(適切):行動するための表向きの理由という意味であり、文脈の定義に完全に合致する。
結論
正答は エ(表向きの理由) である。
問2(漢字の読み・書き取り)
手順1(設問要求の確定)
二重傍線部b「万端」の読みをひらがなで記述し、二重傍線部c「ナガめている」のカタカナ部分を漢字1字に直す。送り仮名の処理条件を確認する。
手順2(根拠範囲と文脈の確認)
- b:「万端整えてわが姪っ子を母親のもとに送り届けることになるだろう。」
- c:「だんだん動きの鈍くなってきたなずなの目がとろんとしている。それをナガめている私の瞼も次第に重く下がってくる。」
手順3(論理整理:表記規則の照合)
- b(読み):「万端」は「あらゆる事柄・すべて」を意味し、「準備万端」などの連語で用いられる。濁音を含む「ばんたん」が正しい読みである。「まんたん」などの誤読に注意する。
- c(書き取り):「ある対象を視野に収めて見つめる」の意であり、漢字は「眺める」である。設問枠には「ナガ(め)」と送り仮名が印刷されているため、漢字部分の「眺」1字のみを記入する。
結論
- b:ばんたん
- c:眺
問3(登場人物の心情・記号選択)
手順1(設問要求の確定)
傍線部①「こういうときはあったかいものを飲むと楽になるわよ」とあるが、このときの《美津保》のママの「私」に対する心情として、最も適当なものを1つ選ぶ。
手順2(根拠範囲の限定)
ママの人物設定(※2「『私』が住むマンションの一階にある喫茶店《美津保》のオーナー」)を踏まえ、直前・直後の会話と地の文を確認する。
「『けっこう早かったわねえ、このあいだ退院できそうだっていう話を聞いたばかりのような気がするけど、でも、よかった。ずっと入院なんてことにならなくって』
彼女はそこでいったん言葉を止めて、私の顔を見つめた。
『また目の下に隈が出てるわね。ちょっと蒸し暑いけど、①こういうときはあったかいものを飲むと楽になるわよ』
こういうとき、のなかには、ふたつの意味がある。わかっていても、それを言葉や行動に出さない人もいれば、すぐ顔に出てしまう人もいる。彼女はもちろん後者に属していた。」
手順3(論理整理:「ふたつの意味」の解読)
地の文で「こういうとき、のなかには、ふたつの意味がある」と明記されている。
- 第1の意味(身体的疲労):「また目の下に隈が出てるわね」に示される通り、不慣れな乳児育児による慢性的な睡眠不足と疲労を案じている。
- 第2の意味(精神的寂しさ):なずなの母の退院は祝うべき事態であるが、それは手塩にかけて育ててきたなずなとの「別れ」を意味する。「私」の複雑な表情から別れの寂しさを瞬時に見抜いている。
したがって、ママの心情は「身体を気遣う優しさ」と「別れの寂しさを察して励まそうとする温かさ」の双方を含んでいる必要がある。
手順4(設問形式に応じた処理:選択肢の照合)
- ア(不適切):「気が進まないままなずなの面倒を見てきた『私』の身体を心配し」とあるが、「私」は義務感や嫌々世話をしてきたのではなく、愛情を持って接しており事実に反する。
- イ(不適切):「もう二度と会えなくなる『私』の悲しみを癒そうとしている」とあるが、1ページ目で弟のリハビリ手伝いを口実に今後も会う予定を考えており、「二度と会えない」は誇張である。
- ウ(適切):「育児に奮闘する『私』を気遣うとともに、今まで懸命に世話をしてきたなずなを母親に返す『私』の寂しさを感じ取り、励まそうとしている。」は、本文の「ふたつの意味(疲労と惜別)」を完全に網羅している。
- エ(不適切):「無事に役目を終えた安心感と嬉しさで張り詰めていた気持ちが緩んだ『私』を労っている」とあるが、単なる安堵や嬉しさだけでなく、手放す寂しさこそがママの察した核心であるため不十分である。
結論
正答は ウ である。
問4(比喩表現の効果・記号選択)
