英語の読解問題の攻略は、知っている単語を拾い集めて文脈を推測する「和訳依存」ではない。文と文の繋がりを示す客観的な標識を捉え、情報がどのように展開されているかを正確に処理する「論理展開の型」である。
もちろん、本文中に登場する基礎的な英単語や熟語(例えば、improve や environment-friendly など)の意味を知っていることは不可欠である。しかし、用語や構文を単独で覚えるだけでは不十分だ。和訳の自己流アプローチに頼ると、文脈の転換点を示すサイン(論理マーカー)を読み飛ばし、出題者の意図から大きく外れる失点パターンに陥りやすい。
実際の入試データを例に挙げよう。2024年度の大問5において、第1段落では人々の生活を便利にする発明としてスマートフォンが提示される。これに対し、”On the other hand, there is another kind of invention…” という一文を境に、第2段落では人を傷つける発明として地雷が提示される。ここで起きているのは、同一状況の変化ではなく、発明品が持つ「二つの側面の対比」である。自己流の和訳だけで読んでいると、この対比構造を見誤り、段落ごとの見出しを選択する問題や内容一致問題において、不正確な選択肢に誘導されてしまう。
2024・2025年度 山梨県公立入試 英語 重要語彙・マーカー表
以下の表は、直近2年間の山梨県公立高校入試(大問4・5)から、合否を分ける文意把握の要となる語彙および論理展開のマーカーを、役割別に抽出・分類したものである。
表1:本文理解に必要な一般語彙・構文
| 英単語/熟語/構文 | 品詞 | 日本語の意味 | 備考(役割・文脈) |
| convenient | 形容詞 | 便利な | 対象物のプラス評価 |
| amazing | 形容詞 | 驚くべき、すばらしい | 対象物のプラス評価 |
| serious | 形容詞 | 深刻な | 対象物のマイナス評価 |
| terrible | 形容詞 | ひどい、恐ろしい | 対象物のマイナス評価 |
| solve | 動詞 | 解決する | 課題へのアプローチ |
| improve | 動詞 | 改善する | 状態の好転 |
| amount of ~ | 名詞句 | 〜の量 | 数量の提示 |
| variety | 名詞 | 種類、多様性 | 多様性の提示 |
| be left | 動詞句 | 残されている | 問題が未解決である状態(受動態) |
| be proud of ~ | 熟語 | 〜を誇りに思う | 感情・状態の提示 |
| take time to do | 構文 | 〜するのに時間がかかる | 動作に必要なコストの提示 |
| make + O + C | 構文 | OをCにする | 対象の状態を変化させる表現 |
| agree with ~ | 動詞句 | 〜に賛成する | 相手の意見への同調 |
| communicate with ~ | 動詞句 | 〜とコミュニケーションをとる | 利便性などの具体例 |
| introduce A to B | 動詞句 | AをBに紹介する | 人物や事物の引き合わせ |
| decide to ~ | 動詞句 | 〜することを決める | 明確な意思決定 |
| keep ~ing | 熟語 | 〜し続ける | 動作の継続 |
| have heard of ~ | 動詞句 | 〜について聞いたことがある | 認知の有無の確認 |
| be surprised by ~ | 動詞句 | 〜に驚く | 事象に対する反応 |
| the same with ~ | 熟語 | 〜と同じである | 別対象への適用 |
| Actually | 副詞 | 実は、実際に | 直前の文脈に対する実態の提示 |
表2:前後関係を決める論理マーカー・重要構文
| 英単語/熟語/構文 | 品詞 | 日本語の意味 | 備考(役割・文脈) |
| because | 接続詞 | 〜だから、〜なので | 原因と結果 |
| so | 接続詞 | だから、そのため | 原因と結果 |
| but | 接続詞 | しかし、だが | 予想に反する展開・逆接 |
| however | 副詞 | しかしながら | 予想に反する展開・逆接 |
| On the other hand | 副詞句 | 一方で | 二つの対象・側面の対比 |
| though | 接続詞 | 〜だけれども | 譲歩条件を示し、中心内容は主節に置かれる |
| For example | 副詞句 | 例えば | 抽象から具体 |
| not only A but also B | 構文 | AだけでなくBも | 情報・範囲の追加 |
| I wish + 過去形 | 構文 | 〜であればいいのに | 現実と願望の対照(仮定法) |
| By the way | 副詞句 | ところで | 話題転換 |
山梨県公立高校入試・英語「読解問題」の論理構造
【時間表現との連動】対比と心情変化を確定させる手順
2025年度(大問5)では、主人公が自身の住む町について語る場面で以下のような推移がある。
“I am very proud of it now, but I didn’t always feel that way. I thought my hometown didn’t have anything special. (…) my feelings have changed since I heard a news story.”
ここでは、but が現在と過去の評価を対比させている。さらに、now / didn’t always / since / have changed という時を示す表現が、「以前は否定的だったが、ある出来事を境に見方が変わった」という時間軸を固定している。論理マーカーだけでなく、時制や時間表現も連動させて処理する必要がある。これを怠ると、心情変化を問う設問や、要約文の選択肢を取り違える可能性が高まる。
【抽象から具体へ】For example を用いた情報の階層化
また、For example のような具体化のマーカーも極めて重要である。For example の前には、多くの場合、その具体例が説明する一般的な内容や上位概念が置かれている。 2024年度(大問4)の会話文では、「放課後に部活動(club activities)がある」という説明の後に、”For example, we enjoy sports, art, and music.” と具体例が列挙されている。したがって、後ろの語句は新しい話題ではなく、部活動の中身を具体化したものだと判断できる。具体例と、その前にある一般的な説明を往復して読むことで、両方の意味を客観的に確かめやすくなる。
結論とチェックリスト
英語の読解は、幼少期からの経験や感覚だけで決まるものではない。語彙と文法を土台としたうえで、原因・結果・対比・具体例・追加といった関係を示す論理マーカーを処理すれば、読解の再現性を高めることができる。
重要なのは、すべての英文をきれいな日本語に訳すことではない。何と何が対比され、何が原因となり、どの内容が具体例として追加されたのかを整理し、それを設問の選択肢と照合することである。今日から以下の手順を学習に組み込むこと。
- 論理マーカーの視覚化:長文を読む際、順接、逆接、対比、具体例を示す接続詞や副詞句には印(四角囲みなど)をつける。
- 前後関係の言語化:マーカーの前後で、どのような対比が起きているか、あるいは原因から結果へどう推移したかを簡潔にメモする。
- 設問との照合:内容一致問題や要約問題の選択肢を読む際、自分が視覚化した「本文の論理構造」と矛盾がないかを客観的に検証する。
単語帳を眺めるだけの丸暗記や、採点して終わりの漫然とした過去問演習といった自己流の学習だけでは、本文の論理構造や自身に不足している処理手順へ気づきにくい。プロトコルに基づいた分析と対策を推奨する。

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