文章1出典:田中真知『美しいをさがす旅にでよう』より(設問の都合上、一部改変あり)
文章2出典:高階秀爾『日本人にとって美しさとは何か』より(設問の都合上、一部改変あり)
全問解答一覧
| 設問 | 正答・答案 | 形式・条件 | 設問条件の概要 |
| 問1 | エ「話さない」 | 文法(記号選択) | 二重傍線部a「咲か」と活用形が同じものを1つ選ぶ。 |
| 問2(1) | 4 | 文法(数字記述) | 二重傍線部b「現在でもしばしば話題となる」に含まれる自立語の個数を数字で書く。 |
| 問2(2) | しばしば | 品詞抜き出し | 二重傍線部bの中から副詞をそのまま抜き出す。 |
| 問3 | 人工 | 語彙記述(漢字2字) | 空欄Aに入る、「自然」の対義語となる漢字2字の熟語を書く。 |
| 問4 | ア | 指示語の内容説明(記号選択) | 傍線部①「この美学」の内容として最も適当なものを1つ選ぶ。 |
| 問5(1)Ⅰ | 交換可能な物 | 抜き出し(6字) | 文章1から、西洋の庭における自然の扱い方を表す言葉を6字で抜き出す。 |
| 問5(1)Ⅱ | 状況 | 抜き出し(2字) | 文章2から、日本人の美意識の特徴を表す言葉を2字で抜き出す。 |
| 問5(1)Ⅲ | 実体 | 抜き出し(2字) | 文章2から、西洋の美意識の特徴を表す言葉を2字で抜き出す。 |
| 問5(2) | ウ・エ | 内容理解(2つ選択) | 二つの文章を踏まえた生徒の発言として適当なものを2つ選ぶ。 |
導入:この大問を解くための2つの分析軸
2026年度の沖縄県公立高校入試・国語の大問2は、庭園空間を扱った田中真知の文章1と、美術・文学を扱った高階秀爾の文章2を組み合わせ、日本と西洋における自然観および美意識の相違を考察させる読解問題であった。
文法や語彙の知識を確認する問題に加え、指示語が指す基本原理の特定、二つの文章の対比構造を一つの表に統合して整理する問題が出題されている。この大問を正確に処理するためには、以下の2つの分析軸を押さえる必要がある。
- 「目に見えるもの」と「想像によって捉えるもの」の対比(文章1)文章1では、西洋の庭(ガーデニング)が多彩な草花を現実に配置して目に見える美を取り入れるのに対し、日本の枯山水は植物を極力排除し、石や砂を媒介として見る者の想像力に水の流れや自然の広がりを喚起させる。ここで論じられているのは、庭にある植物の数量の違いではなく、自然を直接目に見える形で取り入れるのか、それとも見る人の想像力を通して感じ取るのかという、自然観の違いである。
- 「実体の美」と「状況の美」の対比(文章2)文章2では、古代ギリシャ以来の西洋美学が左右対称や人体の比例関係(カノン)など、客観的な秩序ある原理に基づいて「何が美しいか(実体の美)」を捉えようとしてきたのに対し、日本人は松尾芭蕉の俳句のように、場面や出来事の中で一瞬生じる静寂に美を見いだす「どのような場合に美が生まれるか(状況の美)」に感性を働かせてきたと説明される。
文章1は「庭における自然の取り入れ方」、文章2は「美が生まれる原理や状況の捉え方」という異なる観点を扱っているが、両文章には「目に見える対象そのものだけでなく、想像力や状況の働きにも注目する」という点で共通する問題意識が存在する。この関係を整理することが、問5の比較表完成および複数選択肢の判断につながる。
『美しいをさがす旅にでよう』・『日本人にとって美しさとは何か』の要約と論理構造
二つの文章は、それぞれ異なる具象例(庭園空間と美術・文学)を取り上げながら、日本と西洋の着眼点の相違を明らかにしている。
| 比較観点 | 西洋における特徴 | 日本における特徴 | 対応する設問 |
| 文章1:庭における自然の取り入れ方 | 草花を植え、枯れれば取り替える。 $\rightarrow$ 自然を「交換可能な物」として扱う。 | 植物を極力排除し、石や砂という「人工」的な装置を配置する。 $\rightarrow$ 見る人の想像力によって目に見えない水の流れを感じ取る。 | 問3(人工) 問5(1)Ⅰ(交換可能な物) |
| 文章2:美の捉え方と原理 | 左右対称や人体の比例関係など、客観的な秩序ある原理を重視する。 $\rightarrow$ 「何が美であるか(実体の美)」を追求。 | 松尾芭蕉の俳句のように、蛙が池に飛び込んだ瞬間の静寂に美を見いだす。 $\rightarrow$ 「どのような場合に美が生まれるか(状況の美)」を重視。 | 問4(秩序ある原理) 問5(1)Ⅱ(状況) 問5(1)Ⅲ(実体) |