手順1(設問要求の確定)
傍線部②「きれいに透き徹った白魚のような垢」という表現について、【ノート】の空欄Xに入る説明として最も適当なものを1つ選ぶ。
手順2(根拠範囲の限定)
問題冊子の【ノート】の構造と、傍線部前後の描写を確認する。
- ノートの前提:「白魚のような」=白く細く美しいものをたとえる比喩表現。 「垢」=汗・脂・ほこりなどが皮膚の表面にたまってできた汚れ。 $\rightarrow$ 本来は不快・不潔な対象である「垢」を、あえて「白魚のように透き徹って美しい」と表現している点に着目させる。
手順3(論理整理:対照的イメージの衝突と心理の具現化)
通常、他人の垢や汚れは嫌悪の対象となるが、「私」にとっては乳児の首筋や膝裏にたまった垢さえも、透き通って愛らしく感じられている。この極端な美化表現は、なずなの赤ん坊としての無垢・清らかさと、それを見つめる「私」の注ぎ込むような深い慈愛・愛着を際立たせる効果を持つ。
手順4(設問形式に応じた処理:選択肢の照合)
- ア(適切):「なずなの清らかな様子と、『私』の愛情の深さ」は、ノートに示された「汚れさえも美しく形容してしまう心理」の効果と合致する。
- イ(不適切):「なずなの無邪気な様子と、『私』の神経質さ」とあるが、「私」が神経質になっている様子を強調する描写ではない。
- ウ(不適切):「なずなの成長の速さと、乳児の世話の大変さ」とあるが、成長スピードや世話の過酷さを表す比喩ではない。
- エ(不適切):「なずなの肌のなめらかさと、この日の蒸し暑さ」とあるが、気候の蒸し暑さを読者に印象づけるための比喩ではない。
結論
正答は ア である。
問5(1)(資料連動の語句抜き出し:Ⅰ 12字 / Ⅱ 27字)
手順1(設問要求の確定)
【生徒と先生の会話】を読み、空欄Ⅰに当てはまる12字、空欄Ⅱに当てはまる27字(句読点含む)の語句を本文中から探し、それぞれの始めの五字を記述する。
手順2(根拠範囲の限定と探索条件の固定)
- 空欄Ⅰの条件:生徒A「なずながお世話になった人たちを『[ Ⅰ ]』と表現しているくらいですから。」 $\rightarrow$ 「近隣の人たち」「日報のみんな」「佐野医院の医師」など、なずなの周囲の人々を総称した12字の表現を本文後半から探す。
- 空欄Ⅱの条件:生徒A「本文に『[ Ⅱ ]』という、なずなに対する思いが記されている箇所がありますよ。」/生徒B「なずな自身は気づいていないはずだけれど、『私』を支えているんですね。」 $\rightarrow$ 「私」がなずなに支えられている(守られている)という認識を直接述べている27字の文末・文節表現を本文末尾から探す。
手順3(論理整理:本文該当箇所の照合と字数計数)
- 空欄Ⅰの照合:本文3ページ目中段を確認する。 「日報のみんなに明世さんの退院をメールの一斉送信で知らせて、時計を見る。佐野医院はまだ診療中だ。なずなのもうひとつの家族には、あとでゆっくり電話しよう。」
- 文字列:な・ず・な・の・も・う・ひ・と・つ・の・家・族 = 12字
- 始めの5字:「な・ず・な・の・も」
- 空欄Ⅱの照合:本文3ページ目末尾を確認する。 「私は守っているのではなく、守られているのだ、この子に。なずなに。」
- 文字列計数(句読点含む):「私(1)は(2)守(3)っ(4)て(5)い(6)る(7)の(8)で(9)は(10)な(11)く(12)、(13)守(14)ら(15)れ(16)て(17)い(18)る(19)の(20)だ(21)、(22)こ(23)の(24)子(25)に(26)。(27)」 = ちょうど27字 ※後ろの「なずなに。」まで含めると32字になるため、「この子に。」で切れる一文が指定範囲である。
- 始めの5字:「私・は・守・っ・て」
結論
- 空欄Ⅰ:なずなのも
- 空欄Ⅱ:私は守って
