早稲田大学国際教養学部(SILS)の英語・大問3の攻略は、「長大な文章に圧倒され、歴史的な固有名詞や数値を丸暗記しようとする」ことではない。文章の「幹(筆者の主張や歴史の転換点)」と「枝葉(具体的な数字や国名)」を明確に切り分け、巧妙に仕掛けられた比喩や因果関係の罠を客観的に見抜く情報整理の作業である。
「単語の難しさに気を取られ、英語のレトリック(比喩)を文字通りに受け取ってしまう」というアプローチは、本学部においては確実な失点パターンを招くだけだ。データに基づき淡々と、この長文を解体する実務的な手順を提示する。
分析マクロリスト(2025年度統合版)
| 年度 | 大問 | ジャンル | テーマ | 解法の型(初手) | 設問の特徴 |
| 2025年 | 1 | 長文読解 | 西洋と東洋の思考様式の違い | 【マクロ構造の把握とミクロの文脈推測】 | 段落の要旨選択、未知語の文脈推測 |
| 2025年 | 2 | 長文読解 | 19世紀の科学哲学 | 【対比構造の天秤と階層把握】 | 内容不一致(4つ選択)、段落要旨、未知語推測 |
| 2025年 | 3 | 長文読解 | 砂糖の歴史と政治経済・健康被害 | 【幹の抽出とディストラクター排除】 | 内容不一致(4つ選択)、段落要旨、未知語推測 |
法則(型)の解説:構造から解を導く「客観的ルール」
2025年度の大問3は、「砂糖」という一つのテーマを、歴史・政治・経済・健康という多角的な視点から掘り下げる評論文である。この長文を攻略し、早大特有のダミー選択肢を回避する手順を解説する。
法則1:パラグラフ要旨選択は「情報構造の核心」を突く
各パラグラフの役割(要約)を選択する設問では、全文を均等に読む必要はない。パラグラフの先頭(トピックセンテンス)と、論理が反転・展開するディスコース・マーカー(But, Indeed, And yetなど)に焦点を当てる。
たとえば第1段落は、現代の砂糖漬けの現状に触れた直後、「歴史的な不平等に根ざしている(rooted in a food system that has long reproduced systemic inequality)」という核心の主張が置かれており、これで段落の総論的な役割が決定する。同様に第5段落も、「Government subsidies helped to ensure its overproduction…(政府の補助金が過剰生産を確実にした)」という冒頭の1文だけで、対策にもかかわらず過剰生産が進んだという「幹」が抽出できる。枝葉の単語が分からなくても論理の進行には影響しない。
- 【極端な具体例(決定ルール)】段落要旨を問う問題では、段落の中盤以降に羅列される「具体的な国名」「年号」「数値」に線を引くな。冒頭の1文と、逆接(Butなど)の直後にある「筆者の主張(幹)」だけを抽出し、選択肢と照合せよ。
法則2:内容不一致問題は「ダミー生成の4パターン」を見抜く
本文と合致しないものを4つ選ぶ設問では、選択肢を場当たり的に照合するのではなく、早稲田特有の「巧妙なディストラクター(不正解の選択肢)」のパターンを認識する。本年度のダミー(正解)は以下の4系統で構成されている。
- 比喩の誤読(ファクト化の罠):選択肢Aは、本文中の “stained with spots of human blood”(奴隷の犠牲を非難した道徳的な比喩)を、文字通りの「衛生問題(hygienic problem)」へとすり替えている。
- 外部知識の混入:選択肢Cは、本文で「奴隷制に抗議した宗教集団」として定義されている Quakers を、実在する「オートミールブランド」の話に捏造して混ぜ込んでいる。
- 因果関係の逆転:選択肢Dは、砂糖の消費爆発が帝国主義と「絡み合っていた(entwined)」とする本文の記述を、「帝国主義の崩壊(collapse)の理由」と完全に逆方向へ歪めている。
- 筆者の結論との正面衝突:選択肢Fは、現在の糖分摂取量を「自然なもの」としているが、最終段落の「現在の消費量に自然なことは何もない(there is nothing natural…)」という結論と真っ向からぶつかる。
- 【極端な具体例(決定ルール)】英語のレトリック(血に染まった砂糖など)を「物理的な事実(衛生問題など)」として文字通りに解釈している選択肢を見つけたら、即座に「比喩の誤読を誘うダミー」と判定せよ。感情的・情緒的な表現は、必ず背後にある「事実(=奴隷の犠牲への抗議)」へと頭の中で変換して読むこと。
法則3:未知語推測は「等位接続詞(and)」と「対比」の活用
辞書的な暗記に頼らず、文脈と構文のルールから意味を確定させる。
たとえば wreaks havoc という未知語は、直後の and contributes to obesity(肥満に寄与する)という等位接続詞の構造に注目する。等位接続詞 and の前後は論理的な方向性(プラス/マイナス)が一致するため、同じマイナスの影響を与える「破壊する、大損害を与える(devastates)」と特定できる。
また marginal という語は、「15世紀以降に消費の『一部になった』」という後半の記述と対比させることで、「(それ以前のヨーロッパは)重要ではなかった(unimportant)」と推測できる。
結論とチェックリスト
早稲田大学国際教養学部の長大英文における得点力の向上は、英語の才能や暗記量によるものではない。文章の幹を抽出し、意図的に配置された比喩の罠や未知語のヒントを客観的に処理する「作業」である。入試本番で確実な得点源とするために、今日から以下の手順を実行せよ。
- 「幹」と「枝葉」の分離:長文を読む際は、段落先頭のトピックセンテンスと逆接マーカーに集中し、具体例や数値などの「枝葉」は読み流す。
- 「比喩表現」と「因果・結論」の歪曲を排除する:感情的な比喩を物理的な事実にすり替えた選択肢や、本文の因果関係を逆転させた選択肢、筆者の結論と正面衝突するものはダミーとして真っ先に排除する。
- 等位接続詞と対比による推測:未知語に遭遇した際は、等位接続詞(and/or)の前後におけるプラス・マイナスの方向性や、対比関係から機械的に意味を特定する。

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