富山県公立入試の英語(大問2の長文読解および大問3の条件・自由英作文)の攻略は、文脈からの「フィーリング読み」や「センスによる意訳」ではない。客観的な論理マーカーを起点とし、文章の構造を紐解く「型の適用」である。
当然のことながら、英単語や基本文法といった基礎知識(例えば、”increase” や “custom” といった単語の意味や基本時制のルール)は不可欠である。しかし、それらの用語や公式をただ暗記するだけでは不十分であり、実際の入試問題の中でどう処理するかという手順の確立が必要となる。
例えば、長文読解を自己流のアプローチや「和訳依存(フィーリング読み)」で解こうとすると、具体的にどのように構造を見誤るのか。今回抽出した2024年度大問2の長文データにおいて、新旧の紙幣を比較する段落に “On the other hand, the back of the 10,000 yen bill we use now has the picture of houou.” という一文がある。ここで “On the other hand” という論理の標識(マーカー)を見落とし、漫然と単語を繋いで読んでしまうと、「新紙幣の特徴」と「旧紙幣の特徴」という明確な対比構造を見誤り、内容一致問題で大きな失点パターンに陥ることになる。出題の構造を客観的に把握しなければ、的確な解答を導くことは難しい。
当研究所が富山県公立入試の過去3年間(2023〜2025年度)の大問2および大問3を精密に分析し、合否の分水嶺となる表現を抽出した結果が以下のリストである。実戦的な視点を持たせるため、分類(論理マーカー・文法構文・語彙表現)ごとに整理し、出題年度順に配列している。
【抽出データ】富山県公立入試・重要論理マーカー/文法構文/語彙表現
| 分類 | 年度・出題箇所 | 実際の表現 | 設問処理での役割 |
| 論理マーカー | 2023年度・大問2 | instead of ~ing | 現在は選択されていない手段と選択されている手段の区別 |
| 論理マーカー | 2024年度・大問2 | On the other hand | 新紙幣と現行紙幣の対比構造の明示 |
| 論理マーカー | 2024年度・大問2 | For example | 抽象的な事象から具体的な説明への展開 |
| 論理マーカー | 2025年度・大問3 | because / also | 英作文における理由づけ・追加情報の接続 |
| 文法構文 | 2023年度・大問3 | I wish + 仮定法過去 | 現実とは異なる事象の願望・仮定の提示 |
| 文法構文 | 2024年度・大問3 | ask O to do | 他者への動作の依頼を示す文型処理 |
| 文法構文 | 2025年度・大問3 | It is important to ~ | 主張や一般論を述べるための安全な固定パーツ |
| 語彙表現 | 2024年度・大問2 | global warming | 海水温上昇などの環境問題に関する文脈の把握 |
| 語彙表現 | 2025年度・大問2 | confused | デジタル機器に対する高齢者の心理状態の把握 |
| 語彙表現 | 2025年度・大問2 | custom | 異文化理解(食事マナー等)に関するテーマの把握 |
【富山県公立入試・英語の大問2長文読解】論理マーカーを起点とした「天秤」の型
長文読解において、文意を正確に決めるのは「なんとなくの文脈」ではなく「形」である。英文を一読する際、最初にすべき手順は however, on the other hand, instead of といった論理マーカー(接続詞や前置詞句)を発見することだ。これらを見つけた瞬間、その前後には文法上・意味上対比されるものが「天秤の両皿」のように並べられていると予測できる。
instead of や On the other hand による「対比の整理」
2023年度大問2の絵手紙に関するスピーチ文において、Today, many people send emails or text messages instead of writing letters or postcards. という文が出題された。
instead of A を見つけたら、Aを「現在は選択されていない手段」、主節を「代わりに選択されている手段」として分離する手順を踏むこと。本問では、「手紙・はがき(書くこと)」と「メール・テキストメッセージ(送ること)」の使用状況が対比されている。このように情報を整理しておくことで、その後の「絵手紙の価値の再発見」という文脈の移行にもスムーズに対応できる。
▼読解における決定ルール
英文の中に instead of や on the other hand を見つけたら、直ちにそこで文を論理的に切断し、前後の「何と何が比較・対比されているのか」を記号化して捉える手順を踏むこと。
【富山県公立入試・英語の大問3英作文】失点を防ぐ「安全な構文(パーツ)」への強制移行
大問3で出題される条件英作文や自由英作文において、日本語の思考をそのまま英語に直訳しようとするアプローチは避けるべきである。自分が知っている日本語の深いニュアンスにこだわると、主語の不一致や時制のズレといった文法的なミスを誘発しやすい。必要なのは、日本語の行間に潜む意図を汲み取り、自分が確実に制御できる「安全な構文のパーツ」へ解体し、落とし込む手順である。
自由英作文における「基本文型への還元」
2025年度大問3では「アメリカと日本の時間割の違いについてどちらが好きか」を理由とともに25語以上で書かせる問題が出題された。ここで複雑な理由を捻り出そうとするのではなく、以下のような極めて平易で安全な文型に還元して記述することが求められる。
- We have more time after lunch. (SVO構文)
- It is important to clean it. (形式主語を用いた構文)
複雑な感情表現を避け、機械的に It is ~ for A to do や、SVO・SVCの短い文の積み重ねに流し込むことで、論理構造を維持したまま減点リスクを最小化できる。
▼英作文における決定ルール
頭に浮かんだ複雑な日本語は直訳せず、It is ~ for A to do や make O C、ask O to do といった、文法的に破綻しない「強固な固定パーツ」へ状況を変換して書き出すこと。
結論とチェックリスト
語彙力や多読経験が不要なのではない。しかし、それだけでは入試本番の設問処理を安定させにくい。合否を分けるのは、身につけた知識を論理マーカーや文型の判断に接続し、再現可能な手順として実行できるかどうかである。
自己流の学習(単語の断片的な丸暗記や、採点基準を意識しない漫然とした過去問演習など)だけでは、出題の真の構造や自身に不足している処理手順の欠落に気づきにくい。確実な得点力を構築するため、今日から以下のアクションを徹底してほしい。
- 論理マーカーの視覚化:長文を読む際、順接・逆接・具体例を示す接続詞や前置詞に必ず印をつけ、文の論理構造を「天秤」として客観的に視覚化する。
- 英作文の「型」のストック:ゼロから英文を作るのではなく、It is important to do などの安全な構文パーツを複数用意し、どんな状況でもそこに当てはめる訓練をする。
- 日本語の抽象度を下げる:英作文の際、直訳できない日本語は「要するにどういう状況か」を考え、中学生レベルの基本動詞と文型で表現できる機能的な事実に変換する。

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