問5(2)(条件付き自由記述:35〜50字以内)
手順1(設問要求の確定)
会話文の傍線部「誰かを支えつつ、誰かに支えられているという経験」について、自分自身の経験または今後の希望を記述する。
- 〈条件1〉:自分が相手とどのように支え合ったことがあるか(支え合っていきたいか)を具体的に書く(相手は人間でなくてもよい)。
- 〈条件2〉:「〜ことによって、お互い支えあったことがある(支えあっていきたい)。」に続く形で、35字以上50字以内で書く。
手順2(論理整理:相互扶助(双方向)のフレーム構築)
単に「相手に親切にした」「相手から助けてもらった」という一方通行の記述では「お互い支えあった」という条件を満たさない。 必ず以下の2つのベクトルを1文の中に同居させる必要がある。
- 自分が相手に対して行う働きかけ(支える側としての行為)
- 相手から自分に対して与えられる恩恵・安らぎ(支えられる側としての受容)
手順3(答案作成と字数・構文検証)
- 本命答案(対人関係の具体的行為を対置):
私は友人と、相手が落ち込んだときは話を聞き、自分が悩んだときには相談に乗ってもらう- 指定文末への接続確認:「私は友人と、相手が落ち込んだときは話を聞き、自分が悩んだときには相談に乗ってもらう[ ことによって、お互い支えあったことがある。 ]」となり、文脈・構文ともに自然に直結する。
- 字数検証:41字(35字以上50字以内を完全に充足)。
- 別解(公式解答準拠・心情的寄り添い):
私は友達と、悩みがあるときは相談しあい、共に解決策を考えたり、時には悲しい気持ちに寄り添ったりする- 字数検証:49字(35字以上50字以内を充足)。
結論
答案:私は友人と、相手が落ち込んだときは話を聞き、自分が悩んだときには相談に乗ってもらう(41字)
(別解:私は友達と、悩みがあるときは相談しあい、共に解決策を考えたり、時には悲しい気持ちに寄り添ったりする/49字)
授業ではここまで扱う:小説読解における「言葉の裏の気遣い」と「比喩・相互扶助の構造化手順」
小説文において、大人の登場人物が交わす含蓄ある対話や、詩などの複数テキストと連動する設問では、字面の意味を追うだけでは解法がブレやすい。
実際の授業では、以下の3段階の手順を用いて客観的な根拠付けを行う。
【第1段階:発言の複層性(言葉の裏にある状況の共有)の解読】
登場人物のセリフに対し、「相手の置かれている状況(疲労+環境の変化+隠された寂しさ)」を代入し、
言葉の表面的な意味(温かい飲み物の勧め)と、真意(惜別への配慮・慰め)を切り分ける。
↓
【第2段階:対照的な語彙の衝突から比喩の機能を分析】
「美しい比喩(白魚)」と「汚れた実体(垢)」のように、本来相容れない言葉が結びついている場合、
書き手がその矛盾を通して読者に伝えようとしている「主観的な愛情の深さ」を論理的に抽出する。
↓
【第3段階:相互扶助(支え合い)の双方向ベクトルの言語化】
「AがBを支える」という一方通行の関係から「Bの存在がAを満たす」という逆方向のベクトルを本文から発見し、
自由記述の答案作成においては、必ず「自分→相手」と「相手→自分」の2つの働きかけを対比させて組み立てる。
今回の2026年沖縄県公立高校入試・大問1における各設問をこの手順に当てはめると、下表のように整理できる。
| 設問 | 確定させた条件・着目点 | 本文・資料から抽出した客観的根拠 | 導き出される処理・正答 |
| 問1 | 傍線部「口実」の機能 | 静山に出かける理由ができ、なずなに会える名目となる | 表面上の理由付けを意味する エ「表向きの理由」 を確定 |
| 問2 | 漢字の正確な知識 | b「万端整えて」/c「ナガ(め)ている」 | b ばんたん / c 眺(送り仮名を除く) |