| 二編の関連 | 目に見える具体的な植物や、客観的・数学的な規準に注目する。 | 物そのものの形だけでなく、見る人の想像力や、要素同士の関わり(場面)によって美を捉える。 | 問5(2)(ウ・エ) |
【大問2】各設問の解答解説と思考手順
問1(動詞の活用形・記号選択)
手順1(設問要求の確定)
文章1の二重傍線部a「咲か」と活用形が同じ動詞を、選択肢ア〜エから1つ選ぶ。
手順2(根拠範囲と文脈の確認)
文章1第4段落(「それに対して、西洋の庭は花が中心だ。」で始まる段落)の文脈を確認する。
「ガーデニングとは、基本的には季節によって木を植え替えたり、さまざまな花を咲かせたりすることである。」
動詞「咲く(カ行五段活用)」の後ろに使役の助動詞「せる」が続いている。
手順3(論理整理:文法規則の照合)
使役の助動詞「せる」は、動詞の未然形に接続する。
- 咲か[未然形] + せ[使役] + たり[助詞] $\rightarrow$ 傍線部aは未然形である。 各選択肢の動詞について、直後に続く語との接続関係を確認する。
手順4(設問形式に応じた処理:選択肢の照合)
- ア「買い(たい)」:希望の助動詞「たい」は動詞の連用形に接続する。不適切。
- イ「行く(と)」:引用の助詞「と」の前で言い切りの形をとっており、終止形である。不適切。
- ウ「持つ(人)」:後ろの名詞(体言)「人」を修飾しており、連体形である。不適切。
- エ「話さ(ない)」:打消しの助動詞「ない」は動詞の未然形に接続する。傍線部aと同じ未然形であるため、エが適切である。
結論
正答は エ である。
問2(自立語の個数・副詞の抜き出し)
手順1(設問要求の確定)
文章2の二重傍線部b「現在でもしばしば話題となる」について、
- (1) 含まれる自立語の個数を数字で答える。
- (2) 含まれる副詞をそのまま抜き出す。
手順2(文の分解:単語への区切り)
対象の文を単語ごとに区切る。
現在 / で / も / しばしば / 話題 / と / なる
手順3(論理整理:品詞分類と自立語・付属語の弁別)
各単語の分類を整理する。
- 現在:名詞(自立語)
- で:付属語
- も:助詞(付属語)
- しばしば:副詞(自立語)
- 話題:名詞(自立語)
- と:助詞(付属語)
- なる:動詞(自立語)
自立語は単独で意味を持ち、文節の最初に来ることができる単語である。
したがって、自立語は「現在」「しばしば」「話題」「なる」の4語である。
また、自立語のうち活用がなく、主に用言を修飾して頻度を表している語は「しばしば」である。
結論
- 問2(1):4
- 問2(2):しばしば
問3(語彙の空欄補充:漢字2字)
手順1(設問要求の確定)
文章1の空欄Aに入る漢字2字の熟語を書く。
- 条件1:「自然」の対義語であること。
- 条件2:自然の事物や現象に人間が手を加えることを意味すること。
手順2(根拠範囲の限定)
文章1第6段落(「それに対して、日本の枯山水は、」で始まる段落)の文脈を確認する。
「見る者の想像力によって、目には見えない自然のいとなみと一つになるための[ A ]的な装置だといえる。」
直前では、枯山水が植物を極力排除し、石と砂だけで山や水の流れを象徴的に表現した空間であると説明されている。
手順3(語義と文脈の照合)
人間が手を加えていない「自然」に対し、人間の手や技術によって作り出すことを「人工」という。
枯山水は、石や砂を人間が意図的に配置して造った庭であり、自然そのものではなく人間の手によって造られた空間を通して自然を感じさせるものである。
空欄Aに「人工」を代入すると「人工的な装置」となり、文脈・対義語条件・漢字2字の指定のすべてに合致する。
結論
正答は 人工 である。
問4(指示語の内容説明・記号選択)
手順1(設問要求の確定)
文章2の傍線部①「この美学」について、その内容を説明した選択肢から最も適当なものを1つ選ぶ。
手順2(根拠範囲の限定)
指示語「この」が何を指しているかを確認するため、直前の文脈を確認する。 本文では、古代ギリシャにおける頭部と身長の比率(七頭身や八頭身)が例として挙げられた後、次のように述べられている。
「いずれにしても客観的な原理に基づく秩序が美を生み出すという点においては一貫している。」