| 問3 | 傍線①ママのセリフの真意 | 目の下の隈(疲労)+退院による別れの寂しさを顔から察知 | 疲労の気遣いと惜別の察知を併記した ウ を確定 |
| 問4 | 傍線②「白魚のような垢」の意図 | ノート:白魚(美しいもの) $\times$ 垢(汚れ) | 汚れさえ愛おしく感じる心理から ア(清らかさと愛情の深さ) を確定 |
| 問5(1)Ⅰ | 会話空欄Ⅰ/本文から12字の始めの5字 | 支えてくれた近隣住民の総称「なずなのもうひとつの家族」 | 12字を確認し、先頭の なずなのも を抽出 |
| 問5(1)Ⅱ | 会話空欄Ⅱ/本文から27字の始めの5字 | 相互扶助への気づき「私は守っているのではなく、守られているのだ、この子に。」 | 句読点を含め27字を確認し、先頭の 私は守って を抽出 |
| 問5(2) | 支え合いの記述/35〜50字/指定文末 | 詩『生命は』の欠如の補い合い $\rightarrow$ 双方向の支援行動を設計 | 「話を聞く(自)」と「相談に乗ってもらう(相)」を対置し41字(別解49字)で構成 |
重要なのは、物語の「感動的な空気」に流されることなく、発言の状況証拠や修辞法の仕組みを論理的に分解して設問要求と突き合わせることである。
沖縄県公立高校入試 国語(小説文)の対策と復習手順
今回の2026年度大問1では、語彙・漢字の基本的知識に加え、登場人物の心情把握、比喩表現の分析、詩と関連づけた抜き出し・自由記述など、複数の読解処理が問われた。過去問演習や復習では、以下の手順を意識することが有効である。
1. 語句問題は「文脈上の言い換え」と「辞書的語義」の重なりを確認する
問1の「口実」のように、選択肢には「原動力」「機会」など、文脈から連想しやすい紛らわしい語が配置される。単に前後の文脈に当てはめるだけでなく、「その語自体の辞書的な中心義が何であるか」を常に確認し、言葉の正確な定義からブレない判断基準を持つこと。
2. 登場人物の発言は「直前の出来事」と「地の文の心理注釈」から解く
問3のように、セリフそのものは平易であっても、背後に深い気遣いが込められている設問では、セリフの前後数行に決定的な根拠が隠されている。特に「彼女はそこでいったん言葉を止めて、私の顔を見つめた」「ふたつの意味がある」といった地の文の観察描写を見落とさず、登場人物が見つめ合っている沈黙の意味を拾い上げる習慣をつけること。
3. 指定字数の抜き出しは「全文確定 $\rightarrow$ 字数計数 $\rightarrow$ 先頭指定の切り出し」の手順を厳守する
問5(1)のように「〇字の表現を探し、その初めの五字を書く」という形式では、最初から5字だけを探そうとすると候補が絞れずミスを誘発する。必ず「意味に合致する一連の文や語句全体」を特定し、句読点を含めて指定字数(12字、27字)と寸分違わず一致することを確認してから、先頭の5字を慎重に解答欄へ書き写すこと。
4. 自由記述では「設問の定義(支え合い)」を満たす2要素を対比させる
問5(2)のように「お互い支えあった」ことを書かせる問題では、自分側の行動だけでなく、相手側の行動も明記しなければ「お互い」の要件を満たせない。指定された文末(「〜ことによって、お互い支えあったことがある。」)に接続したとき、主語と述語のねじれが生じていないかを必ず音読するように確認すること。
今回の大問1では、語句の正確な知識、大人の配慮に満ちた会話の重層的な読解、比喩表現を通じた心理の象徴性の分析、および他者との関係性を捉え直す詩的認識の統合という、国語読解の重要技術が凝縮されていた。感覚的な読解から脱却し、本文の具体的な表現と設問条件を論理的に結びつける手順を身につけることが、入試本番における確固たる得点力につながる。

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