手順3(論理整理:「変化する具体例」と「一貫した基本原理」の区別)
古代ギリシャでは、紀元前五世紀には七頭身、紀元前四世紀には八頭身が理想とされるなど、時代の好みに応じて具体的な規準は変化した。
しかし、筆者は、規準の数値が変わっても「客観的な原理に基づく秩序が美を生み出す」という考え方自体は共通していると説明している。
したがって、「この美学」が指しているのは、七頭身や八頭身という個別の規準ではなく、その根底にある「明確な秩序のある原理が美を生み出すという考え方」である。
手順4(設問形式に応じた処理:選択肢の照合)
- ア(適切):「美は明確な秩序のある原理が生み出すという考え方。」は、本文の「客観的な原理に基づく秩序が美を生み出す」という記述と一致する。
- イ(不適切):「美は時代を超えて通用する規準が生み出すという考え方。」とあるが、本文では美の規準そのものは時代によって変化すると書かれており、不一致である。
- ウ(不適切):「美は優美さより荘重さから生まれるという考え方。」とあるが、七頭身(荘重)と八頭身(優美)の優劣を論じているわけではない。
- エ(不適切):「美はギリシャ彫刻の比例関係から生まれるという考え方。」とあるが、比例関係は具体例の一つであり、美学全体の説明としては狭すぎる。
結論
正答は ア である。
問5(1)(比較表の空欄補充・抜き出し)
手順1(設問要求の確定)
二つの文章を整理した表の空欄Ⅰ・Ⅱ・Ⅲに入る語句を、指定字数で本文中から抜き出す。
- 空欄Ⅰ:文章1から6字で抜き出す。
- 空欄Ⅱ:文章2から2字で抜き出す。
- 空欄Ⅲ:文章2から2字で抜き出す。
手順2(根拠範囲の限定と探索)
- 空欄Ⅰ(文章1・6字):表の項目「ガーデニングでは自然が[ Ⅰ ]として扱われる」に対応する記述を探す。文章1第4段落(西洋の庭について述べた段落)では、「西洋の庭に植えられている草花は枯れれば取り替えられる。」と説明された後、次のようにまとめられている。「つまり自然は交換可能な物として扱われている。」
- 抜き出し:交・換・可・能・な・物 = 6字
- 空欄Ⅱ・Ⅲ(文章2・各2字):表の項目「[ Ⅱ ]の美」 $\leftrightarrow$ 「[ Ⅲ ]の美」に対応する記述を探す。文章2では、松尾芭蕉の俳句を取り上げて日本人の美意識を説明した部分で、次のように述べられている。「それは『実体の美』に対して、『状況の美』とでも呼んだらよいであろうか。」
- 空欄Ⅱ(日本の美意識):状・況 = 2字
- 空欄Ⅲ(西洋の美意識):実・体 = 2字
結論
- Ⅰ:交換可能な物
- Ⅱ:状況
- Ⅲ:実体
問5(2)(二つの文章を踏まえた内容理解・2つ選択)
手順1(設問要求の確定)
二つの文章を踏まえた生徒の発言として適当なものを、ア〜オから2つ選ぶ。
手順2(根拠範囲の限定)
文章1(枯山水と西洋庭園の比較)および文章2(状況の美と実体の美の比較)の内容を確認する。
手順3(設問形式に応じた処理:選択肢の照合)
- ア(不適切):「西洋では……日本以上に豊かな美的感覚を持っているといえる。」とあるが、本文は東西の美意識の違いを説明しているのであり、どちらの美的感覚が豊かであるかという優劣を論じてはいない。
- イ(不適切):「日本人は自然やその時々の場面を客観的に見ることで」とあるが、文章1の枯山水では見る人が自らの想像力を働かせることが求められており、また客観的な秩序を重視するのは主に西洋側の特徴として説明されているため不適切である。
- ウ(適切):「思い描いた情景を押し広げることや、状況から美を見いだす日本人の感性が、枯山水や俳句に表れている。」は、文章1の枯山水(石や砂から水の流れを想像する)と、文章2の芭蕉の俳句(出来事の状況の中に美を見いだす)の双方の特徴を的確にまとめている。
- エ(適切):「多種多様な草花を植えて視覚的に捉えるという西洋の自然の取り入れ方が、日本の自然観と異なる。」は、草花を植えて視覚的な美を楽しむ西洋の庭と、植物を極力排除する枯山水の違いを述べた文章1の内容と一致する。
- オ(不適切):「日本の庭では植物に加えて石や砂も活用して自然を演出している」とあるが、文章1で説明されている枯山水は植物を極力排除した庭であり、植物と石・砂を併用しているという説明は本文と矛盾する。
結論
正答は ウ・エ である。
授業ではここまで扱う:対比構造と複数文章の照合手順
今回のように、複数の文章を比較して読む問題では、個々の文章を理解するだけでなく、文章間に共通する考え方や相違点を整理する必要がある。
実際の授業では、以下の3段階の手順を用いて二つの文章を整理する。
【第1段階:各文章が比較している観点を特定する】
文章1は「庭における自然の取り入れ方」を比較し、
文章2は「美が生まれる原理や状況の捉え方」を比較していることを確認する。
↓
【第2段階:具体例が説明している中心的な考え方を取り出す】
草花の植え替え(西洋の庭) $\rightarrow$ 目に見える植物を取り入れる
石や砂の配置(枯山水) $\rightarrow$ 目に見えない自然を想像する
人体の比例関係(ギリシャ彫刻) $\rightarrow$ 客観的な原理に基づく美
蛙の飛びこむ音(芭蕉の俳句) $\rightarrow$ 出来事や状況の中に生まれる美
↓
【第3段階:誤答選択肢の典型パターンを排除する】
・本文に書かれていない優劣の判断(選択肢ア)
・日本と西洋の特徴の入れ替えやすり替え(選択肢イ)
・具体例についての事実誤認(選択肢オ)
これらを本文の記述と照合して排除し、客観的に正答を確定する。
今回の沖縄県公立高校入試・大問2における各設問をこの手順に当てはめると、下表のように整理できる。
| 設問 | 適用した手順 | 本文の客観的根拠 | 導き出される処理・正答 |
| 問1 | 直後の助動詞との接続確認 | 「咲か」 + 使役助動詞「せる」 | 未然形接続の「話さ(ない)」= エ を特定 |
| 問2 | 単語への分解と品詞分類 | 現在(名)/で(付属語)/も(助)/しばしば(副)/話題(名)/と(助)/なる(動) | 自立語4語(4)、副詞(しばしば)を特定 |
| 問3 | 文脈の定義と対義語の照合 | 「自然」の対義語 + 人間の手による装置 | 枯山水の性質を表す 人工 を特定 |
| 問4 | 具体例と不変原理の区別 | 七頭身・八頭身の変化 $\leftrightarrow$ 客観的原理の一貫性 | 根底にある考え方を述べた ア を特定 |
| 問5(1) | 表の項目に対応する記述探索 | Ⅰ:草花を枯れれば取り替えるまとめの文 Ⅱ・Ⅲ:「実体の美」に対して「状況の美」 | Ⅰ:交換可能な物(6字) Ⅱ:状況(2字) Ⅲ:実体(2字) |
| 問5(2) | 複数文章の共通点・相違点の照合 | 西洋(視覚的・実体) $\leftrightarrow$ 日本(想像力・状況) | 誤りを適切に排除した ウ および エ を特定 |
重要なのは、特定の文化に対する先入観にとらわれず、筆者がそれぞれの文章で提示した対比の枠組みを本文の記述に即して客観的に追うことである。
沖縄県公立高校入試 国語(論説文)の対策と復習手順
今回の2026年度大問2では、文法知識、指示語の追跡、二つの文章の対比構造の把握、複数文章を統合した内容理解など、論説文読解の重要な処理が幅広く問われた。今後の過去問演習や復習では、以下の手順を意識することが有効である。
1. 文法問題は「直後に続く語との接続」を確認する
問1のように動詞の活用形を判断する問題では、動詞そのものの形だけでなく、直後にどのような助動詞や助詞が続いているかを確認する。「使役の『せる』や打消しの『ない』は未然形に接続する」といった接続規則を整理しておくことが、確実な正答につながる。
2. 指示語問題は「具体例」と「まとめの文」を区別する
問4のように、指示語の前に複数の具体例(七頭身、八頭身)が挙げられている場合、選択肢にはその具体例の一部をそのまま使った誤答が作られやすい。筆者が具体例を通して説明しようとしている「一貫した考え方や原理」がどこでまとめられているかに着目すること。
3. 複数文章問題は「何についての比較か」を整理する
問5のように二つの文章を比較する問題では、文章1(庭における自然の取り入れ方)と文章2(美の捉え方)のそれぞれにおいて、日本と西洋がどのような観点で比較されているかを分けて整理する。対比の軸を明確にすることで、比較表の空欄や選択肢の判定を迷わずに行うことができる。
今回の大問2では、文法や語彙の確認から、文章相互の論理的連関を捉える応用的な読解までが一貫した流れで出題されていた。文章の表現を正確に確認し、設問の条件と一つずつ照合する手順を身につけることが、安定した得点力を培うための基本となる。

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